大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝

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第四章:大根令嬢、東洋文化と恋バナに花が咲くの巻



 会場の邸は、相変わらず広々として豪華だった。集まった人々が、それぞれのパートナーと連れだって入場していく。

 そんな中を、馬車から降りたカレン達もまた移動していった。興味津々、といった視線が、あちこちから集まってくるのが分かる。気合いを入れて笑顔を保ち、出来るだけ周りを見ないようにした。

 (主に殿下が見られてると良いなぁ……)

 お招きを受けてやって来たら、まずは主催者にご挨拶するのが礼儀だ。邸に入ってすぐのホールで、招待客を出迎えているフィッツアラン夫妻のところに向かう。

 「伯爵、本日はお招きいただき感謝します。良い夕べですね」
 「おお、殿下! ようこそいらっしゃいました。エインズワース嬢も、お元気になられて良かった」
 「紺色のドレスも夜空のようで素敵でしたけれど、本日のお召し物もお美しいわ。南の碧海のようですね、刺繍が細やかで素晴らしいこと」
 「あ、ありがとうございます。恐縮です」

 連れ添って長いという壮年のご夫婦は、カレンの養生中に度々お見舞いに来てくれた。裏表がなく誠実で、とっても優しい人達である。

 しかしながら、実は旦那さんのハロルド氏は、近衛騎士団の現団長。若い頃から現場を駆け巡り、数々の武勲を打ち立てたという猛者である。

 自邸でこのような事件が起こって、本当に悔しく情けない、何でも協力させて欲しいと、再びの舞踏会開催を申し出てくれたのだ。ストレートに褒めてくれるのがありがたい。

 が、しかし。

 「――さて、皆さんお揃いですかな?
 それでは開会を祝しまして、王弟殿下と麗しいパートナーにファーストダンスをお願いいたしましょう!」
 (ひええええ!?!) 

 朗らかに言うハロルド氏に拍手が沸き起こり、口には出さずに悲鳴を上げた。

 そうだった、こういう場では主催者か、参加者の中で一番身分の高い人が最初にダンスするのだ。今までまともに参加したことがなかったから忘れてた!

 いきなり真っ青になりかけたところで、手がぎゅっと握られた。励ますように力を込めてくれたのは、いうまでもなくヴィクトルだ。

 「大丈夫。私達は一番手だが、すぐ加わる方がおられるので。――ほら」
 「あ」

 促されて、そっと広間を見渡す。

 反対側の一角で、前に出て待機中のフレデリックと、そばで手をつないでいるテレーゼにテオバルトがいた。こちらに気付くと、全く同時ににこっとして手を振ってくれる。周りの人たちがまあ、とほおを緩めて和んだのが見えて、少しだけ力が抜けた。

 (……わたし、もう一人じゃないんだ! がんばるぞ!!)

 顔を上げ、しっかりと背筋を伸ばす。ほっとした様子で微笑むヴィクトルに片手を預けて、静かにフロアに滑り出た。

 鳴り響き始めたのは、ゆったりした三拍子。メヌエットといって、初期は宮廷の舞踏会のために作曲されたという、気品ある雰囲気の曲だ。よし、これならいける!



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