若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝

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瑠璃も真実も照らせば光る③

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 大神殿へは王城側から、中庭を突っ切る小路と回廊を通って入ってきた。建物の規模からすると細めの通路に沿って並ぶのは、ここに勤める神官たちが会議などに使う部屋や、書物が保管されている閲覧室などだ。正面から入ればすぐ行き当たる礼拝の間は、まだまだ奥の方にあると思われた。
 その、奥まった方へ続くであろう通路を、連れ立って小走りでやって来る人影がある。連れ立つというか、先を行く方が遅れているもう一人を引っ張っている、と言った方が、雰囲気としては合っているだろう。……その両方ともに、妙に見覚えがあるのだが。
 「――ああ、やっと見つけた! 賢者様、うちの子の様子がおかしいんです!! 今すぐ診てやって下さいなッ」
 「あ、やっぱりおば様たちだ。なんでこんなとこに」
 《ちっ、大事な時に面倒なやつが……!》
 「、へっ!?」
 なぜかここにいるヴァネッサと、母親に引きずられているエリオットに首を傾げたユフィの頭上から、ごく小さいが痛烈な舌打ちと忌々しそうな唸り声がした。今やったの、間違いなくこちらの最高責任者さんなんですが。しかも舌打ちの方、聞き間違いでなければ念話ではなく、実際に口でやっている。一体何があってこの反応に!?
 内心動揺しまくる間に目の前までやって来た親子、正装したユフィを見て一瞬驚愕したそぶりを見せたものの、それどころではないと判断したらしい。即座に無視を決め込んで要件に入った。
 「仰った通りに煎じ薬を塗って、包帯も取り替えていたんですけど、全く痛みが取れないんです! それどころかどんどん熱を持ち始めたって本人が言いだして……この傷、本当に治るんでしょうね!? うちはこの子が頼りなんです、エリオットに何かあったら私はもうどうすればいいのか……!!」
 《…………あのですね、フィンズベリー女伯爵。私ども神官とて万能ではありません。最初に申し上げたはずですが?》
 さーっと、その場にいた人々の血の気が引いた。相変わらず念話での発言で、男性とも女性ともつかない不思議な声音なのは同じだが、どう考えてもその語調が冷え切っている。辟易した様子でヴァネッサに向けられたジト目は、温度でいうなら氷点下といったところだろう。こんなに睨まれているのに面と向かって文句が言えるなんて、あの人の神経はどうなってるんだ。
 《そもそも、です。こちらの施療院はひと月ほど先まで立て込んでいて、明日をも知れない状態の方も大勢いらっしゃいます。それをどうしても診てほしいと、昨日いきなり来院されたのはどなたですか? ご子息にだけかかり切りにはなれませんので、何かあれば当直の神官に言伝を、ともお伝えしましたよね??》
 「まあっ、十歳になったばっかりの子供にそんな冷たいことを!! 賢者様は人の心をお持ちじゃないんですか!?」
 《あら、私の記憶違いですかねえ? 貴女、入院が通るまで王城の敷地内で粘りに粘って、出入りの諸侯に後押ししてもらおうと周りの林やら中庭やら植物園やら勝手に歩き回った挙句、追いかけて注意した神官に暴言吐きましたよね? 平民の、年端もいかない小娘ごときが指図するな、って。心ある人の発言とは思えませんが》
 「しゃ、爵位のあるなしで思慮の深さが違ってくるのは当然でしょう!! わたくしどもは領地を護っていく責任を負ってるんですからっっ」
 《お黙りなさい。大体ふらつくほど辛いなら、それは『熱を持っている』んじゃなくて、本人が発熱してるんですよ。子どもの言うことを鵜吞みにするばかりで客観的な判断が出来ないなど、思慮の深さが聞いて呆れます。恥を知りなさい》
 「~~~~~っっっ!!!!」
 「け、賢者殿! お気持ちはわかりますがひとまずその辺りで……!!」
 まさしく一刀両断。真っ向からあくまでも正論で叩き潰してくる相手に、後ろ盾のない縁者に対しては言いたい放題だったヴァネッサが完封されている。最後の方などほとんど説教だったが、真っ赤を通り越して赤黒くなった顔色でぶるぶる震えるばかりだ。見かねて宥めにかかったクライヴ以下、こちら側で見ている一同が真っ青なのは言うまでもない。
 しかし、一応仮にも現伯爵のはずの相手に対して、一歩も引かずにこの対応。カッコいいぞ賢者殿!
 (わ、わあい、ちょっと怖いけどすっきりしたー……ってそうじゃなくて!!)

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