「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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反撃の狼煙 2

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「では時間稼ぎを行う戦法ですね。エルンさん、魔法使い組と一緒に落とし穴、泥濘ぬかるみ、谷間、山、デコボコなどの地形トラップを作ってください。エルシオさんは空の魔獣に警戒しつつ、弓士たちをまとめてここから三十メートル圏内に入った魔獣を一掃。ベリアーヌとお父さんは地上の防衛をお願いします。タータ、メナ、連絡係はお願いね」
「にゃー」
「みゅーん!」

 シシリィが周りに指示を出し、タータをエルンのところへ。
 ずっとエルンの側にいたメナは、ギルマスの肩へと移動する。
 軽い準備運動をしてから、シシリィは「ヨイショ」と軽やかに剣を抜いた。

「[剣士見習い卒業の試練]発動。では行ってきます」
「シシリィはアタシに任せな!」
「頼んだぞベリアーヌ!」

 え、[見習い卒業の試練]をもう使うの?
 と、思ったら、一気にジャンプして数十メートル遠くの魔獣の群れに向かって剣先を向ける。
 あの若さとあの可憐さでも、シシリィは『剣聖見習い』。
 その実力は、侮ることなかれ。

「『剣聖見習い』スキル——[王道両断]!!」

 割れた。
 地面が。

「え」

 その後、凄まじい突風で後ろに転げるエルンとシャクティア。
 エナトトスとギルマスは上半身を前屈みにして、足腰で踏ん張っている。
 が、思いも寄らない衝撃波にエルンたち同様耐えられなかった者がちらほら。
 エルンなど一回転して塀にゴツン、と後頭部を強打した。

「え? え?」

 なんか今とんでもないことにならなかったか?
 頭を撫でつけながら上半身を起こし、未だ吹き荒れる強風を身を低くして避けつつ草原側の塀に近づく。
 隙間から覗くと、魔獣の群れとベヒーモスが見えた。
 ベヒーモスは——健在!

『ブゥルァァァァアアアアァッ!』

 と、元気よく雄叫びをあげている。
 だが、その周囲の大型魔獣は壊滅!
 戦果としてはかなりのものと言える。
 しかし、倒れたシシリィをベリアーヌが抱き抱えて戻ってきた。

「え、し、身体強化魔法がなんかいつもよりヤバいぐらい加速して発動して自分でも知らない威力出たんですけど」

 全身の筋肉がぷるぷるします、と言いながら、シシリィが呟く。
 魔力切れ、プラス身体強化魔法の過剰発動による反動だろう。
 これは休ませる他ない。
 今のところ[卒業の試練]系で使った直後も動けるのは[魔獣使い見習いの試練]ぐらいだ。

「シシリィはこのまま休んでろ。露払いご苦労だった」
「お父さん……。ベヒーモスは、わたしの思っていた以上の硬さです。鱗ではなく、毛皮が特殊なのだと思います。今の攻撃が直撃したのに、ダメージが全身に分散していくのがわかりました」
「! なるほど、あの巨体を使った衝撃の分散、か」
「おそらく身体強化魔法で全身の筋肉を内部から硬化・強化して支えているので、物理攻撃も入りづらいのだと思います。一瞬ですが[鑑定]しましたが、自動体力回復と自動魔力回復のスキル持っているのが見えました」
「自動魔力回復で身体強化魔法を維持してやがるのか。チッ、本当に厄介なヤローだ」
「っ……」

 あの瞬間。
 たったあれだけの時間でそこまで[鑑定]したのか、と思うと改めて感服した。
 こんなカッコいい彼女と知り合えたのはエルンの人生にとって、最高の幸運だったように思う。
 剣を抜いたギルマスと、ナックルをぶつけてニヤリと笑うベリアーヌ。
 エルンと同じく転げたシャクティアも、頭を撫でながら近づいてきた。

「おっしゃあああぁぁ! シシリィが出鼻を挫いた! このまま畳み込んで、右往左往してる魔獣どもを完全に一掃してやるぞ!」
「「「おおおおおおおおお!!」」」

 掲げられたギルマスの剣と口上に、他の者たちも奮起する。
 前衛組は外壁の上から飛び降りて魔獣たちと正面衝突——戦闘が開始した。
 今回は昨日よりも大型の魔獣が多く、その足下を潜るように小型の魔獣がわんさか駆け抜けるのが厄介だ。
 だが、シシリィの指示で落とし穴やでこぼこ、泥濘など魔法使い組が作っていてくれたおかげで小型も大型もそれなりに足場で苦戦している。
 人間はそこから抜けてきた魔獣を始末していく。
 もはや作業に近い。
 弓士たちの出番は、そこを抜けてきた魔獣の始末。
 エルンも魔法でもこもこと小山を作り、そこを乗り越えた瞬間落とし穴、というのを作り続けた。

『ブゥオオオオ!』
「!」

 ベヒーモスが雄叫びをあげる。
 ふと、ベヒーモスも『十壁』だと思い出して、サブ職を『魔獣使い』に変更して[魔声]を使ってなにか言っているか聞き取ってみた。
 敵の指示がわかれば、攻略のヒントになる、と思ったのだ。

『キノコスープ! キノコスープ! キノコスープぅ!』
「……………………」

 ちょっと「聞き間違いかな?」と眉間に深々と皺が刻まれる。
 改めて耳の横に手を添えて、聞き耳を立ててみた。

『キノコスープ! 闇キノコのスープ! キノコスープ! どこだ! 人間どもの町から運ばれていたのは、我も見ておる! 絶対ここにある! 絶対だぁ! キノコスーーーープ!!』
「…………」

 なんと。
 聞き間違いじゃなかった、だと。
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