私の新しいパーティーメンバーが勇者よりも強い件。

古森きり

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私のパーティーメンバーが勇者よりも強い件。

私の夢

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「シヴォルトレッドメイデン」
「ーーー!」


真っ黒な鎖。
そして、凄まじい轟音で全方向から連射される雷の狙撃弾。
あ、あ……あれは……あれでは逃げ場が……!

「な、なによ、アレ⁉︎」
「鎖に見えるのはアレクの黒炎。触れれば全てを灰燼と化す炎に焼かれるけど、あの狙撃雷弾の集中砲火を避けるのすら無理。黒炎を使った『魔法』だよ。展開されたら死ぬよね~……」
「ちょっとちょっと! アレクちゃん殺しちゃダメだってば!」
「アレク君!」
「やりすぎですアレク様!」

ちょお、強!
強すぎますアレク様!
知ってたけど、魔力がほぼ切れててもそんな技が使えるなんて反則レベルですよ⁉︎
ホントなんなんだあの人⁉︎

「! …………へぇ」

感心するように漏れた声。
轟音と、解除されて消えていく鎖の群の中には佇む影がある。
あ、あの攻撃を生き延びた!
さすが勇者……いや、これ通じないとなるとどうす……⁉︎


「あ……、……アキレス様!」


佇んでいたのはキニスンではない。
剣先をアレク様に向け、微笑むアキレス様。
全身に血が滲んでいる。
その後ろで、地べたに座り込むキニスン。
アキレス様を見上げて狼狽えた表情……アキレス様、キニスンを庇ったのか⁉︎

「キニスン、あなたの理想はここで諦めてはダメです。自分はあなたの光が一番ときめきました」
「! あ……」
「理想を掲げて戦いを始めた以上、自分の屍を踏み越えていくくらいの覚悟で進んでください。それがあなたという勇者であるべきです。いいですね?」
「……アキレス様っ!」

アキレス様……キニスンの理想……夢をそこまで……。
魔物と人の共生……夢物語だと笑っておられたのに。
だが、ならば私には何がある?
キニスンのような夢が私にはあるのか?
理想も夢も持たない私が彼を否定出来るのか?

「アキレス……」
「ああ、言い忘れていました。自分はこの子の夢のために命と聖剣を使うことにしました、アーノルス様。だから自分はミュオールには帰りません。陛下たちには申し訳ありませんとお伝えください。なので、どうしてもとおっしゃるのなら自分を殺して聖剣をお持ち帰りください。抵抗しますけど」
「っ……」

奴隷解放すら望まなかったアキレス様。
もしかしたら、奴隷制度がなくなっても扱いが変わることはないと知っていたのかもしれない。
勇者アキレス様。
魔物と人の共生を望む勇者キニスンに寄り添うことを決めたのか。

「……ヤバイ」
「そうね、ヤバイわね…」
「違うよ」
「え? 戦況の事ではないんですか……? では、なにがヤバイのですか、クリス様」
「あの勇者、『勇者の資質』だけじゃなく『英雄の資質』も持っている…! あんな奴、その時代、その世界に一人、いるかいないか……! そりゃ聖剣も喜んで力を貸すわけだよ…!」
「……英雄の資質? なんだね、それは? 勇者の資質とは違うのかね?」
「『英雄の資質』は『勇者の資質』以上にピンキリだけど、あいつはすでに『英雄』になっている。それも、よりにもよって……『勇者』の!」
「!」

対峙する空気がこれまで以上に張り詰めている。
アレク様もアキレス様も動かないが、殺気は増していく。
先程キニスンと戦った時とは違う空気。
弱体化状態のアレク様と、聖剣に魅入られた勇者アキレス様。
これは……本気でぶつかり合えば、さすがにどちらかが…。

「い、嫌です! アキレス様!」
「!」

しゃがみ込んでいたキニスンがアキレス様の腰にしがみ付く。
服を強く握りしめ、膝立ちのまま顔を埋める。
嫌です、嫌ですと繰り返し、啜り泣く。

「嫌だ! 嫌だ! ぼくを一人にしないでください…!」
「うーむ、まだダメですかー…」
「ダメです! 絶対ダメです、嫌です! あなたが居なくなるなら…………」

ザワ、と立ち込めるのは先程とは質の違う殺意。
その量も質も、まるで違う。
出どころは周囲を埋め尽くす『観客』たちだ。
思わず周りを見回す。
目を真っ赤に光らせて、見下ろしてくる魔物たち。
こ、これは……!

