ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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家の話(1)

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 翌日放課後。
 推しショタ真智の家、初! 訪! 問!
 となるわけですが。

「ただいまー」
「「「お帰りなさいませ、真智坊ちゃま」」」
「お、お邪魔します」
「「「いらっしゃいませ、真宵お嬢様」」」
「どうぞこちらへ」
「まあ、靴を揃えられるなんて、さすがは千頭山せんずやま家のご令嬢。躾が行き届いておられますわ」
「そのようなことわたくしどもでやりますのに」
「は、い、いいえ」

 豪邸。お手伝いさんがずらりお出迎え。
 なん、なんっ、なん……なんじゃこりゃぁぁぁああ!?
 あのオラオラ系復讐者、宇治家真智うじいえまちの実家ってこんなとんでもない豪邸なのおおお!?
 いや、まず『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の攻略対象はどいつもこいつもなにかしらの名士。
 ジャケットセンターの攻略対象である善岩寺十夜ぜんがんじとうやは霊媒師の家系でエリート。
 もう一人のジャケットデカデカストーリー公開済み攻略対象、御愚間英おぐますぐるは五代続く祓い屋の家系。
 ストーリー公開中の攻略対象の一人大離神日和おおりかみひよりは平安時代から続く陰陽師の家系。
 真智もそう。
 江戸時代から続く隠れキリシタンが発祥の、悪魔祓い師の家系。
 それにしたってこんなに家が大きいなんて思わなかったんですが?

「ま、真智のお家、大きいね、すごく」
「え? そうか? お前んちの方が立派なんじゃないのか? 離れを結界の核に見立てて建設している、稀有な家って叔父さんがすごく褒めてたぞ。やっぱり十代以上続く祈祷師の家はすごい! って!」

 え、あ……千頭山せんずやま家って、そんなにすごいんだぁ?
 私はまだよくわかんないよ、と言うと「叔父さんがすごいって言ってるんだからすごいんだよ!」と拳を握る真智。
 おいおいおいおい、急に可愛いなこいつ。
 いつの間にか叔父さん大好きになってんじゃーーーん。

「ようこそ。真宵さん。私は真智くんのおばさんです」
「おばさん!」
「初めまして、千頭山せんずやま真宵まよいです」

 リビングに案内されると、めちゃくちゃ美人な黒髪黒目のザ・大和撫子って感じの女性がエプロン姿で佇んでいた。
 ぺこり、と頭を下げる。
 こんな美人がおばさん!
 なんか、お腹が少しぽっこりしているような……?
 集中して気の流れを探ると、やはり魂の気配が二つ。
 お腹に光が見える。
 あれ……“視える”……。
 視える!?

「っっっ」
「どうかした?」
「ど、どうもしないです。大丈夫です。えっと、えっと……」
「うふふ、緊張しなくてもいいのよ。私はただのおばさんなんだから」

 嘘だよ、絶対若いって!
 二十歳前半だよ絶対!
 あなたがおばさんだったら前世の私はどうなるの!?
 やめて、若い人がおばさんって自称するの!
 泣くから!

「さ、それじゃあ二人ともこちらに座って。美味しいお菓子を用意してあるの」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう! 三重子さん」

 三重子さん!
 おばさんとは呼ばず、相手の尊厳を傷つけずに呼ぶにはそれだぁー!

「三重子さん、ご馳走になります」
「あらあら」

 案内されたのはこたつだ~。
 しかも掘りごたつ。
 リビングにこたつってちょっと意外だけれど、姿勢を正さなければならないから訓練にはなるかも?
 お腹にしっかりと力を入れて、こたつに入る。
 横に真智が入ってきて、顔を見合わせたらニコ! っと笑われる。
 はあ? 可愛い。

「どうぞ」
「え? 和菓子!? すごい! これお家で作れるの!?」
「な! すごいよな!? 三重子さん、和菓子ならなんでも作れるんだぞ」
「すごーい!」

 差し出されたのは飴細工と餡団子、苺大福。
 これ作ったの!? 家で!? 手作り!?
 いや、まあ材料があれば作れるんだろうけれど……絶対手間暇かかってるよね?
 わあ、わあ、わあ……。

「嬉しいです、ありがとうございます!」
「喜んでもらえて嬉しいわ」

 ところで私、今日真智の家に呼ばれた理由がよくわからないんだけれども?
 叔父さんが私に会いたい、みたいな話だったよね?
 真智の叔父さんはまだお帰りではないのでは?

「ただいまー」
「あ、帰ってきた」
「旦那が帰ってきたみたい。おかえりなさーい」

 こんな美人で若い嫁さんに出迎えてもらえるなんて最高だろうなぁー。
 しかもお菓子のレベルがすごい。
 これはまず間違いなくメシウマ嫁。
 いい嫁さんもらってんなぁ、真智の叔父さん。
 リビングに入ってきたスーツ姿の男性は、これまた非常に若々しく見える優しそうな男性。
 ネクタイを少し緩めながら「やあ、君が千頭山せんずやま家の真宵姫だね。初めまして、自分は真智の叔父さんで、宇治家宇治家草真そうまといいます」と頭を下げてくれた。
 慌ててこたつから出て、正座で頭を下げる。

「初めまして。お招きありがとうございます! 千頭山せんずやま真宵まよいと申します」
「これはこれはご丁寧に。ですがそこまで頭を下げていただかなくても大丈夫ですよ。家格でいえば千頭山せんずやま家の方が上ですから」
「え?」

 千頭山せんずやま家の方が、格上……!?
 な、な、な、なにを言っているの?
 我が家が格上?
 家格が? はあ?

「す、すみません。私、まだそんなのわからなくて」
「いえいえ、むしろそれが普通なのではないでしょうか。ただ、我が家は『六芒星ろくぼうせい』の中では一番格下。それほど遜ってはいけませんよ」
「……っ」

 な、なにそれ。
 全然知らない世界なんだけれど?

「もしかして、やはりそういうことは学んでいない?」
「は、はい。お恥ずかしい限りです。私は千頭山せんずやま家の跡取りとして認められておりませんので……だから、あの……」

 “やはり”と言われているということは、外から見ても今の千頭山せんずやま家はおかしく見えているってことだ。
 恥ずかしい。

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