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進路のことも考える
しおりを挟む春月さんとのお茶会は、かなり有意義なものだった。
自営業としての申請の保護者枠を、春月さんが担ってくれることになったのだ。
その他にも保護者欄が必要なものは春月さんが担うと約束してくれた。
どこまで信用できるのかはまだわからない。
でも、一応“肉親”が後ろ盾になってくれたのは心強いから、信用できる人だといいな、と思う。
善岩寺家や宇治家家、大離神家の支援だと『嫁に来い』の不安が大きかったから。
安倍家もそういう不安が、ないわけではないけれど……でも、少なくとも血の繋がりがあるとだいぶ安心感が違う。
「よかったですね、お嬢様」
「うん。どこまで信用していいのか、まだ怖いけれどね」
「春月様は信用して大丈夫だと思いますけれど……」
「うん……」
でも、申し訳ないけれど千頭山家の人間で信用ができるのは粦だけなのよね。
秋月は人間じゃないから、カウントしないけれど。
そこは許してほしい。
だって、あの鬼ババアの血が入っているんだもの。
「でも、いよいよVtuberとしてのデビューに追い風が吹いてきた気がする! よーし、準備頑張るぞー!」
「よかったですね! 頑張ってください! 粦は応援しかできないですが……」
「もー、なに言ってるの! 粦も配信業をするのよ! 粦の料理はもっとこの世に発信すべきなんだから!」
「え……ええええ!?」
そういえば、粦にはまだその話をしていなかった。
私は私の前世の知識をもとに、この偏りのある世界に外国のレシピを広めてほしいのだ。
それは外国の文化を残す意味もあるし、粦自身の自立の助けになるはず。
それを説明すると、まだ困惑しているが『自立』という言葉に納得はしてくれた。
しかしやはり身バレは怖い。
私としては顔出しせずに手袋をした手のみの演出に文字のテロップを入れて料理動画を作ればいいと思っているのだ。
「手、だけですか」
「そう。文字の入れ方は教えてあげるわ。なんなら私がやってもいいの。文字の方が動画を停止して材料を確認できるでしょう? テロップも見ながらできると思うし、手袋で清潔感も主張できるし顔バレもしないし。どうかな? 粦のチャンネルは全部粦の収入にすればいいから!」
「わ、わたしの!?」
「自立するためにもお金は必要! それに、お金を稼げるようなれば高校や大学にだって行けるでしょう?」
「こ、高校……わ、わたしが、大学!?」
この世界、女性はまだ『女は学が不要』『中学を出たら嫁入り』が推奨されている感じがする。
人口が少ないから、増やす目的も大きいのだろうけれど大学に行く女性は少ない。
むしろ、結界の外の新しい町の開拓、移住が推奨されている。
それは当然、若夫婦が理想。
でも、一人で生きていくのなら大学に行って資格などを取るのは絶対必要。
「いや、まあ、結婚したい人が、粦にいるのならそれは私にはどうにも引き留められることじゃないけど。……だけど……。でも、お相手が名家の人なら、大卒女ぐらいじゃないと釣り合わないかもしれないでしょ? 自分の価値を高めるためにも、大学に行くのはいいことだと思うの」
「それは……で、ですが、わたしにはそれほど知識をつけられるとも思えませんし」
「大学に行って学んで多くの知識を身につけられれば、きっと粦を助けてくれるわ。知識は絶対に裏切らないからよ」
人間は裏切るけれどね。
前世の私を殺した後輩みたいにね。
でも、身につけた技術や知識は生涯味方になってくれる。
粦は料理が上手いし、努力家で勤勉だからきっと行こうと思えば大学だって行ける。
私はまず、生き延びられるかどうかがわからないから、進路のことは今は考えない。
生存第一。
だから余計に粦には行きたい進路の幅を増やしてほしいな。
「わたしのために……そんなに考えてくださるなんて……」
急に粦が手で口を覆って泣き始める。
え、な、なんで?
泣くようなこと言った?
あわあわしていると、粦は涙を指で拭う。
「わかりました。わたし、大学を目指して勉強してみようと思います……! 今からお金も貯められるだけ貯めてみます……! お嬢様のご提案をいただいて、ワイチューブでお料理動画を撮って、お金を稼ぎます! それもたくさん貯めて、大学資金にします!」
「うん!」
そこで条件のいい優しい男を見つけて幸せな結婚をしてもらってもいいし、自立した一人のかっこいい女性としての幸せをゲットしたっていい。
まあ、そのためにも春月さんという後ろ盾になっていただけることになったのは本当に助かる。
なんならちょっと、粦のことも気にかけているようだったし。
「じゃあ早速準備しましょう! チャンネル開設と、動画撮影! 私も手伝うからいっぱい撮影しようー!」
「はい! まずはなにから始めましょうか……」
「うーん……やっぱり子どもも大好き、ハンバーグからはどうかな」
「お肉料理ですか……。お肉は庶民階級にはなかなか手が入らないと思うのですが」
「……まあ、でも、お肉のレシピがわからないから作れないっていう人もいるかもしれないじゃない。誕生日とかの特別な日に、ってサムネやタイトルに入れたらお肉を買ってみようっていう人もいるかも」
「なるほど!」
そういうのも考えておかなきゃいけないのか。
そうか、需要と供給か。
そういうのも考えていかねばならないのか。
勉強になるなぁ。
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