「……コレはマジでシャレにならないわよ……! あいつら全部上位種の魔物……!」
「さすがの我輩たちも、あの数に一斉に襲われたら……アーノルス!」
「ああ」
「……。……最悪の場合はボクが迎撃するよ」
「え? け、けれどクリス様は攻撃魔法が苦手なのでは……」

頑なに攻撃系の魔法は使わないので、アーノルス様たちには“使えない”ものだと思われているくらいなのに。
クリス様は非常に不本意そう。

「苦手は苦手だけど使えないわけじゃないもん。……ただし、帰る時は徒歩ね」
「よ、余裕かましてくれるわね? クリスちゃん」
「この程度の数の魔物なら余裕だよ。ボクだって“あの両親”の子供だからね……。ただ、思い出したくないだけだし。……つーかもう思い出しちゃったし……」
「なんなの反抗期なの?」

頬を膨らませておられる。
……な、成る程反抗期……。
リリス様、言い得て妙…。

「……このままでは……っ。どうしたら……」
「…………」

睨み合いは続いている。
アーノルス様ですら攻めあぐねているこの状況。
こんな事になるなんて……。
私はただ、彼らと話をしたかったのに。
ダンジョンを、なんとかしなければいけない。
それは周辺に住む人たちのため…………瘴気と魔物を、なんとか……。

「! あ……、……クリス様!」
「ん?」
「い、以前、街に魔物が入らないようにする結界なるものを作れると仰っていましたよね!」
「え? まあ、出来るけど……でも今は無理だよ、さすがに。防御壁バリア百回分くらいの魔力が必要になるもん……」
「ではなく! このダンジョンから瘴気が漏れ出さぬように結界を張る事は可能でしょうか⁉︎」
「!」
「! 成る程、それならばこのダンジョンを消す必要は……」
「ちょ、ちょっとちょっと、けどここダンジョンよ⁉︎ そりゃ、あのキニスンって子にはここのダンジョンは必要かもしれないけど放置はさすがに……!」
「いや、封印結界なら出来るよ……そうか、それなら! アレク!」

「聞こえたよー」


スッ、とアレク様が燻っていた黒い炎と殺気を消し去る。
不思議そうにこちらを見るアキレス様とキニスン。
よし、とにかく一番の問題はこのダンジョンから放たれる瘴気だ!
それさえなんとかなるならば……まだ対話と和解は可能!
剣を収める。
これにはキニスンが驚いた表情をして私を見た。
私に任せて欲しい、とアーノルス様たちを見ると……アーノルス様が頷いてくださる。

「聞いて欲しい! このダンジョンを残したまま、他の冒険者たちや勇者に手出しさせなくする方法がある!」
「? ……どういう事ですか?」

まだ警戒中のキニスンは、アキレス様の前に回り込み彼を庇うようにこちらを睨む。
私はクリス様とアレク様の使える魔法の中に、結界という特別なものがある事を彼らに説明した。
勿論、使えるのはお二人なので詳細はお二人に説明してもらったのだが……。

「へえ、そんな魔法があるんですかぁ。確かにそれなら……」
「まあ、かなり魔力を使うから、一度街に戻って数日休まないと無理だけどねー」
「どうでしょうか。これならキニスンの事情もカバー出来ると思うのですが!」
「自分はキニスンとこのダンジョンが守れるのならなんでも良いですねぇ。キニスンはどうですかぁ?」
「……た、確かにわたしも……ダンジョンのみんなが無事なら……」

と、耳を垂れさせる。
そうか、私たちが『勇者』で、ダンジョンを消しにきたからずっと警戒されていたのだな。
彼にとってこのダンジョンの魔物たちは大切な友人なのだろう。
……魔物と人が共に暮らせる世界……その、体現された第一歩、という事なのだろうか。
確かに、そういえば…。

「ここの魔物たちは大人しい、というか……人を襲わないのですか?」
「このダンジョンの魔物たちはわたしと契約した魔物なので人は襲いません。魔王は魔力を注ぐ事で支配し、瘴気によって魔物を狂暴化させ人を襲わせるのです。わたしは魔物たちが瘴気により奪われた理性を、契約する事で蘇らせる事が出来ます」
「なんと! そんな事が出来るのかい⁉︎ ……それなら、君が全ての魔物と契約する事が出来ればこの世界から出ていってもらう事も出来るのでは……」
「そ、それは無理です……。我々は既に魔王の魔力を注がれている存在……魔王を倒さない限り、瘴気が充満する世界で魔王の支配より完全に逃れられる事は出来ません。彼らも魔王が直接命じれば、わたしを殺すように動くと思います……。わたしの聖剣では、まだ彼らの中の瘴気を浄化出来ませんから……」
「……! と言うことは、やはり魔王から魔物化した人を救う方法はあると言うことなのか!」

