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実家の終わり(1)
しおりを挟む「は――」
デビューの告知をして、三日。
毎日一生懸命告知を行い、デビュー配信までのカウントダウンショート動画をしていたので突然の報告に固まってしまった。
その日、私と粦が住む千頭山家の別邸に、安倍家のボディガードに付き添われながら父――マザコンクソ親父こと千頭山礼次郎がやって来た。
汗だくになりながら正座して、真っ青な顔で絞り出すように「マ、ママが……五芒星収容所に入ることになって」と言い出した。
な、なに? 五芒星収容所って。
名前からして普通とは違う施設のようだけれど……。
「り、粦、五芒星収容所ってなぁに?」
「えっと……わたしも話を聞いただけれど、人間ではなくなった人を収容所する施設だったはずです。呪い屋とか……。生きながらに悪魔になってしまった、生きているけれど人間じゃない、みたいな……」
「そんなのいるの?」
なにそれ意味がわからない。
どういうこと?
生きているのに悪魔?
ほげぇ?
「えっと、だから、なに?」
「え……!?」
よくわからないが、鬼ババアが先日行われた『六芒星会議』で悪魔祓いを受け、生きながらに悪魔――化け物になっていることが発覚した――ってことでしょう?
で、人の世にいることができなくなった。
それで? だから?
私になにか関係ある?
私が聞き返すとものすごくびっくりして、くちをパクパクされた。
このおっさんは私にどんな返答を期待していたのかしら?
「マ、ママが捕まったんだ……!」
「あ、はあ。そうですか。それは大変ですね。……それで? なんですか?」
「ママが、捕まったんだよ……!?」
「え? は、はい。聞きましたけれど……」
な、なんだ? それはもう聞いたけれど。
だから帰ってこい、とか?
いや、なんかそんなニュアンスじゃないな?
なに? なんの要件なの?
私が何回も聞き返すから、マザコンクソ親父は口を大きく開けて涙を溜める。
きっしょ。
「ママが捕まったんだ……!」
「だからもうそれは聞きました。なんなんですか? それで」
「だ、だから、ママが捕まったんだよ!」
「ど、どなたか通訳などしていただけませんか?」
話が進まない!
あまりにも同じことしか言わないマザコンクソ親父に痺れを切らして、思わず後ろに控えている安倍家派遣のボディーガードに聞いてしまう。
だが、ボディガードたちも困惑。
首を横に振られる。
ま、まあ、そうですよね。
「はあ……」
これは私が自分で解読する必要があるみたい。
面倒くさいなぁ。
私、こう見えて忙しいのだけれど?
溜息を吐いて頭を抱えつつ、仕方ない、面倒くさいオーラを隠すことなくマザコンを睨みつけた。
「おばあさまがその五芒星収容所に入られたのはわかりました。それが私になにか関係でもあるのですか? 私はおばあさまに千頭山家の人間として認められておりません。同じ苗字の、赤の他人ということです。今はかろうじてお屋敷をお借りしておりますが、自立する目処も立っております。私になにをして欲しくてそのように申されるのです? 千頭山家の本家は礼次郎さまが継がれるのでしょう? 新しい奥様とご相談の上、今後の身の振り方をお考えになればよろしいのではありませんか?」
そう返事をしたらまた口をパクパクさせるマザコン。
そもそも小学校一年生の幼女にどんな返事を期待しているのよ。
それこそ新しい奥さんと今後について話をすればいいじゃない。
私、なにか間違ったこと言ってる?
「と、橙子は……彼女は、実家に帰ってしまって……」
「ああ、そうなのですか。確か、妊婦さんなんですものね。臨月で、里帰り出産ですか」
「ち、違う。実家から帰ってこいと言われて、り、離婚届をおいて……そのままっ」
「はあ……そうなのですか」
ゲームと違うな。
あれ以来未来を見たいと念じながら眠っても予知夢を見ることができなくなっていたけれど、もしかしてまだ未来が確定していなかったから見れなかったのかな?
しかし、三行半を突きつけられたのか、このマザコン。
まあ、こんな三文安に生まれてくる子どもと自分が養えるとは思えないもんね。
会話も通じないし。
同じ言語を使っているのに不思議だよね。
「ママが、捕まって、帰ってこないだよ……! どうしたらいいのか、わからない! どうしたらいいの!?」
「知りません」
ばん、と畳を両手で叩きながら私に顔を近づけて迫ってくるマザコンから顔を背ける。
新しい嫁にも愛想を尽かされ、頼れる相手が誰もいなくなって六歳の娘に縋りに来たってこと?
嘘でしょ、このアラサー
これで人の親とか世界のエラーかなにかじゃないの?
「自分で考えて決める機会を、とことん潰されて……自立心を育むことができなかったことは、同情いたしますが……よい親離れの機会と思ってご自分の人生をやり直しされたらよろしいのではありませんか?」
「……!? な、なにを言っている、の? マ、ママを助けようよ……!? 僕らのママでしょ!?」
「違いますけれど」
オメーのママではあるけれど、私のママではねーよ。
マジでイカれてるなこのおっさん。
そりゃあ後妻も逃げるよ。
これから子育てするのに、こんなムチュコタンまで育ててられっかっての。
ああ、でも千頭山家の屋敷で働いている人たちのことは心配だなぁ。
本家が機能しなくなるってことは、鬼ババアから逃げ出したお祖父さんが外で作った家庭が“本家”な扱いになるのかな?
一応分家があれやそれやという話をされたけれど……。
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