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15歳編
一年後の世界(4)
しおりを挟む翌朝、身支度を整えてから今日の予定をハヴェル——父上の部下だったが、あまりにも忙しいので俺付きの執事になった。本当は父上と仕事をしたいだろうに、ごめんな——に教わる。
ランディはあの事件後、問題なく回復した。
めちゃくちゃ泣いて詫びられたけど、詫びられる意味がわからない。
仕事しただけだし、俺が埋もれたのは人命救助を最優先しただけだし。
なので、ランディにはレナの護衛を任せている。
つまりレナとランディ、パティ、マリヤがミドレ公国に滞在中ということ。
寂しいけどレナの身の安全を守るために仕方ない。
パティだけでなくランディがレナの側にいてくれるのは、安心感が違う。
レナは俺の……命そのものと言っても過言ではないのだ。
レナが側にいてくれなければ、俺は割とガチ目になにもできない男。
石晶巨兵だって、レナがいてこそ。
この世界の命運は、レナがいて初めて希望を見出せる。
このままレナが結晶化した大地を治療し続けてくれれば、俺の寿命も……!
「それと殿下、件の——ギア・フィーネ五号機襲撃予測がそろそろとのことで……レナ様が本日か明日にルオートニスへ帰国なさるとのことです」
「え!? 待ってくれ! レナの身の安全は!?」
「護衛を十五人に増やして対応いたします。レナ様はもはやこの国のみならず、世界の命運を左右するお方。ミドレでも質素な生活を好まれ、ヒューバート様共々国民人気が凄まじいそうですよ。今やミドレ公国の国民の大半は、進んで我が国の属国になりたいと言っているとか」
「属国は……属国にするのはうちの国の負担もでかいから……」
「そうですね。陛下もそのようにおっしゃっておられました」
国を従えるということは、いわば上司になるってことだから面倒を見なきゃいけないってことだ。
今はまだまだ不安定で、ルオートニス王国におんぶに抱っこ状態とはいえあと十年、二十年したら国の運営も落ち着いてくるだろう。
大公閣下はなかなかに高齢になっているだろうが、ハルオンが継承権を完全に剥奪された上、大公閣下と大公妃殿下、俺とレナを殺しかけたことが国民にも知れ渡り、罰則感情がどえらいことになったそうで……彼は裁判ののち公開処刑が決まっているそうだ。
直接的な攻撃は……開けたけど、俺もレナも大公たちも怪我はしていない。
だが、それでも首謀者として俺やレナを受け入れるという英断を下した大公——親を殺してまで自分が大公になろうとした、というのは、ミドレ国民には許し難いことだったそうだ。
大公はがっかりした様子だったが、親としてというより大公としてその裁判結果を支持した。
裁判所から俺とレナへ公開処刑の招待状きてたけど、色んな意味で無理すぎる。
「とりあえず本日はいつも通り登城されたあとに、先触れが参りましたらレナ様をお迎えに行くという形でよろしいですか?」
「それで頼む」
「では次に面会希望者のリストでございます」
「う……」
これがまたきつい。
ばらっと床まで届く長い紙に、びっしりと書かれた名前と役職、俺への面会申請日時と、ざっくりした要件。
一応ハヴェルの方で身分がしっかりしていると、保証されている者。
特に多いのは元聖殿派だった者たちが、手のひらクルーとなって俺へ面会と顔売りに来ている例。
“挨拶”のみの者はスルーして——あれ?
「デュラハン? デュラハンから申請きてる! 会う会う、明日でいい?」
「かしこまりました。こちらで了承のお手紙をお出ししておきます。午後一時頃でよろしいですか?」
「ああ、可能ならば昼食も一緒に摂りたいが……」
デュラハンは首に大きな傷がある。
結晶化してそこで繋がっており、なんと首の取り外しができるのだ。
食べ物を食べると喉でつかえて、頭が落ちることがあるという。
それを聞いた時の衝撃たるや……。
なので、食事も不要。
食べることは可能だが、そんな視覚的にキツいリスクがあるので、人前で食事することはないという。
俺も食事中いきなり人の頭が床に落ちるのを見ながら、平静を装って食事を続ける胆力に自信はない。
そんなホラーゲームみたいな食事会、いくら尊敬してる相手とはいえちょっとね。
お互い不幸にしかならないから無理に誘えない。
「場所はいかがしますか?」
「学院の寮の談話和室を押さえておいてほしい。デュラハンに量産機を見てもらいたい。相談にも乗ってほしいし」
「かしこまりました」
「レナも間に合えばいいなぁ」
量産型の石晶巨兵、気焔はかなり操作性も燃費も改善している。
しかし、千年前の基準とは月とスッポンだろう。
ギギに見せてもらった大和製、疑似歩兵前身兵器の設計図はすごく参考にしたけれど、操作性に関しては俺も明日、実際に乗ってみて確認する予定だ。
「しかし、どうせなら俺に面会予定の者の中から仕事を任せられそうな者をピックアップするのもありかもしれないな。父上に相談できるだろうか?」
「では、陛下への面会申請をしておきます」
「頼む」
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