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瑠璃も真実も照らせば光る②
しおりを挟む《――さて。セシリア殿からの書状、確かに読ませていただきました。すぐに近衛騎士団、宮廷魔導師団の双方に伝達して、植物園と王城近隣を捜査しているところです。
ここのところ魔物の動きが活発でしたから、皆この機に一網打尽にしようと張り切っているようですね。程なく報告が上がって来るかと》
「そうでしたか……迅速なご対応に感謝いたします、賢者様」
《いえいえ、こちらこそご足労いただいて。私が取り持たせていただいた縁談です、上手く行きそうかは出来るだけ早く見ておきたかったので。条件だけは文句なしにぴったりでしたけど、人同士の相性は会ってみるまで分かりませんからね。まあ杞憂でしたが》
「……あの、見ただけで分かるものなんですか? そういうのって」
あまりにもきっぱりと言い切るので、思わず脇から口を挟んでしまったユーフェミアである。すると仲人でもある賢者は、再びにこっと目を細めて応えてくれた。……何となく、本当に何となくだが、からかうような気配を感じるのは気のせいだろうか。
《勿論ですとも。なにせクライヴ殿、さっき私が王城で合流した時からずうっと、これ以上ないってくらい甘ーい目であなたのこと見てますよ? あの騎士団きっての堅物朴念仁と名高い彼がですよ?? 『ああこれは一目ボレだなぁ』って、嫌でも解ろうってものですよ、ええ》
「え゛えええ!?」
「け、賢者殿!! なぜそれを本人がいる前で言うんですか!?」
《いや、何でって。それはからかうでしょう、微笑ましすぎますもん。ねえセシリア殿》
「ええもう、本当に。我が弟ながら分かりやすすぎて……怒ればいいのか呆れればいいのか……」
「姉さんまで……!!」
突然のカミングアウトに仰天したユフィの声が、神殿の高い天井に響きまくる。全く気付かなかった。というか騎士殿、陰でそんなこと言われてたんですか。
いや、そんなのは全部さておいて!
(うわあああ恥ずかしい!! いやあの、嫌われてないんだなっていうのは分かるし嬉しいけどー!!!)
無論、今まで男性と並んでいてこんなふうに言われたことなど一度もない。そもそも社交の場に出ることすらなかったから当たり前だが、他人からの好意を第三者に指摘されるのがこんなに照れくさいとは思わなかった。そして出来れば、もっと平和な知り方をしたかった!!
クライヴ本人だってそれはもう焦って抗議しているが、そろって生ぬるい眼差しを送ってくる女性陣(多分)には全く通用していない。さっきから発言がない殿下はというと、その背後で声を殺して笑っていたりする。うん、これは助けは期待できないな……
「――ごほん! それはさておき、です!! 賢者殿に直接伺いたいことがあるのですが!」
《はい? 何ですか、改まって》
茹でダコ状態でふらふらしているユーフェミアの肩を、なだめるようにポンポンと叩いてやりながら、わざと大きく咳払いして話題を振るクライヴだ。しかしながら、すっとぼけた風情で返してくる賢者に向けた眼差しは真剣そのものだった。まだ少し赤い顔ながら、それを補って余りあるほどだ。
「ユーフェミアのことです。賢者殿は彼女と面識はなかったのでしょう? なのになぜ、彼女が『緑の手』だとご存じだったのですか?
先視をなさることは存じ上げていますが、あれは知りたいことを狙って予見するものではないと聞きます」
《……ふふふ、やっぱり気付いてましたか。さすがは殿下の盾、団きっての切れ者ですね》
『緑の手』とは、植物全般の育成に長けた者を指す言葉だ。さっき顔を合わせた直後にも言われたし、そもそもこの縁談を勧めたのは、クライヴが庭仕事をすることに理解ある人を探したせいだったはず。ならば賢者は最初から、ユフィの趣味を知っていたことになる。多分おそらく、今日初めて出会っただろう相手のことを、だ。
ようやく顔の火照りが落ち着いてきたユフィも、同じことを考えているのが表情から分かったのだろう。何度目かの笑みを、顔を半分覆った布越しに寄越して、賢者は特に気負った様子もなく話し始めた。先程までと同じく、脳裏に直接響く声が淡々と紡がれていく。
《ちょっと早い気もしますけど、ここは正直に話しておきましょうか。皆さんの信頼をなくすのは嫌なので。
――彼女の特技はもちろん知っていましたよ。それが身を助けたことも、今は周りの人まで助けてくれていることも。その訳は、》
ことばが途切れた、ほんのわずかなすき間。続きを待っていた皆の耳に、騒がしい足音が届いたのは、ちょうどその時だった。
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