ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

文字の大きさ
91 / 132

反省します

しおりを挟む

「ただいま帰りました。お嬢様~」
「っ……!? り、りん……」
 
 玄関の方からりんの声。
 時計を見ると、四時過ぎ。
 そうか! りんが帰ってくる時間か!
 助かったぁぁあ!
 
「お嬢様!? どうされたんですか!?」
「ちょっと力を使いすぎてしまったの……秋月に聞いていたけれど、霊力を使い切るとお腹が空くんですって。今私すっからかんで」
「す、すぐになにかお作りしますね!」
 
 りん、私の言いたいことをすぐに理解してくれた。
 買い物袋をキッチンシンク横に置いて、エプロンをつける。
 すぐに手を洗って、袋からなにかを取り出し料理をする音が聞こえ始めた。
 心地のいい音。
 まあ、完成まで耐えられないのでちょっぴり固めのカップラーメンを啜る。
 はあ……、口に食べ物を入れたらだいぶマシになってきたけれど……。
 ぐううううう……。
 
「嘘でしょ……食べながらお腹が鳴っている」
「お嬢様、なにをしたらそんなに消耗するんですか?」
「お祓いの動画を撮影したの。いっぱい気を込めて、すっからかんになるまで頑張ったら……こうなっちゃって」
「なんと! 頑張られたのですね。それじゃあ、りんも頑張ってお作りしますね!」
 
 そう言ってくれて、てきぱきとさらになにかを複数作っていた。
 本当にどんどん料理の腕が上がってない?
 その年齢で複数の料理をマルチタスクで作るなんて。
 料理の才能があったとしか言えない。
 
「おや? どうして空っぽになっているのかな?」
「わあ、秋月!?」
 
 急に覗き込まれて変な声を出してしまった。
 長い髪が垂れる中、秋月がだいぶ険しい顔をしている。
 
「君の長所は生まれながらの豊富な霊力だ。それを空っぽにするのは非常に危険だよ。弱くなる。ごく普通の年相応の少女になってしまうということだ。そんなにヘロヘロでは錫杖も振るえないだろう?」
「う……。は、はい」
「霊力を大量に使う時はなにかを行うのなら、なにか食べるものを持ち歩くなり、近くに置いておくなりしないとダメだろう。穴が空くということは、他のものが入り込む隙になるということだ。危険だよ」
「あ……あっ……わ、わかった。すごく気をつける」

 と言ったのだが、秋月のお小言、というかお説教は止まらない。
 霊力がなくなるということは、なにも守れないということ。
 それは自分を含め、一緒にいる人も守れない。
 家の中だとしても今日のようにりんが外出中だったら動けなくて倒れてしまう。
 その間に誰かが侵入してきたら?
 鬼ババアの手の者だったら?
 そう言われるとスーッと血の気が引く。
 霊も怖いが、生きている悪意ある人間が一番怖い。

「それに、千頭山せんずやま家は祈祷師の一族。前線で戦う者たちが消耗して倒れたら、彼らを助けるための霊力タンクになり得る役割。彼らを守る盾となり、最後まで立っていなければならない存在。真っ先に倒れてしまったら、誰も助けられなくなる」
「う……は、はい」
「まったく。いったいどれだけ強力なお祓い動画とやらになったのやら。養分補給したら、ちゃんとその動画も確認しなさい。君の霊力を全部込めるようなモノ、動画であっても一般人には刺激が強いものになりかねないだろう。悪霊や悪魔のように悪影響を及ぼすものを祓うような霊力をぶち込んだなんて、その強い力に一般人が耐えられるのかい?」
「あ……」

 そう言われて、思わず目を逸らす。
 自分の霊力は自分が思っているよりも多いらしい。
 その霊力を殺意たっぷりで込めてしまったら、霊力がない人にとってどんな影響かあるか……。
 そこまで考えたことなかったぁー。

「お待たせしました! 簡単なものですが、まずはオムライスです!」
「わあ! オムライス! 美味しそう~! いただきます!」
「あの、秋月様……お嬢様のご飯もっとお作りした方がいいですか?」
「真宵の霊力量を考えると大人の男の三食分は必要だろう。普段それほど使ってこないが、今日のコレは……」

 と、濁された。
 林や橋の浄化でも、ここまでの霊力を使ったことはない。
 だから余計に秋月に驚かれたのかも。
 っていうか、いくら私でも成人男性の一日分の量を一食で消費できるわけないじゃない。

 ――ぐううううう……。

「「「………………」」」

 もぐもぐとりんが作ってくれたオムライスを食べながら、お腹が鳴る。
 食べたのに全然お腹が膨れない。
 スプーンいっぱいに盛った一口を口に入れて、咀嚼して飲み込むがお腹がまた鳴る。
 変な汗が出てきた。

「お、お、お、お腹空いた……」
「おかわり作りますね!」

 嘘でしょおー!?
 本当に全然お腹に食べ物が入った気がしない……!
 こんなことある!?
 信じられないんだけど!?
 こんな経験初めてなんだけど!?
 これが霊力空っぽになるってこと!?
 あっという間にオムライスが消えて、ただ空腹感が残る。

「霊力の扱い方、操作の仕方はだいぶできるようになっていたと思っていたけれど……まだまだ未熟のようだねぇ」
「う……うう……。反省しますう」
「お、おにぎりを! つ、摘んでおいてくださいませー!」
「ありがとうー」

 デッカ。
 すごいでっかい塩おにぎりがお出しされた。
 一合ぐらい握られていそう。

「あとしそ昆布と、納豆……すぐに卵焼きをお作りします! ハンバーグも作り始めますけれど、間に合わなさそうでしたらシャケも焼きますね。あ、こちら漬物です」
「あ、ありがとうー」

 この塩おにぎりと白米のお供で凌げということらしい。
 凌げるだろうか……?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!

ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」 卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。 よくある断罪劇が始まる……筈が。 ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...