思わず前のめりになってしまう。
驚いたキニスンが、アキレス様の後ろへと隠れる。
……し、しまった、つい……。

「……アキレス様の聖剣ならば可能です。このダンジョンの魔物たちはアキレス様が瘴気を浄化して、大人しくさせてくださったので……」
「ええ⁉︎ アキレス、君そんな事が出来たのかい⁉︎」
「え? 出来ましたねぇ? 普通に」

ふ、普通に⁉︎

「ふ、普通に⁉︎」
「魔物とはいえ生き物を殺すのは好きではありませんのでぇ……出来るだけ急所を外して戦意喪失してくださーいと話しかけながら戦います。そうすると、大体話を聞いてくれるようになります」
「ッッッ」

そ、そんなのありか⁉︎
そんな事が…………ええええ⁉︎

「魔物に話しかけながら戦ってるの、あの人。改めてヤバイねー」
「ええ、ヤバイのよ」
「二重三重でヤバみが増していくね~……」

全員がドン引きだ。
……しかし、キニスンは我々の様子が気に食わないのか頬を膨らませる。

「しかし、瘴気は魔物の餌のようなものと言っていなかったかね? ……浄化したなら何故まだ魔物のままなのだよ?」
「そうですねぇ……簡単に言うと魔物は魔王に呪われた存在なんですよぉ。その呪いが瘴気を発生させてぇ、魔物を狂暴化させるんですー。多過ぎれば狂暴化しますが少な過ぎれば飢餓感により苦しむそうです。キニスンは契約して狂暴化を抑える事は出来ますが、呪いそのものは魔王を倒さないと解除出来ないって感じですねぇ、多分」
「成る程……」
「では魔王を倒せば、本当に魔物と人が共生する世界も夢ではないかもしれないんですね!」
「!」

それはすごい!
確かにボアたちは我々の良い食糧になってくれた!
ミスリルボアは肉のみではなく武器や防具などの素材にもなる。
他の魔物も同様だ。
彼らが襲い掛かってくる狂暴な存在ではなく、牛や豚のように家畜となり、犬や猫のような愛玩動物のようになれば……我々人間の生活も変わっていくかもしれない。

「…………。あ、あなたも、分かってくれるんですね……」
「え?」
「……わたしの話、聞いてくれたのはアキレス様だけでした…。信じてくれたのも……」
「…………」

……モジモジと手を後ろでいじる姿はなんという愛らしさか。
耳がピクピク、尻尾がゆらゆら……。
た、確かにこれは可愛い!
アーノルス様やローグス様でなくともそう思う!
可愛い!

「…………アキレス様に問われたのです、さっき」
「?」
「私の夢は、なんなのか……、と」

すぐに答えられなかった。
自分の事なのに、自分の夢が思い付かなかった。
でも、思い出した気がする。
私は………。

「私は一人でも多くの人が笑顔で手を取り合える世界にしたいです。私ごときが大それた夢かもしれませんが……目の前の人の笑顔を守る事くらいは、と強さを求めたのでした。それを、思い出しました」

どうして忘れていたのか。
大切な事のはずだったのに。

「キニスン、君の夢は私の夢に似ている。人と人と、だけではない。人と魔物も手を取り合う世界……とても素敵だと思う。私も君の夢は応援したい」
「…………」
「オルガ……」

手を差し出す。
どうか取ってはくれないだろうか。
簡単な道ではないだろう、お互いに。
でも……。

「…………では、わたしもあなたの夢を、応援します」

おずおずと、差し出してくれる手。
可憐に微笑むキニスンに、私も自然と笑顔になれた。
あの時のカルセドニーに、私は近付けただろうか……?
私も誰かを救える人間になりたい。
まだまだ程遠いなぁ。

「あ」
「?」
「オルガ……聖剣が!」
「え!」

腰を見ると、アーノルス様が驚いた理由が分かる。
私の聖剣の鍔の石が二つ光っているのだ。
中央と、その右のものが!
こ、これは!

