115 / 385
ミドレ公国編
技術者との話し合い
しおりを挟むデザートも食べ終えて、休憩を挟んだのち今度は聖女リセーラ殿と次期大公ハルオン、そして技術者数名を加えた話し合いが始まる。
ざっくり石晶巨兵の素材についてだ。
ひとまずかき集めて、実際に作ってもらった方が早かろうということになった。
しかし、休憩中ちと変なことに俺も気がつく。
レナとランディはすでに気づいていたようなのだが、ハルオン殿がラウトをずっとチラチラチラチラ……見てる。
わからんでもない。
ラウトは顔がいい。
中性的な超絶美少年。
観賞用として文句なしの一級品。
でも、なるほど……結構、こう、わかるもんだな?
目線の種類といえばいいのか、その眼差しに含まれるモノの種類といえばいいのか。
あれは、なんっつーか……欲だ。
側から見てても気持ちいいモノではないモノだ。
俺と歳が変わらない——生きた年月を換算するなら千歳以上だけど——ラウトをああいう目で見られるのは、気持ち悪いな。
「材料はこれでよろしいのですか?」
「あとは設計図がある。これは素体になる部分。そこから肉付けしていく必要があるが、デザインはこちらが使いやすい」
「なるほど。我が国のデザインを、我々で模索せよとのお話ですね?」
「それもあるが……中身も問題が山積みなんだ。特に操作性と消費魔力量はかなり膨大になる。一般市民にも使えるように、効率よくしたいのだが……」
「ふむふむ……」
とはいえ、今は仕事の話。
ラウトの方は呑気にあくびしているが、ランディの顔がどんどん険しくなりラウトのほんの少し手前に移動してきている。
家では末っ子だけど、俺たちの中では最年長だからラウトのことも弟みたいに思ってくれているのかも。
ランディに任せて大丈夫だろう。
「霊魂体化が難しいのですね」
「多分それにより消費魔力量も変化すると思う。大きな結晶魔石を用いた場合は、消費が少なくて済む」
「結晶魔石は消耗品ですかな?」
「今のところそうなるな」
「かなり燃費が悪いのですね……」
「自然魔力を使えるようになれば、かなり変わると思うのだが」
「そうですね……それでしたら、結晶魔石を燃料として使えるように、即座に霊魂体化して機体に満遍なく浸透する装置を取りつけてみてはいかがでしょうか? 霊魂体化というものが、我々には未知の現象ですが、ひとまず現象の確認をしてみてから、になりますが」
「それで試してみましょう。だが、結晶魔石を燃料にして使うというのは、うちにはない技術だ。ミドレには元々あった技術なのだろうか?」
そんで、技術者との話のなんとためになることだろうか。
今頃ルオートニスはルオートニスでジェラルドとリーンズ先輩が、独自の視点で改良を始めていると思う。
ミドレの結晶魔石を消費燃料にするというのは興味深い。
結晶化した大地の調査と並行して行っていかなければならないが、結晶化した大地の一部を結晶魔石の原産地として残すのが必須になりそうだ。
結晶化した大地と上手くつき合っていけるのなら、それが一番いいだろうな。
「操作性に関してですが、具体的にどのように改善していうとお考えですか?」
「我が国に千年前の技術が残っているところがあり、それを参考にしながら運動能力の向上と同時に行っていこうかと」
「ほお、興味深いですね」
「千年前の技術……ということは、もしやルオートニスにも“守護神の御神体”があるのですかな?」
「ん? 守護神の御神体……? それはわからないが……」
一人の技術者が好奇心に満ちた目で持ち出した存在、『守護神の御神体』。
像。像?
もしかしたら、ギギの言っていた大和製、擬似歩兵前進兵器のことかも?
ミドレにそんなのがあるなんて知らなかったな。
いや、まあ、俺が生まれた頃すでに結晶化した大地の拡大で、ミドレとは国交断絶してたけど。
なんなら俺より五代も前に行き来不可能になっていたらしいし。
他国の文明文化について俺が知らないのも無理はない。
でも、もしも千年前の遺物だとしたら興味がある。
「それはもしや千年前の遺物なのか?」
「そう言われております。見つかったのは五十年ほど前。城の地下に空洞があり、そこにありました」
「ええ? 城の地下に?」
「ああ、そうです。大公閣下、ヒューバート王子に見ていただいてはいかがでしょうか? ヒューバート王子が乗ってこられた巨大な人型魔道具は、御神体に似ていると思うのですが」
「ふむ……確かに。よかろう、明日、案内しよう。民にも公開している場所だ。石晶巨兵の開発に役立つのであれば、こちらが把握している情報は出し惜しみせん」
「ありがとうございます!」
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。
imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。
今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。
あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。
「—っ⁉︎」
私の体は、眩い光に包まれた。
次に目覚めた時、そこは、
「どこ…、ここ……。」
何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる