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まだ子どもだからを言い訳にしないために
しおりを挟む「おかげであの子は変わり始めているの。私含め、家族も、そのことを心からありがたいと思っている。あれなら本当に“友人”ができるかもしれない。あの空気の読めないあの子に」
「それは……きっと日和さん次第だと思います。私はあまり、関係ないような」
「あの子がその努力を始めたきっかけがあなたなの。だからお礼を言いたかったのよ。姉としてお礼を言わせてちょうだい。本当にありがとう」
「いえ……」
首を横に振る。
あの人の話を聞かない日和が私の言ったことを実践しようとしているなんて……。
本当に、心底、ガチで英と友達になりたいのね。
「それに、個人的にも粦と友達になれたきっかけもあなたなのよね。あなたが粦に『友人を作るように』と言ってくれたのでしょう? ふふ、本当に小学生なのかしら?」
「えっ!! え、っとおおおおお!」
ぎくーーーー!
さ、さすが日和のお姉さん!
勘が鋭い……!
「冗談よ。あまりこういうことは言いたくないけれど、千頭山家のお嬢さんは聡明なことが多いというから納得しているの。それに、あなたと粦が置かれている現状についても聞いているわ。両親は日和を変えたきっかけであるあなたと日和の婚約話を言い出しているけれど、私が粦から聞いた事情を話して止めているの。それでいいかしら?」
「ッ……!! は、はい! もし、そんな……大離神家の方に、そんな話をされたら……私……」
殺される。
あの鬼ババアは私が幸せになることを絶対に許さない。
家のためになるからと、利用するようなことはしないだろう。
徹底的に、私を不幸にして殺そうとする。
もうそれはあの鬼ババアの生きがいにでもなっているんじゃないだろうか。
首を横に振り、怯える私に視線を合わせるようにしゃがむ稲穂さん。
「大丈夫よ。そうならないように私から両親に話を止めてもらっている。あなた自身の気持ちも大切だしね」
「あ、ありがとうございます」
優しい微笑みに安堵する。
言われる前にやってくれている時点でシゴデキ女。
美人だし、おとなになったらこんなシゴデキ女になりたいな。
そう思わせてくれるような娘さん。
「なにか困ったことがあったら気軽に相談してちょうだいね。粦を通してもらってもいいから」
「は、はい。ありがとうございます」
「それじゃあ、お邪魔しました。粦、また今度ね」
「はい! また!」
家の中に入ることなく、玄関で用件を済ませて稲穂さんは家から出ていく。
はあーーー、緊張したぁー。
思わず胸を撫で下ろすと、粦が買い物袋を持って家に入ってくる。
「お留守番をお任せして申し訳ありませんでした。お一人で大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫。粦のお友達、すごく綺麗な人だね」
「はい! そうなんです! しかも優しいですし、頭もいいですし!」
「素敵なお友達ができてよかったね」
「はい。……はい。本当に。真宵お嬢様のおかげです」
「さすがにそれは……。粦がいい子だからだよ」
なんにしても、粦のお友達に会えたのはよかったなぁ。
そして、日和と私の婚約の話が出てるとか恐怖でしかない。
十夜との婚約の話も今は止まっているみたいだし、ひとまず結婚関係は落ち着いている?
それなら安心なんだけれど……。
「ねぇ……それはそれとしてさあ」
「はい。どうされました?」
買い物袋を持ってキッチンの方に向かう粦の後ろについていく。
歩きながら不安なことを聞いてみる。
「日和さんのお姉さんが……その……私の実家のことを知っているってことは、もしかして、鬼ババアに悪魔が憑いているかもしれない話も知っているの?」
「さあ? そのお話はわたし、されたことありません」
「そ、そう」
まあ、粦には話さないかも?
粦は霊力こそあるが、霊能力者としての修行はしていない。
うちの鬼ババアに取り憑いている悪魔を祓うためには、鬼ババアを公の場に出さなければならないと言っていた。
千頭山家は古くからの名士、安倍家と大離神家を差し置き『六芒星結界の六家』の一番上の地位に鎮座している。
理由は安倍家と大離神家に嫁を何人も輩出しているから。
安倍家と大離神家の人間は嫁溺愛、嫁一筋、愛妻家の性質が強く、嫁の実家を尊重するのだとか。
実力というよりは安倍家と大離神家に取り入って今の地位を得たようにしか見えない。
いや、もちろん千頭山家の担う“ありとあらゆるサポート”は大きいと思う。
実際自分で修行の浄化作業を撮影してもらうのも、道具を持ってきてもらうのも粦や英の協力あってこそ。
そういうサポートの重要性は、当事者になったからこそわかるものだ。
それを蔑ろにしてできるものではない。
それでも第一位はやりすぎでしょ。
鬼ババアとマザコンクソ親父は仕事もしてないって言うじゃない。
私がなんとかする。
もっと強くなって、秋月も粦も安全安心して過ごせる家を取り戻す。
それには――やっぱりもっと強くなり、今はおとなしく潜ってVtuberデビューしてから少しづつ知名度と支持を集めて私という存在がこの世に存在することを知らしめる。
あの世間体命の鬼ババアが私に手を出せないくらいに!
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