終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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世界再生編

儀式の前に(1)

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「では、儀式についてご説明します」
 
 と、言い出したのはレオナルドだ。
 ジェラルドが神格化してから三日後、俺たちはルレーン国に来ていた。
 城の一室を借り、明日の朝に実行される儀式についての最終確認を行う。
 会議室には初期ギア・フィーネシリーズの登録者、後続機シリーズのパイロット、ルーファス、ランディ、トニスのおっさん。
 “歌い手”であるレナ、シャルロット様、ミレルダ、そしてデュレオ。
『神代の大穴』の依代で、サポートを行なってくれるナルミさんとファントム。
 巻き込まれて連れてこられたリーンズ先輩。なんで? って顔されてるけど俺からはすみません、としか。
 
「本日より、各機は登録者及びパイロットとともに指定の地点に移動していていただきます。移動に一日。明後日午後六時に儀式実行です」
 
 儀式は世界中の成層圏に定間隔で八機のギア・フィーネを配置する。
 惑星に輪を作るように六機。
 南極と北極に一機ずつ。
 そうしてエネルギーを生み出す概念の範囲を定める。
 その状態で八機の“連結”を行い、“歌い手”たちのブースターでギアを最大限に上げていく。
 初期シリーズはギア5まで。
 後続機シリーズはギア4まで上げられれば十分。
 ルレーン国の依代で創世神の誕生を促し制御し、人格データの融合を行って発生した神を依代に受け止めて地核に送る。
 その時、俺たちも“連結”で一つに半融合状態。
 地核でクレアを迎え、どうせ覗き見しているギアンに釘を刺して創世神の神格を切り離し霊魂体アストラルの神として確立させてクレアと交代してもらう。
 地上に戻ったら創世神が安定するまでギア・フィーネは成層圏に置き去り。
 俺たちは魔法で地上まで戻ってくる。
 無事に地上に帰ってこれたら——成功だ。
 ちなみに魔法の使えないルーファスは、宇宙のパイロットスーツで成層圏から降下するのは難しくないと言い張ったのでお任せすることにしたよ。
 風に流されて結晶化した大地クリステルエリアに落ちないことを祈るばかりだが、ディアスが「転移して助けておく」とこっそり言っていたので助けてもらえ。
 
「以上ですが、質問はありますか」
「ないなー」
「すや……」
「では、準備に入る」
「そうだな」
「すやすや……」
「………………」
 
 ちなみにシズフさんとそれなりにハードスケジュールのジェラルドは爆睡中である。
 ディアスとラウトはさっさと移動を開始してしまうつもりらしい。
 まあ、二人は南極と北極。
 早く移動しないといけないよな。
 
「あ。すまない、レオナルド、俺も少し用がある。ナルミさん、レナを頼みます」
「はい! 了解しました兄上! あとはお任せください!」
「了解だよ。レナ、少し休もうか」
「あ、は、はい」
 
 レオナルドに任せて、ディアスとラウトを追いかける。
 二人が向かったのはやはりエアーフリートのドック。
 
「どうかしたのか?」
「えーと……多分これが、最後だと思うので……サルヴェイションにお別れ言っておきたくて」
「ああ……それはいいな。俺もそうしようと思っていた」
 
 ディアスが柔らかく微笑む。
 サルヴェイションの前に立つ。
 俺とレナが初めて遭遇したギア・フィーネ。
 俺たちがあの場で助かったのはサルヴェイションのおかげだし、サルヴェイションのおかげで今がある。
 人を救うこと。
 俺にディアスの信念を教えてくれて、ありがとう。
 
「サルヴェイションは——元々インクリミネイト、というあまりよくない意味の名を冠る機体だった」
 
 人を罪に陥れる者、みたいな意味だっけ。
 ディアスの語りに見上げた黒い機体。
 これが夜中に現れて、町を一つ無差別に攻撃したと思うとそりゃあ悪魔のようだっただろう。
 それでも、その時の事情を知ってしまうとただ悪とは言い切れない。
 
「前の登録者二人とも、罪を犯した。この機体で引き起こされた悲劇だと思う。それでも俺はこの機体の登録者になれてよかったと思う。今こうして本来の役目を果たすところまで、お前を連れてこれた。ここまでこれたのもお前の助力あってこそ。……ありがとう」
「い、いや、そんなの俺の方こそですよ」
 
 突然俺に向かってそんなことを言うディアス。
 とんでもない。
 俺の方こそ、ディアスには本当に何度も何度も何度も……何度も……。
 
「えっと、本当に、何度もお世話をさせてしまいまして」
「ああ、まあ、同調障害は仕方ない」
 
 なんかある度に同調障害でぶっ倒れてディアスにご面倒をおかけしていたような気がします。
 
「そういえば……ディアスは最初から言ってましたよね。王苑寺ギアンがギア・フィーネを造ったのは、人類にギア・フィーネを捨てさせるためだって」
「ああ。最初から“こう”するつもりだったのだと思う」
「……やっぱりディアスはすごいですね」
「そんなことはない。俺ならきっと別の方法を考えていた。直す方にばかり囚われて、新たに生み出すという考えには至らなかった。おそらくそこが俺とギアンの違いだろう」
「いやいや、絶対それだけじゃないですよ。ナルミさんも言ってましたけど、ディアスは善性でギアンは悪性です」
「そう言ってやるな。それでも、あの男はあの男なりにこの世界を愛しているよ」
「…………」

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