大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝

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第二章:大根令嬢、お隣さんと旧交を温めるの巻

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 方々に手を回した。やれるだけのことはやった。

 しかし、もはや万策尽きつつあるのは、誰の目にも明らかだった。

 「ど、どうしましょう、姉上……やっぱりお城に相談した方が……」
 「だめよ! こんな大失敗、外にもれたらなんて言われると思うの!?」

 泣きそうな訴えをすかさずぶった切る。ふぇ、と情けない声を上げて黙り込む弟に罪悪感を覚えつつ、必死で頭をめぐらせる。

 もし困ったことが起きたら、どんなに些細でも、時間が遅くても構わない。必ず自分に連絡をするようにと、父からしかと言い聞かされている。

 だが、勤め先の王城だけはだめだ。あそこは敵がたくさんいる。ほんの少し前、新しい国王が即位する直前まで、自分達だって何度も危ない目に遭ったのだ。

 (お父様はもう落ち着いた、っておっしゃっていたけれど、そんなの分かりっこないわ。弱みは見せられない)

 ならばどうする。次期当主として、どう動けば最善か。

 考えて考えて、熱が出るほど考え抜いて、ついつい息が詰まっていたらしい。

 くらっと目眩がして倒れそうになり、あわてて机に掴まって、――そこに置いてあった新聞の見出しに、稲妻に当たったような衝撃を受けた。これだ!

 「テオ、いま魔法は使えて? わたくしが言うモノを、すぐに呼び寄せてちょうだい!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ぎゃんぎゃんと、いきった小型犬みたいな怒鳴り声が聞こえる。

 「……ねえコレット、また来てるの? レナート様」
 「はい、いらしてますよー。ご覧になります? そーっとですよ」
 「うん、わかってる」

 念押しされて大人しく頷いたカレンは、持ち上げてもらったカーテンの隙間から外を覗いた。

 エインズワース家が王都に所有するタウンハウス。社交シーズン、および議会開催中の拠点となる、伯爵家第二の住まいだ。

 庭師一同が丹精込めて世話をしてくれるおかげで、季節の花々が元気よく咲き誇る前庭。そのど真ん中で騒いでいる、あんまり嬉しくない訪問者がいた。

 「――だから、あいつに用があると言ってるだろう!! さっさと通せッ」
 「恐れながら、レナート様。当家のお嬢様は未だご療養中ですので」
 「そんなことは分かっている!! だからわざわざ土産を持ってきてやったんだ!!」
 「まことに申し訳ございません。旦那様からのご命令を、今一度復唱させていただきます――」

 『我が娘へ心から謝罪しよう、という姿勢が見受けられない限り、邸への出入りは認められない。なお、土産物の価値で示そうとは思わぬよう。
 ウェルナー現侯爵の合意も得ております。あしからず』

 「――以上となります。何とぞ、お引き取りを」
 「~~~~~~~っっ!!!」

 淡々と、しかし絶対に退かないという静かな気迫を込めて告げるロバート、頼もしすぎる。

 対するいちおう婚約者はといえば、憤怒だか羞恥だかでトマトみたいな顔色になった挙句、土産の箱とともに荒々しく去って行った。まあ、投げ捨てて行かないだけマシか。

 「……懲りないなぁ。ていうか、ホントに謝る気あるのかな? あれ」
 「お嬢様がいいよ、って言ったら、それで済むと思ってそうですねえ。甘ちゃんで困っちゃいます」
 「うん、ホントそれ」

 なかなか手厳しいコレットに、全力で同意するカレン。記憶が戻る前なら、一も二もなく受け入れて、形だけでも仲直りをしていただろう。だからあっちも高を括っているのだ。

 ――カレンが階段から落ち、ついでに前世を思い出してから、はや一週間余り。レナートの謝罪訪問は、それと同じ期間だけ繰り返されていたりした。



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