ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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 新興宗教って、前世の世界でもトラブル多かったから当時はよりその辺りの警戒心が強かったとかなんだろうけれど。
 まさかその差別が今も続いてるってことなの?
 
「それも相まって、家格が一番下なのです。千頭山せんずやま家は霊力の高さもさることながら、祈祷師をどこよりも数多く輩出しているため、我が家以外の六家……善岩寺ぜんがんじ家、御愚間おぐま家、大離神おおりかみ家、安倍あべ家に娘を嫁がせて権威を強化し、今の地位に上り詰めました。もちろん、やはり古来よりこの国を陰陽の力で守り続けてきた安倍家とその分家となる大離神おおりかみ家は立場的にも別格ではありますが……安倍家と大離神おおりかみ家のご当主は愛妻家というか……一途なのが特徴らしく、千頭山せんずやま家から来た霊力の高いお嫁さんを相当大事にしてきておられてですね」

 なるほど、大好きなお嫁さんの実家には頭が上がりづらいわけか。
 それを重ねてきて、家の力関係が今のように歪んだ、と。
 だって安倍ってあれだよね?
 陰陽師の――私でも知ってる超有名なアレだよね?
 あの超有名陰陽師の……だよね!?
 それが千頭山せんずやま家に家格で負けるなんて姑息なことをしたとしか思えない。
 嫁に出して家格を逆転させるなんて……っていうか、お嫁さんに一途な属性が家系の特性って……!
 乙女ゲームの登場人物として完璧か?
 
「じゃあ、マヨイのばーちゃんは誰にも助けてもらえないの?」
「いや? さすがに安倍家と大離神おおりかみ家から言われたら……とは、思うが……なにかしら策は必要だろう。そもそも、最近は公の場に出ていないから、まずははそこからというか……」
 
 引っ張り出さなきゃいけないってことか。
 確かに、あのババアいつどこでなにしてるのか全然わからないんだよなぁ。
 
「君がそこまで考える必要はないよ。それは僕らのような大人が考えることだから。もちろん、君の今後の生活も」
「はい……」

 真智の叔父さん、私の生活まで考えてくれている。
 とてもありがたい。
 ここまで他人が考えてくれているのに、私は……自分の家のことなのに。
 
「私……あの、私も……自分の家を立て直したいと、考えています。だから、私……」

 家を立て直さないと。
 お金がない。
 私の年齢でも稼ぎつつ、修行もしつつ、学校にも行きつつ……。
 そのために――私は。

「私! Vtuberになろうと思います! だから、どうか私にインターネットをください! 機材や色々は、自分でなんとかするので!」
「「「ぶいちゅー、ばー?」」」

 鬼ババアはドケチ。
 そして粦にお給料を支払いつつ、自分の生活も守るために……いえ、なによりも破滅エンドを回避するために自分を鍛えなければいけない。
 禊は毎日すれば伸びる子であるということはわかった。
 でも、秋月に抱き締めてもらった時に私は気づいたのだ。
 私……いえ、“私”と“真宵”は母のようになりたくない。
 娘の記憶にすら残らないような死に方はしたくない。
 そして“私”と“真宵”には、『誰かに認められる経験』が圧倒的に足りていない!
 秋月だけじゃ満足できないくらい、私たちの心は承認欲求で溢れている。
 無理もない。
 一番甘えたい、構ってほしい時に家を立て直さなきゃいけないだの、修行して強くならなきゃいけないだの全部引っくるめて、なおかつ承認欲求を手に入れられる方法!

「はい! 私がVtuberになって稼ぎつつ修行しつつ千頭山せんずやま家の祈祷師として働くことで、お祖母様に“圧”をかけます」

 目を見開かれる。
 小学生がそこまで考えるとは、思わないだろう。
 だが、すぐに「……?」と不思議そうな顔をされる。

「その、ぶいちゅーばー、というのはなにかな?」
「バーチャルワイチューバーです。ワイチューバー、ありますよね?」
「ワイチューブ……聞いたことはありますけれど……」

 よかった、やっぱりワイチューブは存在するんだ。
 そしてワイチューブがあるってことはワイチューバーもいるはず!

「我々はそのような界隈と接してこなかったので、関わりがないというか……それがどうしてそうなるのかというか」
「そうですよね。わかります。私もまだちゃんと調べてないんです。だからこそインターネットで調べたいんです。私に今必要なのはインターネットなんです!」
「インターネット……」

 めちゃくちゃ真智と真智の家族を困惑させてしまう。
 でも私がこうこうこういう事情で、と母の自死のことを含め、でも秋月のことは伏せつつ話すと三人は神妙な面持ちになってから非常にどうしてもいいのかわからない顔で見合わせている。
 そうだよね、困惑だよね。
 でも、この世界でVtuberをやることで私の破滅フラグは全部破壊できると思う。

「身内ではない我々には、少し難しい。だから我が家に来た時、自由に使って構わないよ。こちらにおいで」
「え、は、はい」

 真智の叔父さんに案内されたのは書斎。
 そこには私が買ったものよりも、わかりやすくスペックの低いノートパソコン。
 マジで調べものならこれでいけそう!

「ちなみに真宵さんちは回線あるのかな?」
「ないです。おとなの人じゃないと契約できないって」
「あ、ああ……」

 そりゃあ当然のことですよね。
 でも、正直百年前にそこまで世界がめちゃくちゃになっているのに、インターネットやパソコンがあるところがミラクルな気がする。
 どうぞ、と電源を入れて差し出されたノートパソコンに、感動した。

「使っていいんですか!?」
「ど、どうぞ。我々は仕事の受注などにしか使わないので……」
「ありがとうございます!」

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