終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
362 / 385
世界再生編

宇宙連邦代表たち

しおりを挟む
 
 シンプルに父上の年齢で退位は早いと思うし、俺にはやるべきことがあるからだ。
 レオナルドの臣籍降下を先延ばしにしてもらっているのも、今日レオナルドを他国の王侯貴族にお披露目しているのも、創世神召喚の儀式が失敗した時の保険だ。
 なぜなら創世神召喚の儀式とは、ギア・フィーネと登録者を連結させて融合、新たな創世神にすることなのだから。
 無理はさせたくないが、ジェラルドが二年も神格化及び神鎧化しなかったのでこうなってる。
 とはいえ簡単なことではないのは間違いないし、ジェラルドを責めるわけにもいかない。
 
「ランディはギア上げの調子はどうなっている?」
「一応、ギア3は難しくなくなっています。しかし4に上げるのがなかなか」
「あー、キツイよねぇ」
 
 ランディは順調っぽいな。
 ルーファスもギア3は余裕になってきたから、やはり問題は八号機とクロンか。
 うーん、ルーファスの部下と交換してもらえるか、今日相談する?
 一応宇宙の要人警護で会場には来るんだよね。
 あ、考えてたらまさに来たわ。
 
「宇宙連邦バベルより、オーガスタ・マフォルダ様。ムーンノーティスよりルラルド・メッス様。マーズノーティスよりワーズ・オルドンス様。アースノーティスより、マイ・クレバー様……」
 
 うわぁ。
 その後ろからも八人ほどの勢力代表者が護衛とともに入場してくる。
 しかし、先に入場してきた四人が桁違いに偉そう。
 偉そうとは印象ではなく態度の話だ。
 ルーファスたち『ストーリー』が彼らの護衛として一緒に入ってきたのだが、ルーファス以外気落ちした表情をしている。
 まあ、多分怒られたんだろうな。
 ルーファスたちの本来の任務は、セドルコ帝国を傀儡にして地上を制圧し、デュレオを捕えることにあった。
 俺——というかそのデュレオに丸め込まれて、ディアスの治療を受けて延命しているだけでなくセドルコ帝国はまんまと滅び度重なる地上への攻撃も、ことごとく殲滅させられている。
 本来であれば、ルーファスたちは敵に寝返った裏切り者と呼ばれても不思議ではない。
 しかしそうさせないために新国メルドレアとハニュレオの国境付近に、聖女による治療を施せる施設を作ってやったしディアスの治療方法をまとめて提供している。
 それはルーファスたちの失敗や損害を十分に補填できる情報だ。
 なにしろ宇宙がほしくて堪らない情報なのだから。
 それなのにあの態度か。
 いや、別に恩を着せるつもりはないが、あれだと完全に自分たちは上であり地上はあらゆるものを献上してくるのが当然、って嫌な感じに見えるんだよなぁ。
 実際ルーファスたちの顔色と複雑そうな表情を見る限り、そう思ってそうだけどね。
 負け続けなのに、あの顔と態度で入ってこれる上司に頭が痛いって感じかな?
 中間管理職のつらいところが顔に丸出しだよ、ルーファス。
 可哀想だけども。
 
「席は?」
「は? オ、オーガスタ様、ルオートニスの国王陛下にご挨拶はなさらないのですか?」
「フン。時代遅れの地上の民に挨拶などしてなんになる。そもそも言葉が通じるかもわからん」
「珍しく意見が合う。時代錯誤のドレスやらパーティーなどでもてなされて、時間の無駄だな」
「っ」
 
 クロンが顔を青くして俺の方を見る。
 その表情から、宇宙連邦の偉い人たちが失礼なことを言ってごめんなさいって言ってるのが伝わってきた。
 いいよ、父上もちょっと驚いてるけど、すぐに微笑ましいものでも見るような表情になってるもん。
 ルオートニス王家が聖殿により長年蔑ろにされた歴史は忌むべきものだが、その分この程度の態度に怒りを感じるほど狭量ではないのだ。
 最初に入場してきた特に偉そうな四人以降の、惑星ごとの勢力の長たちはそんなことはなく普通に父上に頭を下げて挨拶をして行ってくれたしね。
 
「無礼なのでは?」
「お許しになりますの?」
 
 が、周りはあまりそう思わないらしい。
 特にランディとシャルロット様の目が本気だ。
 ハニュレオのソードリオ王とミドレ大公もダンスホールの隣室にある、貴賓席に平然と座って横柄に使用人たちに命令している彼らを睨みつける。
 
「まあ、怒るほどのことでもありませんしね」
「侮られるのはよくないんじゃない?」
 
 参戦してきたのはミレルダだが、俺としては笑ってしまう。
 
「いや、侮ってくれるのならそれはそれで別にいいよ」
「なるほど。器が違いますわね。でしたらわたくしたちもなにも申し上げませんわ。ディルレッド国王陛下も気にされている様子はございませんし、ルオートニス王家の方々は器が大きくていらっしゃいますわね」
「聖殿が覇権を握っていた時代に比べたらマシだしね」
「……え」
 
 ジョークのつもりで言ったのだが、なぜかシャルロット様たちにドン引きされてしまった。
 なんで?
 
「国賓はこれで揃いましたね」
「そうだね」
 
 ではそろそろ来るかな、とレナに笑いかける。
 この日のために、色々準備してきたのだから、そろそろメインディッシュに入ってもいいと思うんですよ俺は。
 
 ——カッ。
 
 いやに耳に残る靴音。
 それが聞こえた瞬間、ダンスホールの空気が変わった。
 談笑が止まり、入場口に視線が集中する。
 鈍い人間でもダンスホール中の視線が入場口に向けられれば、いやでもそちらを見てしまう。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

処理中です...