ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

文字の大きさ
97 / 132

真智の家に避難(2)

しおりを挟む

「仕方ないなぁ。教えてあげるよ」
「マジで!?」
「よかったじゃないか、真智。真宵ちゃんがいる間、宿題を進めてしまいなさい」
「そうね。そうしたら旅行にも心置きなく行けるわ」
「旅行?」
「おう! 結界の端っこの方に旅行に行くんだー! おじさんの仕事のついでなんだけどさー」
 
 へー、いいなー。
 旅行……旅行かぁ。
 考えたことなかったなぁ。
 でも結界の端の方って、行って平気なの?
 
「仕事ということは、お祓い関係ですか?」
「そう。先日の夏祭りで善岩寺ぜんがんじ家のご夫婦に相談されてね。悪魔が住む屋敷のお祓いに、協力することになったんだ」
「……あ……悪魔が……」
 
 善岩寺ぜんがんじ家の、夫婦。
 確かに夏祭りの時、私が一夜さんと話していた時に保護者同士で話していたな。
 あの時――悪魔が住む屋敷の話をしていたのか。
 ……善岩寺ぜんがんじ家の……。
 
「あ、あの、そのお屋敷って……だ、大丈夫なのでしょうか?」
「一応宇治家うちは悪魔祓いのプロだからね。話を聞く限りなんとかなりそうな家ではあったよ。住んでいる人もいないようだから、取り憑かれている人から追い出す系ではなく直接対峙する形になりそうだが」
「お祓いにはついて行っちゃダメなんだよなー?」
「ダメだね。真智はまだ危険だ。悪魔は悪霊よりも強い。真智の今の霊力量と実力では見学もさせてあげられないよ」
「ちえー」
 
 ちぇーじゃないよ。
 それにしても……悪魔か。
 嫌だな、真智の叔父さんと、十夜のお母さん、お父さんが悪魔と関わるの。
 十夜の場合は『悪霊に乗っ取られて行方不明になる母』というプロフィールだけれど、真智は『悪魔に“両親を”殺害されて復讐者となる』わけだ。
 もちろん、真智叔父や善岩寺ぜんがんじ夫妻がプロなのもわかる。
 私が心配しすぎなのだろう。
 でも、やっぱり悪魔と関わると聞くと不安になる。
 真智も十夜も、まだゲームプロフィールの“事件”が起こる年齢なんだもの。
 幼少期をたとえば小学校低学年と仮定するのなら、小学校高学年になるまでは不安が続く。
 
「そのお仕事、取材させていただくことはできないでしょうか?」
 
 不安だ。
 不安だから、私がついていくことはできない?
 取材といえばなんとかついていけないかな、と提案してみたが、やはり真智叔父には笑顔で「ははは、ちょっと難しいかな」と言われてしまう。
 そ、そうだよね。
 依頼された仕事なら、子どもがついていくのは無理だよね。
 
「屋敷には連れて行けないが、旅行なら一緒に来ても構わないよ。千頭山せんずやま家の様子がおかしいのなら、落ち着くまでうちで“旅行”していたことにすればいい」
「い、いいんですか!? でもあの、家族旅行、ですよね……!?」
「もちろん構わないよ。真宵ちゃんには真智がいつもお世話になっているしね」
「そーだぞ、一緒にいこーぜ!」
 
 マジか、いいのか、旅行について行って。
 正直泊まる場所は別でもいいからって思っていた。
 いや、でも……旅行となると交通費や宿泊費が――。
 
「で、でも、取材しせていただけないと……経費で落ちない」
「し、しっかり考えておられるのですね……真宵さん」
「それなら別荘近場の神社を取材してみるのはどうかな? パワースポットとして有名な、大栄だいさかえ神社があるんだ。白蛇が祀られていて、皮膚病に御利益があると言われているよ。真宵ちゃんが参拝すれば、修行になると思うよ」
「だいさかえ神社、ですか……」
 
 そういえば秋月も『心霊すぽっとやぱわーすぽっと? という神社巡りも、霊力を増強することができるからおすすめ』って前に言ってたな。
 思えば言われた割に神社参拝には一度も行ったことがない。
 どんなものなのか一度は行ってみたいと思っていたけれど、どこの神社がいいのかまでわからなかった。
 これを機会に行ってみるのもいいかも?
 
「確かに、取材としてなら交通費も宿泊費もそれに伴う食費も経費計上できます!」
「では、行く方向でいいかな?」
「はい! ぜひ!」
 
 その大栄神社の動画を撮って、Vtuberとして初の“出張”にしてみよう!
 
「じゃあそのためにも真智は今日一日で宿題ドリルをいっぱい進めておかないとね」
「エッ」
「私、霊力回復のためにたくさん食べなきゃいけないあら先に準備しておいてね。目標はドリルの半分まで! ……そういえば、自由研究のお経の暗記はどこまで進んでいるの?」
 
 思い切り目を背けられる。
 ああ、これはお経暗記の方も進んでないな。
 
「もう、仕方ないなぁ。お経の暗記も手伝ってあげるよ。神社に参拝するのならそこで読ませていただきましょう。間違っていてもいただけるもの」
「そうだね。神社は心がこもったお経さえ読めば力を分けてくださるだろう。とはいえ、うちは悪魔祓いの家だから、ラテン語の勉強もしなければならないけれどね」
「えー、英語でも難しいのに、ラテン語なんてもっとわかんないよー」
「悪魔祓いにはラテン語が必要なんですか?」
「悪魔は元々日本にはいなかったんだよ。国外から避難してきた外国人が増え、悪魔も増えたんだ。そして、最初の悪魔はラテン語で神の力を借りて倒された。悪魔はその系譜から、ラテン語を非常に恐れる。自分たちの始祖を倒した言葉だからね」
 
 それゆえ、悪魔祓い師はラテン語の習得が推奨されているそうだ。
 まあ、言語の習得なんて簡単じゃない。
 それに、正しいラテン語の発音を確認できる人間も日本国内で三人くらい。
 必須にできないのはそう言う事情。
 しかし逆を言うとラテン語を習得できたら超強い。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!

ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」 卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。 よくある断罪劇が始まる……筈が。 ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...