ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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師匠ゲット

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「それよりも、どうする?」
「わかった。私を鍛えて」

 どこまで信用できるのかわからないけれど、私は強くならなければいけない。
 あの鬼ババアたちと関わりがないというのなら、この人に味方になってもらう。
 鬼ババアに囲われて――捕らわれているというのなら、少なくとも敵ではないと思うし……。
 この人も敵に回るのなら、屋敷を出て一人暮らしできる場所を探そう。
 学校に通いながら、施設について調べるとか。
 保健の先生に相談とかしたら、安全に保護してもらえる施設とかわからないかな?

「では最初の課題をつけよう。朝起きたら日の出とともに、東の離れにある小さな滝壺で体を清めなさい。みそぎという修行の方々だよ。あの場所は、この屋敷で最初に陽光を浴びることができる場所。陽光は浄化の力を持つ。この世のものではないものはマイナス……『隠』の気。対して陽光は文字通り『陽』。プラスの力だ。聞いたことがあるかな? 陰陽いんようという言葉。陰陽は基本中の基本となる。覚えておくといい」
「いんよう……」

 陰陽。陰陽おんみょうのイメージが強いけれど、正確には陰陽いんようなんだ。
 いや、まあ、陰陽いんようって読むのが一般的なんだろうけれど。
 基礎の基礎は陰陽。
 そして……滝壺で朝に身を清めるぅ!?

「さむそう」
「そうだね、寒いね。だが、夜に溜まった陰気を浄化するのには神聖な水で流れ落とすのが一番いいんだ。水はすべてのみなもと。まあ、覚えることはたくさんあるが、『陰陽』と『五行』、そして我々が力を借りる神々は必ず覚える必要がある。書物で学ぶもいいが、力を使うのなら常に清い心身でなければ、逆に我が身が危険となるだろう。それに、身を清めるのには他に自らの霊力を高める効果もある。今の君のような幼い体には厳しいかもしれないが、日の出の陽光は浄化の力が強い。それを浴びることで、君自身の霊力を高めて身を護る力に変えるのだ」
「大変だけど……やった方がいいって、こと?」
「そう。霊力が高ければ護りの力にもなるし、戦う力にもなる」

 確かに。
 ちなみに「水風呂は?」と聞くと「それはちょっと馬鹿かな」と言われてしまう。
 あー、なるほどね。
 鬼ババアやマザコン親父が私に強いていた水風呂は完全に嫌がらせだったわけね。
 別に修行とかそういう理由じゃなくてね。
 はい、奴らのクソポイントが上がっただけでした。

「わかった。頑張る」
「うん、頑張りな。君は元々高い霊力を持っているが、今のままでは宝の持ち腐れだ。その霊力をより高みへと洗礼するためにも、朝の禊はした方がいい。おそらくそのうち自分でも禊の重要性を理解できるようになることだろう」
「わかった」

 ちなみ滝に打たれる必要はないらしい。
 小さな滝は“流れ”を作るもの。
 隠の気を“流れ”で落とす。
 滝に打たれるのは、隠の気を浴びたあとでいいという。
 ふ、ふぅーん?

「水に入ったら強くなれるんだよね?」
「強くなれる。二年続ければ菊子を超えるだろうね」
「きくこ?」
「君の祖母」

 あの鬼ババア、菊子っていうんだ。
 どうでもいいわ。
 ……秋月さんは鬼ババアのこと名前で呼んでいるんだ?
 まあ、あんまり興味ないけれど。

「学校から帰ったら僕のところにおいで。まずは基礎から教えよう」
「はい! よろしくおねがいします!」

 まずは基礎から。
 まあ、普通そうだもんね。
 よぉし、絶対強くなってあの鬼ババアとマザコン親父を黙らせてやるわ!
 クックックッ……あいつらよりも強くなって、絶対廊下を雑巾掛けさせてやる。
 あと普通にお金稼いで穏やかな暮らししたい。
 せっかく名家のご令嬢に生まれたんだから、人助けして感謝されながらお金持ちになって推しに課金する幸せで穏やかなオタク生活を満喫してやる!
 ゲームが始まるまでに強くなれれば、織星おりほしハルトボイスの宇治家真智うじいえまちの声聴き放題になるもんねー!

「…………頑張って強くなろう」
「うん……?」

 まっずい、思い出した。
『宵闇は~』は攻略対象も軽率に死ぬ。
 私が最初から強ければ、彼らも助けられる。
 彼らっていっても、私がプレイしたルートは三人分だけれど。
 でも、そのどれもが悪役令嬢であるはずの真宵と同じく『祟り神になってヒロインに祓われる』ものだ。
 私が強くなれば、祟り神になる前に助けられるだろう。

「あ! しゅーげつさん」
「なにかな」
「祟り神ってどうやったらやっつけられる?」
「祟り神? ……祟り神は倒せないかな」
「え?」

 祟り神、倒せないの!?
 で、でもゲームでは――。

「祟り神は“神”だ。倒すと祟りが散らばって広がり、土地を穢して浄化に数百年規模の『閉鎖』が必要になってしまう。神に喧嘩を売れば人も必ず“なにか”を取られる。命であったり、健康な体だったり、なにかを感じる心であったり、家族、親族、友人、仲間……人の住めない土地を何代にも渡り封印して祟りを鎮めなければならないんだ。だから祟り神は基本的に『戦う対象ではない』ということだけは絶対に覚えておきなさい」
「戦ったら、ダメ……? でも……」

 でもヒロインは祟り神を浄化していたのに。
 浄化……そうだ、浄化は?

「祟り神、浄化は?」
「浄化はできるけれど、手順が必要だ。相手は神ということを踏まえ、礼を尽くして取引をしなければならない。でなければ先程言った通り、まず命、健康な体、心。なにかを取られる。取引をして、祟り神が納得すれば浄化を受け入れてもらえることもある。でも本当に、祟り神は相手にしてはいけない。祟り神は“人間よりも上の存在”だ。それだけは忘れてはいけないよ。もし万が一遭遇することがあれば、礼を尽くして立ち去ることを許していただきなさい。もし立ち去ることを許していただけないのなら、なにか菓子なりお茶なり水なり酒なりを捧げる約束をしなさい。怒らせなければ、供物を捧げることを許してもらえるはずだから」

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