「……聖剣は夢を語ると応えてくれます。名を呼べばどこへなりと応じてくれます。そして、願えば叶えてくれます。……あなたの夢に、応えてくれたのではないでしょうか」
「アキレス様……」

まさか、私に夢を思い出させるためにあの幻術を……?

「多分!」
「……た、多分……」

でもなんでこんなに笑顔が胡散臭いんだろう。

「少なくとも聖剣に名を与えればどこにでも現れてくれるようになりますよ。わざわざ腰に下げて持ち歩かなくても良くなります」
「!」
「そ、そうなのか? そういえば二人は聖剣をどこからともなく呼び出していたな?」
「はい~。自分は自分が与えられた名が大層立派だったので、聖剣にお譲りしましたぁ」
「…………。うん?」
「え?」

ん……⁉︎
き、聞き返すところではありません多分、アキレス様……!

「……ダメだわ、相変わらず会話してると何か変な世界に迷い込むわ……」
「つまり聖剣に『銘』を与えればいいって事じゃなーい?」
「『銘』か……確かに……五年も共にあるのに『銘』など考えた事もなかったな……」

アーノルス様が己の聖剣を引き抜く。
『銘』か……なら、私も……。
……でも、なんと?
剣に名前を付けるなんてやった事がない!
普通、こういうのは有名な工房の職人がやるものだしなぁ。

「では、我が聖剣よ……お前は今日から『アストルフォ』だ。マスキレアを建国した父の名を冠り、私と共にマスキレアを守護するものとなってくれ!」

聖剣を掲げるアーノルス様。
強い輝きが聖剣より放たれる。
マスキレアの聖剣が鍔の石を二つ光り輝かせ始めた。
お、おお!

「私の聖剣の石にも光が!」
「これでほぼ確定かなー? やはり聖剣の鍔の石は聖剣の力の解放、的なやつなんじゃない?」
「アーノルス、試してみるのだよ!」
「え、なにを⁉︎」
「決まっている、さっきそこの二人がやっていた聖剣召喚なのだよ!」
「そもそも聖剣収納が先じゃないですかぁ?」
「「聖剣収納⁉︎」」

召喚するのにまず収納という事か⁉︎
……ネ、ネーミングが酷くないだろうかアキレス様…。

「私も聖剣収納が出来るようになったのでしょうか……?」
「え、試してみれば~?」
「……えーと、えーと」

念じればいいのだろうか⁉︎
……くっ、聖剣、奥が深い!
学ぶべき事はまだまだあるのだな!

「……そうですわ! わたくし良い事を思い付きましたわ!」
「どうされたんですか、姫様?」
「お黙りカルセドニー、お前は口を開くな」
「ひい! 申し訳ありませ……まだ怒ってるんですか⁉︎ さっき許してくれたんじゃあ……」
「おほほ、それとお前の好感度は話が別です。……ではなく、皆様聞いてくださいませ!」
「?」

エリナ姫が手を叩いて満面の笑顔……。
な、何故だろう、不安な気持ちになる。
なにかロクでもないことでは……いや、姫様に限って……だが最近の姫様を思うと……。

「このダンジョンをエリアごとマスキレア王国で買い取ってしまえば良いのですわ」

…………なにか恐ろしい事を言い出した気がするんですけど。

「成る程、それは良い考えなのだよ。元々報酬は土地だったしな」
「え!」

ローグス様⁉︎

「ああ、成る程……確かに我が国の管轄にしてしまえば、アキレスとキニスンの居るこのダンジョンにミュオールが干渉する理由はなくなるね」
「でしょう⁉︎」
「あー成る程ー。お姫様たまには悪知恵働くんだねー」
「いいじゃんいいじゃん! あいつら二度と聖剣を取り戻せなくなるし、その事を知らずに大喜びするよ~! ぷぷぷ! すんごい見ものじゃ~ん!」
「え……えええ……」

そ、そういう……。
し、しかしそれではミュオールは聖剣と勇者を同時に失う事に………………、……まあ、確かに……姫の提案がキニスンと、そしてなによりアキレス様を守るのには最善なのかもしれない。
あの国の王や家臣たちは恐らくアキレス様を殺してでも聖剣を取り戻そうとする。
我々が聖剣を発見出来なかった事にして、土地をマスキレアが買い取ればこの地はミュオールより守られる、か。

「で、ですがミュオール王たちが納得するでしょうか? 聖剣を持ち帰れと言われたんですよね?」
「それなら一度持って帰ればいいんだよー」
「へ?」
「だって聖剣はどこにあっても持ち主の勇者が呼べば“応えてくれる”んだから~」
「「あ!」」

ニヤニヤと悪い笑顔のアレク様とクリス様。
お二人の言葉に私とカルセドニーはハッとする。
『聖剣召喚』……!

