終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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14歳編

世界の様子(2)

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ミドレの国土はおよそ町一つ分。
かなり危険な状態じゃないか!
地図がまた描き変わるとか、冗談きつい。
でも、まだ結晶化した大地クリステルエリアを土の大地に戻す術が見つかっているわけじゃない。
できることといえば——。

「わかりました。レナ、いけるか?」
「もちろんです!」
「聖女の派遣——っすか。まあ、今のところそれぐらいしかできないでしょうね。それと、ハニュレオです。あちらも弱い力の聖女が三人で、国土の縮小が非常に速い。結晶化津波が先月二度もあり、国土は半分以下になっていますね」
「ええっ……!」
「ヒューバート様、ハニュレオにもわたしを派遣してください!」
「レナ……。うん、俺も行く。一緒に行こう!」

トニスのおっさんが目を細める。
なにを思っていたのかはわからないが、今後の方針の一つとして組み込もう。
ちなみに、コルテレとソーフトレスは戦争中。
石晶巨兵クォーツドールを持っていけば瞬く間に武装させて戦争が激化するだろう、とのこと。
マジか~!

「ヒューバート~」
「ジェラルド? あ、リーンズ先輩も。石晶巨兵クォーツドールの話は終わりましたか?」
「ええ、とても有意義なお話がたくさんできましたよ!」

上の段から降りてきたジェラルドとリーンズ先輩、そしてデュラハン。
俺も色々勉強になった。
今後の活動方針にも大いに変化が生まれたしな。

「ヒューバート、ラウトと話はできるだろうか?」
「え、あ、は、はい。あ、晶魔獣に乗りたがっていたので、乗り方を教えてあげれば自然に話しかけられると思います」
「なるほど。ではそれでいこう」

デュラハンとラウト。
あまり友好的な関係ではなかったと言っていたけれど、晶魔獣を通して少し会話ができるといいな。

「ずるい! ぼくも乗りたい!」
「俺も乗ってみたいです!」
「わかった。希望者には乗り方を教えよう」

しかし、晶魔獣使役の首輪の作り方は教わったが、自分たちで作れるかどうかは怪しいものだ。
そのぐらい、高難易度な設計をしていたからな。
それに晶魔獣を捕らえるのも難しい。
晶魔獣は一度破壊された部位が治癒することはなく、他の晶魔獣、または結晶化した人間を取り込みその部位を奪い取って補修するのだそうだ。
晶魔獣の生態も、俺たちが知らない事実満載である。

「ラウト、晶魔獣に乗せてもらえるって」
「わあ、ほんと!? ……あ」
「先程はすまなかったな。記憶がないと聞いたが、体調は大丈夫なのか?」
「え? うん。お医者さんにはどこも悪くないよって褒められたよ」
「そうか。……そうか……よかった」
「?」

本当に安堵したように溜息を吐いたデュラハンから、馬やトナカイの晶魔獣に乗せてもらう。
乗馬を嗜むようになったので、乗り方は問題ないけど……やっぱ目の前に晶魔獣がいるのはおっかねぇ~!

「ラウトは記憶を取り戻す治療は行っているのか?」
「ううん。ヒューバートお兄ちゃんに思い出さなくてもいいよって言ってもらったから、思い出さないことにしたんだ~。なんかあんまり思い出したくないしぃ」
「そうか。……そうだな、俺もその方がいいと思う」
「おじさん、僕のこと知ってる人なの?」

おじさん!?
デュラハンとラウトの会話を横で聞いていたが、なんということを!?

「どうだろうか。……もっとよく知り合って、仲良くしたいとは、ずっと思っていたよ」
「僕と友達になりたかったの?」
「ああ。そうだな」
「へー、いいよ! 友達になるよー! さっきの怖いのも許してあげるー!」
「…………」

そう言ってデュラハンの腕に絡みつくラウトに、デュラハンの方が感極まった顔になっている。
デュラハンは一号機の登録者。
ラウトは、五号機の登録者、だっけ。
友好的な関係ではなかった、ってことは敵対関係だったのだろうか?
今度は牛の晶魔獣に乗りたいと言うラウトを抱えて、乗せてあげるデュラハンの甲斐甲斐しさよ。
だいぶ嬉しそうで、声をかけづらい雰囲気。

「ヒューバート様、そろそろ」
「うう、もうそんな時間か」

ランディに声をかけられる。
帰還しないと、夕飯に遅れる時間だ。
トニスのおっさんとデュラハンにそろそろ帰る、と告げると、少し残念そうな顔をされた。

「そうか、またいつでも来るといい」
「あ、サルヴェイションは——」
「俺は今のところ使う予定はないから、そのまま持っていなさい。帝国に喧嘩を売られるようなら、使えばいい」
「…………」

ちょっとかなり怖くて使いたくないですぅ。

「ヒューバート」
「は、はい」
「年若いお前には酷なことだと思うが、サルヴェイションを使う覚悟はしておけ。戦争というのは理不尽そのものだ。その理不尽に対抗するには理不尽しかない。サルヴェイション——ギア・フィーネシリーズもまた理不尽そのもの。向こうが理不尽を押し通すというのなら、こちらも理不尽で対抗するしかない」
「……っ」

言葉が重い。
千年前の戦争を知っている人だから、だろう。

「そしてどうかあの子を……ラウトを戦争には関わらせないでくれないだろうか」
「え?」
「今日少し話して本当に驚いたのだが、おそらくあれがあの子の本来の姿なのだと思う。あの素直な性格があそこまで歪んでしまうのが戦争ならば……あの子を戦争に関わらせてはいけない。信じ難い。あれほどまでに変わってしまうのか。とても痛ましい」
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