リスナーは壁〜超陽キャのVtuberがド隠キャVtuberに恋をした〜

古森きり

文字の大きさ
19 / 50

唄貝カインの占い

しおりを挟む
 
 もぐもぐご飯を食べ終えてから、収録スタジオを準備して機材を調整。
 今日の収録もコラボで、コラボ相手は三月にデビューする新人『唄貝うたかいカイン』。
 織星とは別タイプの歌うまライバーで、特技は占い。
 中身は前髪が長くて目が見えない、三十手前の小柄男子。
 声が高くて女の子みたいなのがコンプレックスだったらしい。
 そのため、本人の希望でガワは『性別:唄貝カイン』という中性的な顔立ち。
 異世界ファンタジー風の衣裳。
 右側の髪が長いメカクレ。
 金谷はいっそのこと「可愛い女の子のガワにする?」と言ったが首を横に振っていた。
 ドラムでライブハウス通いをしており、紙袋を被ってドラマーとしてドラムのいないグループの手伝いを有償で行っているという。
 しかし、一人でカラオケに行って思う存分歌うのが好きだそうだ。
 また、顔出しせずに女占い師としてつぶやきキャスで占いの仕事をしている。
 つぶやきキャスだけで月十万ほどの収入があるというから占い師としての腕も確か。
 
「おはよう~。今日はよろしく」
「よろしくお願いします……」
 
 そんなこんなで唄貝はすでに『りゅうせいぐん☆』公式チャンネルで占い番組をやっている。
 すでに第八回まで収録済み。
 初回は茉莉花、二回目は夜凪……と先輩ライバーの占いをして、次回からは茉莉花繋がりで大手箱からゲストを呼ぶ予定だ。
 しかし、今回は茉莉花のラジオ番組のゲスト。
 唄貝デビューは再来週頭。
 デビュー日は今週末なので、唄貝の初配信直後に茉莉花のラジオ番組に出演、という形だ。
 
「茉莉花は十二時過ぎに来るって言ってたから、少し待っててくれ」
「はい」
 
 十一時五十分。
 茉莉花はいつもこの時間に来るし、そんなに待たないだろう。
 そう思っていると、ソファーにいた唄貝はおずおずと「あの……」と声をかけてきた。
 
「はい。なんだ?」
「織星さん、甘梨さんのこと、好きってめちゃくちゃ配信で言ってますけど……」
「ああ……うん……知ってる」
 
 織星は毎配信、アマリのことを好き好きめっちゃ好き、とリスナーに言っている。
 概要欄に『鳩行為禁止! 本当にやめてください! 恋愛相談は俺とリスナーさんたちの秘密!』と書いているが、アマリも織星の歌枠を聴きに配信を見に行っているので本人にもバレバレだったり……。
 
「え、あ……いいんですか、あれ……」
「まあ、社長も別に問題ないかな、って言ってた。そういう売り方って認識なんだと思う。織星も本当にどこまで本気かわからないしなぁ」
「あー……なるほど。それは考えてなかったです」
 
 同じライバーの中にもこういう認識なんだ。
 一度ちゃんと三者面談的にアマリと織星を揃えて色々、今後の話とかした方がいいのかなぁ?
 明星が初配信の時にポツリと言っていた「恋愛話をエンターテイメントにするのかな」っていうところが、俺もアマリも引っかかっているんだろう。
 
「このままでいいとは思ってないんだけど、織星がアマリをベタ褒めしてるのを聞いているのは悪い気はしないんだよな」
 
 アマリの気持ちはまだ確認していないが、あれほどのイケメンに妹がベタ褒めされていると「だろ~~~?」となる。
 多分、織星の配信を見ているアマリも悪い気はしていないんじゃないかな。
 織星の歌枠を見た翌日の朝ご飯の時のアマリは、割と機嫌がいい。
 そして昨日の織星の配信を見たっぽい話題がアマリの方から出るのだ。
 特に誰の配信、とは言ってないが「私って、結構可愛いのかな」と照れながら言うのだから。
 俺は全力で「は? お前が可愛いのなんて、にいちゃんはお前が生まれた時からそう思ってるぞ?」と肯定する。
 中学から引きこもりになっているアマリのことを、俺は身内として全力で肯定してきた。
 しかし、よその他人がアマリを肯定してくれるのはアマリの自己肯定感をほどよく向上させてくれるのだ。
 やはり外の世界からの肯定は、身内からの肯定とは別の種類なのだろう。
 
「……占ってみます? 五分くらいで終わる簡単なやつでよければ」
「え? 占い?」
「はい。簡単なやつ。誰にでも当てはまる感じですけど……方向性がほんのりわかる、みたいな」
「ええ……」
 
 少し考えて、機材の準備も終わっているので興味本位のまま「じゃあ」と唄貝の前に座る。
 唄貝が出したのはタロットカード。
 シャ、シャ、とカードを混ぜて、テーブルの上にその束を置いた。
 
「椎名さんが知りたいことを考えながら、一番上のカードを引いてください」
「え? あ、う、うん」
 
 お前がもうカード切ったのに?
 もう結果は一番上に出てるんじゃないのか?
 首を傾げながら、アマリと織星のことをこれからどうすべきか、と考えながら一番上のカードを手に取ってみた。
 そのままパラリとめくってみる。
 
「えーと、これは?」
「運命の輪のカードですね。正位置」
「うん……?」
 
 俺は占いのことはさっぱりわからない。
 カードを返すと、唄貝は「運命の輪はその名の通り運命、チャンスなどの意味があります」と話始まる。
 
「正位置、恋愛の意味なので『運命の出会い』『恋の機会』とかいい意味ですね」
「えっ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...