「ダンジョンは上級だから、今回は完全攻略に至らなかった。聖剣は無事に確保出来たのでお返しします。しかし、残ったダンジョンは危険なので我が国で土地ごと買い取ります……って感じー? 瘴気の問題は僕とクリスの封印結界でダンジョン内に封じ込める! これでどう? 金髪勇者ー」
「天才かな? それで行こう。どうだい、アキレス、協力してくれないか?」
「…………。正直そこまでしてもらえると思っていませんでしたー」
「あ、ありがとうございます…!」
「……しかし、そうなるとミュオールの民はどうなるんでしょう……。どうでもいいといえばどうでもいいんですけど……生き物が死ぬのはあまり嬉しくありません」
「そうだな。けれど、現時点でここ以上に危険なダンジョンはない。他のダンジョンは金と名声を求めた冒険者たちが我先にと潰しにいく。ミュオールにも軍はあるし、もしもの時は私や我が国の騎士、隣国ゼスルスの勇者シオールも駆け付けてくれるだろう。君も君の望むまま、母国を愛しているのなら必要な時に戦えばいいさ」
「愛ですか……自分には一番程遠い言葉ですねぇ。……まあ、世俗に疎くはなるので、たまに情報を頂けると助かります」
「ああ、また来るよ」
「はい! 是非! ……お二人にお聞きしたい事もまだありますし!」

とりあえず王に報告してからまた来よう。
キニスンが魔人になってしまった理由や、アキレス様と出会った経緯、そしてなにより、聖剣の力の解放の事など聞きたい事はたくさんある!
このダンジョンの瘴気を外へ漏れなくするために封印しなければならないし……いや、それはアレク様とクリス様にお願いるすのだが……うん、やる事は多い!

「首都で報告して、このダンジョンに戻って来る頃には僕らの魔力も全快だろうしねー」
「うん。まあ、あと一週間ちょっと、我慢してもらおうよ」
「あ、そこまでしてもらえるならぁー」
「?」

スッ、とアキレス様が聖剣を掲げる。
細く輝く聖剣が虹色の光の粒を暗雲に向かって解き放つ。

「キラキラ~」
「……しょ、瘴気の雲が晴れていくわよ⁉︎」
「どういう事なのだね⁉︎」
「このキラキラしたのを振り撒くと、瘴気が薄くなります。これまでも溜まり過ぎたらやっていました。そろそろやろうと思っていました」
「アキレス様は魔物を倒さなくても瘴気を浄化出来るんですよ! どうです、すごいでしょう⁉︎」

むっふぅ!
と胸を張るキニスン。
す、すごい! とてもすごいんだけど…!

「…………キラキラ……?」
「キラキラです。え? キラキラしてますよ」
「いや、うん、キラキラしているが……」

…………ネーミングは本当にそれしかなかったのだろうか……。

「あの、ところで……」
「ん? なんだい、カルセドニー君」
「…………帰るならリガル様を起こしませんか?」
「「「あ」」」

……仲間に完全に忘れられていたリガル様。
し、しまった私もすっかり忘れてた……!








********




「おお! さすがはアーノルス様! これは間違いなく、我が国の聖剣! ありがとうございます!」
「………いえ。それよりも、先程説明しました通りあの地はまだ危険です。ダンジョンは今後も調査を続けねばなりませんので、あの一帯は我が国で買い取らせていただきますが……」
「勿論! いやいや、むしろこちらからもお願いいたしますよ! はっはっはっ!」
「……では、兄にはそのように伝えておきます。手続きに関しては後程、我が国の者が行いますので……」

高らかに、そして上機嫌に笑う王と家臣たち。
手渡した聖剣を手にした王の表情は、まるで餌を前にしたオークのようだ……。
手を擦り合わせアーノルス様を賞賛する彼らを眺めていると、アキレス様が目を閉じた理由が分かる気がした。
しかし、それでも見捨てる事はなく……アキレス様はこの国の全ての命を案じていたのを思い出す。
ああ、あの人は確かに勇者なのだな……。
その事をどうして、彼等は理解出来ないのだろうか……。


