終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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15歳編

約束の日(1)

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「まさかナルミがヒューマノイドに人格をインストールして起き上がってくるとは。お前の方こそ不老不死か」
「おや、言ってなかったかな? そうだよ?」

 というかこれは……この人の取り扱いをどうするべき?
 見た目は12、3歳前後の男の子のような女の子のような。

「とりあえず君とサルヴェイションのギアの様子を見よう。“歌い手”も協力してほしいな」
「は、はい。今からですか?」
「今からだよ。ある程度データを集めないと。一秒でも無駄にして死んだら元も子もないでしょ?」
「は、はい!」

 少しレナを休ませたかった気がするけど、ルオートニスどころか世界の命運がかかっている。
 今日だけは、頑張ってもらうしかない、かな?

「でもあんまり無理させないでねぇ!」
「わかってるよ~」
「大丈夫です! お任せください、ヒューバート様!」

 デュラハンと違ってレナはやる気に満ち満ちておられるぅ。

「ランディ、ジェラルド、レナとデュラハンが無理しすぎないように監視に行くぞ」
「「了解!」」

 俺も行けばいいんじゃん。
 なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろう。



 ***



 それから三日ほど、経った。
 約束の日まであと二日。
 レナは映像で見たリリファ・ユン・ルレーンの歌を完全に歌えるようになっていた。
 その歌をサルヴェイションに乗ったデュラハンに聴かせていると、サルヴェイションが白い光の線を走らせるようになった。
 つまり、これが!

「ようやくギアサードに上がったね」
「やっぱりこれがギア3なんですね」

 様子を見にきた俺の隣に、ゴスロリっぽい服を着たナルミさんが現れた。
 いつの間にか気色悪……いや、ゴスっぽい縫い目のたくさんあるうさぎっぽいぬいぐるみを持って。
 この人こんな人だったんだ……。
 って引いている場合ではない。

「とはいえこの程度では五号機と戦いにならないんですよね」
「サルヴェイションは十分強いと思いますけど、それでも、なんですか?」
「確かにギア・フィーネシリーズで一号機は基本スペックが一番高い。でもそのせいなのか、登録者にまったくもって恵まれていないのよ。初代は子どもだし、二代目は精神崩壊を起こしている状態で選ばれた。ディアス——デュラハンはそもそも二足歩行兵器のパイロット適正が低い。彼、医療従事者だからね。軍学校でも医療専攻で二足歩行兵器の操縦は学んでないんですよ」
「…………」

 空いた口が塞がらねぇー……。
 つまり、そもそもパイロットがベテランVS専門外ってことぉ……!?

「だから本番が来たらオレがサルヴェイションに連結して、オールドミラーの操縦補助をするしかない。でもぶっちゃけ僕も戦闘タイプではないから、演算で動きの予測をして攻撃するしかない。戦闘経験ないしね」
「…………」

 素人が加わる感じですね。
 了解です。
 絶望感が増す~。

「——!」
「どうしたんですか?」

 突然ナルミさんが空を見上げる。
 同時にサルヴェイションも。
 俺も釣られて見上げると、雲一つない蒼天に純白の騎士がいた。
 ここからでも重装備の騎士とわかる、巨体。
 つまり、あれは——!

「ラウト」

 本当に、来たのか。
 本当に壊しに。
 この国を、世界を。
 俺たちが生きようとする思いもなにもかも、許せないのか。
 なにがお前をそこまで怒りと憎しみに駆り立てるんだ。

『約束の日だ』
「え」

 約束の日はまだ二日ばかり先のはずだけど。
 と、言おうとしてハッとする。
 俺がミドレに生き埋めになって、助け出されたのは二日後。
 あ、二日、俺の認識がズレていたのか!

『ふん、まだたかだかギア3か、ディアス・ロス! アスメジスア基国双翼の名将、ロニー・ベル・ロスの甥御は戦闘の才能がないと見える!』
『当然だ。俺は研究者で医者だぞ。伯父上のような天賦の才などありはしない』
『それを言い訳にはしないだろう? お前は!』
『無論だ!』
「レナ!」
「ヒューバート様っ!」

 サルヴェイションがレナから離れるべく走り出す。
 その振動で倒れたレナを駆け寄って立たせた。
 ちょっと俺、二日勘違いしていて心の準備が全然できていないんですが。

「レナ、歌を!」
「は、はい!」

 なんて言い訳は通用しない。
『約束の日』に備え、準備はずっとしていたが、魔法であってもおそらくラウトの——あのミドレ公国の城を半壊させた胸の砲撃は防げない。
 それでもデュラハンがラウトを王都から離れた場所に引き離そうとしてくれている。
 しかし、そんなのはラウトもお見通しなんだろう。
 立ち上がったレナが歌い始めると同時に、五号機が黄金に光り始めた。

「——っ!」
「あっ……あ……あんな……!」

 白い機体に金の光の線。
 あれが五号機のギア3。
 そこからさらに、五号機が金の光をマントのようにはためかせる。
 あれが五号機のギア4。
 さらにその上……機体の色が黄金に変化して、光の粒子を放つ。

「あれが、ギア5……まさか、本当に到達していたというの……!?」
「っ……!」

 あのナルミさんすら驚愕の表情。
 そして俺は、サルヴェイションが強いという認識を根底から否定されることになる。
 瞬間移動でサルヴェイションが蹴り落とされたのだ。
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