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18歳編
自国のこと知らないこといっぱいだなぁ
しおりを挟む「切れたの?」
「アクセスは切った。だが、俺はそこまでプログラムに詳しいわけではない。ノイズを取り除いただけだから、抜本的になんとかなったかどうかは正直自信はないな」
「そう……」
俺も機械のプログラムとか、小学校の時習っただけで全然覚えてないなぁ。
っていうか覗き見してる王苑寺ギアン、キモい。
あいつへの謎の嫌悪感って、こういうところからも来てそう。
「——解析完了。廃棄データとデュレオの生態データ、ノーティスの研究データはとても役に立った。……このデータがあればブラッディ・ノーティスシリーズの治療薬も作れただろうな……」
「それはそれは残念だね。一番最初に一号機の登録者に、君がなっていたなら……という話かな。過去はどうしても変えられないから、気を病む必要はないよ」
「……そうか」
ディアスたちの瞳の色も、元に戻る。
ナルミさんとディアスの会話はよくわからないが、今のようなことを千年前にもできていたなら救えていた命があったのかな?
かつて救えなかった命も、今なら救える。
そして、ディアスが振り返った先にいるのはギア・マレディツィオーネのパイロット。
…………ラウトの結晶病で拘束されていてなんというか、可哀想なままなんだが。
「ラウト、そのまま拘束しておいてくれ」
まだ自由にはさせてもらえんらしい。
まあ、拘束が解かれたところで地下牢に繋がれたままなのだが。
なんなら自殺防止で轡も噛まされているし、この人。
「とりあえず特効薬の試薬を試させてもらう」
「!?」
「ノーティスナノマシンを長期間摂取した影響で、宇宙の民は老化速度が早く訪れる者と細胞分裂不良による内臓劣化で多臓器不全になる者、突然死する者など様々な要因で三十代半ばで死ぬものが多い。血液検査の結果お前は内臓劣化型。遺伝子に組み込まれている故、延命治療しかできないがこの特効薬を使えば細胞分裂不良の発生を抑えられる。他にも宇宙の民の捕虜に老化型と突然死リスク型がいたから、それぞれに試薬してもらうが構わないな?」
「ッッッッ~~~~!」
構わないな、と聞いているが容赦なく注射を打ち込んでおられる。
本人喋れないしね。
目をかっぴらいでなんとも言えないことになっている。
合掌すべきか、ディアスを止めるべきか。
ああ、もう薬品が体内に……止めるのは遅かったか。
じゃあしょうがないなあ。
……あ、抜かれた。
ゲッ……注射の針の太さエッグ……!
あれは絶対めちゃくちゃ痛いやつ~っ!
「注射針が太いのは許せ。地上の技術だとこれが限界なのだ」
「っ……!」
あ、そういう理由か。
俺が父上に頼んで医療改革してもらってから、現場の衛生面は抜本的に見直されたけど医療器具の、特に消耗品の製造はどうしても千年前には劣るからなぁ。
「その手の技術力、宇宙から提供してもらえるとありがたいんですけどね」
「そうだな。注射針や点滴針、カテーテル、外科手術用の器具全般……魔法で怪我や病気の一部は治せるが、そうでないものはやはり外科手術が必要になる。今の状態だと救える者も救えない。手術を魔法で代用するのは、かなり難易度の高いことだ。うちの村の医者でも五人ほどしかいない」
いや、五人もいるの十分やばくない?
うちの国の医療技術そんなとんでもないことになってたんだ……?
レナとの初デートの状態から、そこまで?
外科手術を魔法で全部補える魔法師とか、絶対人間国宝でしょ!?
「は? ちょっと待て。外科手術を魔法で全部補える魔法師が……しかも複数の医者がいるのかこの国!?」
「俺も今初めて知りました」
「俺の自慢の弟子たちだぞ」
ふふん、とドヤ顔で胸を張るディアス。
医神直属のお弟子さんではそりゃあやばいですわね。
ファントムがはっと我に返ったように詰め寄るが、俺も今知ったのでドヤ顔はできませんわ。
「ルレーン国には魔法で外科手術できる医者なんていないぞ。機械技術でなんとかしているようだが……」
それはそれですげぇ!
さすが千年前の機械技術が残ってる国。
「ハニュレオのソードリオに俺がつきっきりになるわけにはいかないから、弟子の一人を置いてきたんだ。ルオートニスの医療技術は日々進歩しているからな。ヒューバートが改革を推奨してくれたおかげで」
あ、あるぇ?
数年前の推奨がいまだにゴリゴリ推し進められてる……?
レナをチラリと見ると、なぜか「そうですよ! さすがヒューバート様!」というドヤ顔で見上げられたんだが。
「はい! それにヒューバート様が学院で平民にも魔法を教え、杖を与え、貴族のお茶会に給仕として平民を雇う文化を根づかせたおかげで、教養と魔法に長けた平民が卒業していき、各地で魔法を様々なことに役立てていると聞きます! ヒューバート様はすごいんですよ」
「エッ」
あの俺が死にかけたお茶会!?
意外にも俺に倣って他の貴族もお茶会で平民たちを雇うように!?
平民アルバイトが定着していた……!?
確かに給仕として働くだけでも貴族の立ち居振る舞いを見て学ぶことはできる。
さらに給仕の給金を貯めれば、それなりに裕福にも暮らせるだろう。
お金を気にしなくて良くなれば勉学に費やす時間も増え、成績はアップ。
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