ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

文字の大きさ
35 / 132

それぞれの職の役割

しおりを挟む

 強く頷く十夜母。
 そして、目に見えて顔色が悪くなる。
 六家の中で千頭山せんずやま家は一番くらいが高いらしいもんね。
 その次が名門ともいうべき安倍家と、その分家だか弟子の家だかが発展した大離神おおりかみ家。
 一番下が新参の真智の家、宇治家うじいえ家。
 じゃあ、自然と十夜の家――善岩寺ぜんがんじ家は四番目か五番目。
 序列で言うと、そのくらいになってしまう。
 善岩寺ぜんがんじ家も千頭山せんずやま家に手を出すのは、軽率にできるとじゃないって感じなのかな。

「そうなの……なにも聞いてなかったから、驚いたわ。叔父さんには他になにか言われた?」
「もしマヨイの家のことを、他の家の人が聞きたそうだったらおじさんに聞いてって言ってたよ。マヨイのししょーのことは一回会って話したい~って言ってたけど……」
「難しいと思う。師匠、本家からあんまり出られないから」
「複雑なご家庭事情があるのね」

 はい。それはもう。
 とは言えず、こくり、と頷くに留まる。
 これで察していただければと思う。
 全部話してもいいけれど、あまりプラスの感情になる話ではないから、浄化前の土地の前では話さない方がいいだろう。
 そしてそれは、プロの十夜母にも伝わっている。

「わかったわ。それじゃあまずは真宵さんに土地の浄化を手伝ってもらいましょう。でも、ここから先は霊媒師の仕事だから無理はしないでね。真宵さんの家は祈祷師なのだし」
「は、はい」

 はい、と返事はしたものの、そういえばそうだった。
 しかし、職種を言われたところで『やることは同じじゃないの?』と首を傾げる。

「れーばいしってきとーしとなんか違うのか?」

 ナイス、真智。
 私も今ちょうどそれを思っていた。
 前世では普通のOLやってたから、こっちの業界のそういう職種の差がわからない。
 霊媒師と祈祷師ってなにが違うの?
 悪魔祓い師はわかりやすい。
 悪魔を祓う、専門家。
 じゃあ霊媒師と祈祷師は?

「霊媒師は霊を下ろしたり、触れたりして霊の気持ちを理解したり霊の心残りを聴いて、霊の代弁をしてあげたりする職業よ。祈祷師は結界を張ったり、祈りを捧げて祟りを鎮めたり、願いが叶うお手伝いをしたり、気の流れを整えたりするのよ。霊媒師にも祈祷師と同じことはできるし、祈祷師にも霊媒師と同じことはできるけれど、やはり専門職がやった方が効果がとても大きいわ。だから仕事する時は一緒に仕事をすると効率がいいのよ」
「「「へーーーー」」」

 なるほど、そう説明されると結構違うものだ。
 違うというよりも、実は役割分担がしっかりとしている。
 悪魔祓い師は悪魔になったモノを祓う専門家。
 どちらかというと攻撃が主体。
 祈祷師は結界を張ったり、祈りを捧げて祟りを鎮めたり、気の流れを整えるサポート主体。
 霊媒師は悪霊や悪魔になる前の霊たちを鎮める専門家。
 どちらかというと予防が主体。
 ただし、個人の性質によっては戦う力を取り入れたり守りの力を取り入れたりして、自己流に仕上げることができる。
 できることの多い個人ほどこの世界観では『優秀』であり『戦力』なのだ。
 反転巫女のこともあるから、祈祷師の千頭山せんずやま家が重宝されているのもよくわかる。
 結界を張ったり、祟りを鎮めたり、気の流れを整えるのは基礎中の基礎。
 他の職業――特にサポートが必要な家は絶対に一家に一人はほしいはず。
 お嫁さんに対して超一途という安倍家や大離神おおりかみ家に千頭山せんずやま家の女性がよく嫁いでいた話、仕事の面、役割の面から見たら結構妥当なのかもしれない。

「真宵さんはこの歳で浄化ができるのでしょう? 引くて数多になるでしょうねぇー。いや、本当、あとで詳しくは聞くけれど……可能ならぜひうちにお嫁に来てほしいわー。安倍家や大離神おおりかみ家にバレる前に」

 バレる前にって……。

「あ、いけない。お話が楽しくて浄化の予定時間が押しちゃってる。それじゃあママ、浄化に行ってくるわね。三人はここにいて、このお鈴を鳴らしながらお香を扇で林に向かってパタパタしておいてくれる?」
「はーい」
「お香パタパタはどんな効果があるのー? ママー」
「お香とお鈴は合わせて使うことで結界と浄化を同時にできるのよ。負の気を纏う霊や悪霊や悪魔は、こういう音や匂いが嫌いなの。だから自分の身を守るためにも、ここでお鈴を鳴らして、お香を焚いていてね。ママがパパーっと、悪霊をやっつけてくるからねー」
「うん! 頑張ってね、ママー!」

 拳を掲げる十夜母。
 意気揚々と林の方へ向かうのを見送って、私たちは十夜母がつけてくれたお香を林の方へと扇を使って流す。
 なんだか、風が吹いてきたせいでお香の煙が帰ってきてしまう。
 こういうのも霊障――霊による現象なのでは……。
 悪霊は弱めだが、霊の数が半端ない。
 百は超えている。
 半分別世界みたい。
 だから相当、お香の煙と香りを嫌がっているのだろうが……煙が届かないと浄化には程遠い。
 自分で持ってきた清めた水に塩を少し混ぜたものを周りに撒く。
 これは秋月に教えてもらった、清めの塩水。
 塩には私の気が入りやすいよう、粦に手伝ってもらいながら火を通して固めた。
 火で炙ることで火の気も入るしね。
 だから塩水を撒く時に自分の気を込める。
 よし、周りの負の気が面白いぐらい引いていく。

「あれ……なんか空気が違う」
「本当だ。お前なんかした?」
「師匠に作り方を教えてもらった塩水を撒いたの。本当はこれに清酒も混ぜる予定だったんだけれど……子どもだけだとお酒が買えないからね」
「「へーーー」」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!

ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」 卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。 よくある断罪劇が始まる……筈が。 ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...