「はぁー、スッキリした☆ 本当は兄様式の拷問方法でジワジワ四肢の先端から凍らせて叩き割ってやりたいくらいだったんだけどー」
「ひ、ひぃ……っ」
「アレク様っ」
「大丈夫だよ、オルガ、ダメセドニー。アレクは兄様ほど氷系の魔法を上手く扱えないからそんな事出来ないよ~」
「そ、そういう心配をしているわけではありませんよ、クリス様っ」
「だ、ダメセドニーって、俺……⁉︎」

この兄弟は…!
…そしてこの兄弟の兄上様も相当物騒な……。
それに、まだ城から出たばかり。
門番がこちらを見ているでないか。

「では今度はまたダンジョンに戻って封印結界だな。そこは頼んだのだよ、
双子」
「うん、オッケー。魔力も回復してきたしー」
「任せてよ~」
「はーぁ、とんだ寄り道になったわよねー。そのままマスキレアに帰るんでしょう? 王都に居るうちにアイテムを補充して行きましょう」
「そうだね! 手分けする⁉︎」
「うん、では荷馬車の手配はローグスとリリス、回復アイテムは多めになるから私とリガルとカルセドニー君…装備の修繕も終わる頃だからそれも行こう。アレク君とクリス君、姫とオルガは自由行動でいいかな?」
「自由行動ー? じゃあ観光でもしてこようかなー? ねえ、クリス、オルガ…………」
「あ、ねぇ、クリスちゃん、エリナ姫、オルガ、せっかく王都にいるんだし雑貨屋に行きましょうよ! 王都で買えない化粧品も見ておきたくなぁい⁉︎」
「賛成~!」
「そうですわね! 興味がありますわ」
「え、えーと……」

あれ? リリス様はローグス様と荷馬車の手配では?
せっかく二人きりになれるチャンスなのに……い、いいのだろうか?

「というわけでアレクちゃん、ローグスと荷馬車の手配よろしくね!」
「えー……まぁいいけどー……」
「ふむ、ちょうどいいのだよアレク。聖剣や魔人に関してもう少し君に聞きたいと思っていたのだよ」
「えー……。眼鏡の質問とめどないから面倒臭いんだけどなー……まぁいいけどー……」

……納得致しました。
さすがリリス様……。
ローグス様のために身を引くなんて……素敵な人だなぁ。

「さ、行くわよオルガ」
「っ!」
「そうそう。色々試してみようねぇ~、オルガ! 可愛くしてあげるよ~!」
「そうですわ、服も見に参りません? 鎧姿ばかりでは今後、困る事もあるかもしれませんし!」
「そうねー、マスキレアではデートする予定だものねー?」
「そうだね~……さすがにその格好は、ないよねぇ~?」
「………………」

う、後ろからの圧が!
……し、しかし、デート……デートか……。
だ、だが私がアーノルス様と行く約束をしたのは職業指南場や剣術道場や騎士団の訓練所なのでこの格好で問題ないと思うんですが!
……お、思う、けれども……っ!

「…………」
「あら? オルガ?」
「そ、そんなに嫌でしたか? ごめんなさい……」
「い、いえ! よろしくお願いします!」
「え⁉︎」

振り返って頭を下げる。
私は女らしさの欠片もない女戦士!
身嗜みを整えるようになったくらいで女らしくなれるわけではないのだ!
もっと根本的な部分を、多分、そう! 全然磨いてこなかった……内面の女らしさ!
私に足りないのはきっとそういうものだ!

「私に女を教えてください!」
「…………。……そ、その気になってくれたのは嬉しいんだけどね、オルガ……」
「まあ、オルガ……大胆ですわ~!」
「…………オルガ、その台詞はないわ~」
「え⁉︎」















おまけ!



「そういえばローグス様は猫を飼ってらっしゃったのですね」
「そうよ。アーノルスの兄に預けてるの。………気持ち悪いわよ~……飼い猫を前にしたローグスは……」
「逆に見て見たい~。リリスは猫好きなの~?」
「嫌いよ。アレルギーで近付けないもの。……そう、ホント、ムカつくわよね……それにね、あいつ……ローグスの愛猫ね、ワタシを見るとこれ見よがしにローグスに甘えやがるのよ……膝に乗ってドヤ顔かましてくるのよ……ホンット性格悪いわよね猫って……ホンッッッッット」
「…………」
「…………」
「…………」


それまでで一番リリス様の表情が魔女らしかった。








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