ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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我が家、複雑すぎ

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 移動しながら、祭り会場の中の気の流れを探ってみる。
 本当だ、左回りに少しずつ気が流れていく。
 今はまだ緩やかだが、確かに普通の場所の気の流れに比べると早い。
 確か、気の流れが変わると磁場が発生して、磁場が変わると重力が変化する。
 あらゆる磁場が交じり合うと、体調を崩したりするのだとか。
 じゃあ、この夏祭りの会場は? って思うが結界に守られていて磁場は安定しているという。
 気の流れを中心に集めて渦にする役割も担う結界。
 こういうのを張るのが千頭山せんずやま家。
 本家ではなく、分家が作ったそうだ。
 分家と聞いてほげっと口を開けてしまった。
 
千頭山せんずやま家って分家があったんだ!?」
「一軒だけ残っているんですよ。実質的な実務を担当しているのが分家の千頭山せんずやま家ですね。本家である千頭山せんずやま家の菊子様がここ数年、表に出て来ておられないので、分家のかさね様が千頭山せんずやま家の代表として働いておられます。なんというか……」
「真宵嬢は会ったことがないの? 親戚だよね?」
「ない」
「分家の今のご当主って、真宵嬢のお祖父ちゃんじゃなかった?」
 
 祖父!?
 ドキッとしてしまう。
 祖父って、他の女のところに行ったという、あの!?
 
「分家の当主なの? 知らなかったです」
「自分の家のことなのに?」
「う……」
日和ひより、変な言い方しないでください。お嬢はまだ六歳なのですよ? 親類の関係性なんて難しくてわからないに決まっているじゃないですか。まして、『六芒星』の家の親類縁者関係の家系図は自分の家のことでもよくわからないのに」
「それは本当にそう」

 納得するんかい。
 いや、でも安倍家と大離神おおりかみ家は確かに複雑そ~う。
 そもそも大離神おおりかみ家の興りも確か安倍家の弟子の家系で力をつけたため『六芒星結界』に参加できるレベルになったとか安倍家から派生したとかなんとか色々言われてるもんね。
 力の大きな家はそれだけ家系図が複雑。
 それにしては千頭山せんずやま家、分家が一つで少ない。
 まあ、少ない理由は至極簡単で、先程聞いた即身仏。
 即身仏になった人が多すぎて、分家はほとんどが潰えたのだ。
 家を繁栄させるために即身仏になったのに、順位だけ上がって分家が潰えたのは本末転倒な気がするけれど。
 今は“分家”だが、実質的な仕事をやっている点で今“本家”と呼ばれている鬼ババアの家は“宗家”、分家の方が“本家”になりつつあるらしい。
 宗家とはすべての家の“源流”。
 本家は実質的な“代表の家”。
 鬼ババアが表に出なくなっていることから、実務はすべて愛人の家に転がり込んだ祖父とその愛人との間にできた子どもが担っているんだそうだ。
 は、はあーーー……。
 じゃあ、千頭山せんずやま家の順位維持に貢献してるのは、その家の人たちのおかげじゃない……!
 不倫なんて褒められたモノじゃないし、害悪だとしか思わないけれど、あの鬼ババアが好き放題している家庭から逃げた祖父が幸せな家庭を築いて仕事も順調って……はあああ……。
 やっぱ嫁の存在って家にとってデカいんだなぁ。
 っていうか、祖父って愛人と子どももいたんだ。
 そして立派に仕事をしているんだ。
 なんか、どんどん情けない気持ちになってきた。
 うちのマザコン親父……仕事……してないのか……。
 愛人の家の子におんぶに抱っこだなんて、あのマザコン親父は恥ずかしくないのか?
 マザコン親父にとっては異母兄弟ってことでしょう?
 歪んでるなぁ……。
 正しい気の流れに改善していくことが仕事のはずなのに、なんて歪んだ家なのだろう。
 そりゃあ秋月もなんとかしてほしい、って言うよね。
 でもそれなんとかできるものなの?
 私、中身はおとなのはずなのにどうしたら“正しい流れ”にできるのかまったくわからないよ!
 ちゃんと話し合って決めるべきだと思うんだけれど、なにが正しいのか……。
 確か祖父は婿入りのはずなんだよね。
 正式な血筋が一応マザコン親父と私。
 ただ、私は正式な孫として認められていないから、後妻のお腹に宿る“弟”が跡取りになる。
 うーん、それならそれで別にいいんだけれど……今の形はとにかくなんかちゃんとした流れじゃないもんね。
 まあ、そういうのは我が身の安全を確保してから。
 Vtuberになって、自分の名前をしっかり世間に売っていかなければな。うん。

「誰もいませんね」
「いないねぇ」
「仕方がありません、少しここで待ちましょう。屋台を道なりに進めば最終地点はここです。そのうち誰かが来ると思いますよ」

 とか話していると、会場内で『迷子のお知らせです』と流れ始めた。
 おお、古典的だが場内放送という手が。
 携帯電話は使えないけれど、この手の機材は使えるのね。
 これでりんたちを呼び出してもらおうかしら?

『××町内からお越しのマヨイちゃん。黄色いワンピース、黒い肩までの髪、六歳くらいの女の子。もしお見かけの方は、中央放送受付までお越しください――繰り返します――』
「「「………………」」」

 顔を見合わせてしまう。
 誰だ、私を呼び出したのは。
 りんか?
 善岩寺ぜんがんじ家の方々か?
 恥ずかしくって思わず俯いて顔を覆ってしまった。

「向こうも探してくれているみたいなので……行ってみます」
「お、お供します、お嬢」
「俺も一緒に行くよ~。真智と十夜と九夜くやも一緒なんでしょ?」
「は、はい」

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