大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝

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第一章:気弱令嬢、前世を思い出すの巻

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 ヴィクトルが額に手を当て、大きく息を吐いた。何かまずい事でも言っただろうか。ついでにその背後で、誇らしげに胸を張っている兄の方も気になる。

 「ふっふっふ。どうです殿下、おれの妹は! ちょっと慎重すぎるとこはありますが、昔っからものすごく賢いんですよっ」
 「いや、うん、君に聞いて知ってはいたが……」
 「ええー、だって兄様が行け行けどんどーん、て突っ走るから」
 「ぐふっ」
 「それがおれのいい所だろ? わき目も振らず突撃しても、お前が補ってくれるから心配ない!」
 「もーっ、……あら、殿下? どうされました??」
 「……も、申し訳ない。が、待ってくれ、ここに来て畳みかけないでほしい……!」

 セドリックが口を挟んできて、その辺りから震え始めたと思ったら、声を殺して爆笑なさっていた。兄妹にとってはいつものやり取りが、どうやら大分ツボったらしい。意外と笑いの琴線が庶民的ですね、殿下。

 ついつい親しみを覚えてしまい、和んでいるところにぱんぱん! と軽く手を打つ音がした。

 「はいはい。二人とも、おふざけが過ぎますよ。殿下は御用があって来られてるんですから」
 「あ、すみません。母上」
 「そ、そうでした……申し訳ありません、わざわざ来てくださったのに」
 「……ごほん。いや、私の方こそ面目ない。陛下にもお叱りを受けてしまうな」

 咳払いして笑いを収めると、ヴィクトルは静かに席を立った。一礼してそのまま立ち去る――かと思いきや、その場に姿勢よく片ひざを付く。そして、

 「まだ体調の安定しない中、聞き取りに応じて下さったことを感謝する。一日も早く成果を上げられるよう、力を尽くしましょう」

 カレンの片手をそっと掬い上げて、指先に唇を落とした。感謝と敬意を示す挨拶だ。……が、脳内が一般庶民に近い今、とんでもない破壊力なわけで。

 「っ、あ、あああありがとうございます……!!!」

 とっさに返事したものの、声が三回転半くらいひっくり返った。鏡を見なくても分かる、今顔が真っ赤だ。

 (待って待ってカッコいいから!! 真面目で紳士な上に仕事も出来て、しかもこういう所作が死ぬほど似合うってアナタ……!!)

 しまった。読書は大好きだったけど、流行りの恋愛モノとかはあんまり手に取ってなかったのが悔やまれる。せめて謎解きアクション系RPGだけじゃなく、乙女ゲームくらいやっとくべきだった。男性への耐性の無さが憎い!

 「……殿下ー、おれ妹を口説いていいとは言ってませんよ~」
 「くど、いや待て! 断じて違うが!?」
 「あらあら、まあ。うふふふふ♪」
 「こら母さん、からかってやるんじゃない。……あー、カレンデュラ、疲れたろう。我々は殿下をお送りしてくるから、もう休んでいなさい。コレット、頼んだぞ」
 「はいっ」

 遠くの方で兄がぶーぶー言っているのやら、父が気遣いしいしい出て行くのやら。やっと名前を思い出したメイドさんが『は~いお嬢様、お布団に入りますよ~』とベッドに押し込んだのやらが聞こえる。

 しかしながら、ゆでダコ状態で目を回す寸前なので、うなずくのが精いっぱいなカレンであった。


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