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ダンジョン『井の中』(2)
しおりを挟む「武器のスキルツリー解放できてない?」
「う」
「武器スキルツリー?」
「あ、そうか……先輩たちも初めてですもんね。システムの説明をしますね」
「そうだね。最低限整えてから入ろう。まずね……」
シーナとバアルがSBOのシステムを説明していく。
プレイヤー自身と武器、防具、アクセサリーにそれぞれスキルツリーが設定してあるということ。
プレイヤーレベルの他に武器、防具、アクセサリーにもレベルが設定してある。
武器、防具、アクセサリーはモンスターを倒すとドロップするが、レベルマックスになった武器、防具、アクセサリーは武具屋、装飾品店で上位武具、アクセサリーと交換できる。
また、武器、防具、アクセサリーにあった[武器スキル][防具スキル][アクセサリースキル]はプレイヤーが覚えられるので、武具やアクセサリーを手放しても[武器スキル][防具スキル][アクセサリースキル]はなくならない。
プレイヤー自身と武器、防具、アクセサリーのスキルツリーはモンスターを倒すとレベルアップする。
重要なのは歌によるバフ、デバフ。
バフは多種多様だが、同じ曲を数人で歌うことや、ハモリ、歌自体の技術を精密採点でバフの時間や上昇、下降の効果が決まる。
歌が上手ければ上手いほど、バフの効果は高く、長くなるということ。
初期職は剣士、弓士、槍士、拳士、銃士、魔法使い。
魔法使いはバフが他職よりも効果が高く発揮できる他、デバフの歌を歌うことができる。
中位職になると剣士は騎士、傭兵、戦士。
弓士は弓師、槍士は槍師。
拳士は拳師、モンク、盾士。
銃士はガンナー、スナイパー、砲士、ライダー。
魔法使いは奏士、楽師、歌手、踊り子、遊び人。
これらの上に”上位職”があり、その上に”最上位職”もある。
そのあたりはレベルを上げていかなければ解放される。
「このくらいは覚えておくといいかもね~」
「つまり珀ちゃん……や、のうてバアルはその歌バフが得意な”魔法使い”なんやな」
「そう。僕は元々MMOで魔法使い系ばっかり使ってたから。SBOは歌出バフを使う職業だから、ちょっと他のMMOとは違うけれど」
「わしはこういうVRMMO自体初めてやからなぁ。結構細かいシステムなんやね」
「えっと、初期設定だとみんな剣士になっていると思うので、変更すると自動で初期武器になります。ちなみに俺とセイは剣士ですね」
周……ルカも初期職のままなので、剣士だろう。
それを聞いてシーナとバアル、セイ以外が改めて自分の職業や装備、スキルを確認していく。
「銃士ってかっこええやん~。わし、銃士になるわ」
「あ……ヒナ先輩、『井の中』は投擲系は威力が落ちます。こればかりはバフでなんとかなるものではないです。武器のスキルツリーを開放していれば、水中でも威力が変わらずに戦えるものがあると思いますけれど」
「おう~~~。ほな、剣士でええかぁ」
「僕も剣士~。中位職になれば”騎士”があるんでしょう? 星光騎士団の騎士として、ゲームの中でも騎士やりたいよねぇ~」
「じゃあ、俺も」
「自分も」
「あ、えーと……じゃあ……大丈夫ですかね?」
「そうだね」
結局バアル以外、中位職の”騎士”を目指すことにした。
セイにも武器のスキルツリーを開放させ、突き技を取得させた。
「まずいね、一時間くらいの予定だったけど22時まであと30分しかない」
「今日中にグラディエスクレイフィッシュはきついですね」
「ほなとりあえずレベル上げでええやん? 淳ちゃん……や、のうてシーナちゃん、サポートに回ってくれへん? わしら初心者やし、魔法使いちゅうんは歌でサポートする職業なんやろ? 歌の練習にもなるしな~?」
ハッとする。
現実で声が出ないからと誘ってくれるのだ。
前衛で歌うよりも、魔法使いとして後衛でサポートに徹した方がいいだろう。
気を使ってもらったという感動で、ちょっと泣きそうになる。
「は、はい。でも、魔法使いとしてはバアル先輩の方が優秀ですし……」
「魔法使いが二人いてもいいんじゃない? ハモリの練習になるし」
「あ、は、はい! じゃあ、あの、よろしくお願いします!」
メニューから職業を”魔法使い”に変更する。
装備はそのままなのに剣を持てなくなったので杖に持ち替えた。
初期装備の杖は育てていないので、ヒナとミオとルーヴァと変わりない状態。
多少レベルは上がっているけれど。
「それじゃあ行こうか。予定は変更して全員のレベルを10にしようね」
「「「はい!」」」
「「「了解!」」」
バアルの宣言で、全員ダンジョンに飛び込んだ。
最初に現れたモンスターは金魚。
「いくよ、シーナくん」
「はい!」
「「~~~♪」」
歌を歌い出す。
他メンバーにプラスのバフがポポポンと付与される。
『攻撃力上昇』と『素早さ上昇』と『刺攻撃力上昇』
意外にもふよふよした藻を上手くジャンプ台にして、真っ先にモンスターに襲いかかるのはヒナ。
バフの効果もあるだろうが、『井の中』のモンスター平均レベルは8~10。
それをほぼ一撃で急所に突き立てて倒したのだから恐ろしい。
「あれ、弱ない?」
「ヒナ先輩が強すぎたんです」
「なんで?」
「バフ効果が高すぎたんですかね」
「ええ~?」
ちらりとバアルを見るシーナ。
笑顔でごまかすバアル。
「ハモリのプラス効果かな?」
「そうかも?」
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