リスナーは壁〜超陽キャのVtuberがド隠キャVtuberに恋をした〜

古森きり

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徹夜明け

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「椎名」
「んあっ」
 
 ベシッと頭に軽い衝撃。
 ゆるゆる起き上がり、目を擦る。
 夜に閉じたはずのブラインドが開いており、窓の外は明るい。
 頭を掻き、声をかけてきた小池を見上げる。
 
「おはよー……え、今何時……」
「九時過ぎ。大丈夫か? 根詰めすぎじゃねぇの? 動画編集か?」
「そう……今連載番組四本になったから、追いつかなくて……でもひと段落したわ」
「公式番組一気に増やしすぎだもんな。お疲れ」
「お、ありがてぇ~」
「それ飲んだら顔洗ってこいよ」
「んおー」
 
 小池がブラックコーヒーの缶をテーブルに置いて行ってくれる。
 それを開けて、ごくりと一口。
 あ、ウマ~。
 
「朝飯、嶋津が買いに行くけどお前どうする?」
「俺牛丼食いたい~。汁だく大盛り」
「俺チー牛」
「了解~」
 
 持つべきものは心優しい同僚だなぁ。
 楽しみだなぁ、汁だく大盛り牛丼。
 
「おーい、ファンレター届いたぞ。仕分け手伝ってくれ」
「了解~。お、すげぇ、やっぱり男性ライバーは強いな」
 
 缶コーヒーを飲みながら、小池が持ってきた段ボール箱を覗き込む。
 五割が織星ハルト宛。
 三割茉莉花、一割夜凪、残り一割がその他のライバー。
 女性リスナーの行動力と応援にはなにが効くのかわかっている感がすごい。
 茉莉花宛の手紙、五枚中四枚は女性リスナーからだもんな。
 
「織星人気だなぁ。もう収益化したんだろう?」
「ああ。アマリはあと百人くらいで千人なんだけど……織星は歌みたもバンバン上げているし歌枠やってるからか、三千人も見えてきているし……一万人も夢じゃないかも」
 
 俺も昨日の夜の歌枠は作業BGMにさせてもらった。
 マジでいい声で歌うんだよな。
 しかも、性格も陽の者。
 合間のトークも軽快で、チャット欄からのコメントも頻繁に拾う。
 リスナーを褒める言葉を中心に会話するため、アーカイブにもコメントが多い。
 
「相方の明星は?」
「明星は――千人超えたな! よし、収益化申請するようメッセージ送っておくわ」
 
 俺が金谷を振り返ると、パソコンでチャンネル者数を確認する。
 金谷が嬉しそうにスマホを取り出した。
 アマリは明星まで追い抜かされちゃったか。
 まあ、仕方ない。
 アマリには腐らずに頑張ってほしい。
 今までの事務所のことを考えると、こんなに収益化申請が早くできるとは……。
 
「甘梨さんもあと百人くらいだろう? ここで一気にコラボとかしたら、あっという間じゃないか?」
「なるほど、それもそうだな。提案してみるよ」
 
 コラボは結構諸刃の剣なんだよな。
 コラボの時だけ登録する層がいるから。
 しかし、百人くらいならば「今まで知らなかったけれど、みてみたら面白いじゃん」って層が残ってくれる。
 ここでコラボするならゲームが上手い鍵置ルラかな?
 
「コラボ? わたしでよければ話してみたいな」
「うわ、茉莉花。おはよ。え、早いな?」
「このあと友達の部屋の掃除に行くの。外で嶋津さんに会ったから、お味噌汁も追加してあげたわよ。感謝しなさい」
「ウオー! 茉莉花様ー!」
 
 事務所の中が湧き立つ。
 入ってきた茉莉花が嶋津と牛丼をテーブルに並べていく。
 今日茉莉花のラジオ収録日だった。
 今日もビシッと決めた体のラインのわかるワンピースとベージュのコート。
 ゆるやかに巻いた髪を左に軽く結んで垂らしている。
 俺に追加の味噌汁とサラダとプリンを事務所人数分。
 女神!
 
「それより、コラボの話してたわよね? 椎名さんの妹さん……甘梨リンちゃんと、わたしの。いいわよ、わたし、やるわよ。いつやる? 今夜は他の子とのコラボだし明日もコラボなんだけど、明日の朝ならできるわよ。明日は八時から一時間くらい朝雑談やるから、それでよければ」
「いいのか!? ありがとう、茉莉花! すぐアマリに相談してみるよ」
「うん」
 
 ニコニコ笑って機嫌がよさそうな茉莉花の提案を、すぐにアマリにメッセージを送る。
 アマリ、もしかしてまだ寝てるかも?
 
「ごめん、メッセ返ってきたら返事するよ」
「うん、わかった。じゃあ、一回友達の部屋掃除してくる。十二時ごろに収録スタジオに行くね」
「ああ、ありがとう。準備してるよ」
 
 今日は本当に機嫌良さそうだなぁ、茉莉花。
 颯爽と手を振って事務所をあとにした茉莉花に返事をする。
 早速立て替えてくれた嶋津にお金を払い、牛丼をいただくことにした。
 うめぇー! 味噌汁も染みる~~~!
 そしてサラダも俺らの健康を気にしてくれて買ってきてくれたんだろうな。
 
「茉莉花って本当にいい女だよな。椎名は茉莉花と結婚しないのか? 付き合ってるんだろ?」
「ぶぅ……!?」
 
 危ねぇ、味噌汁噴き出すところだった。
 嶋津の質問に袋の中にあったナプキンで口元を拭く。
 
「付き合ってねぇよ!」
「あれ、そうなのか? 少なくとも茉莉花はお前に気があると思うぞ」
「ないない。あんないい女が俺なんかに靡くわけないだろ。それに事務所所属ライバーに手を出すなんて絶対ないって」
「「ふーーん」」
 
 なんで納得していなしそうなんだよ。

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