デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

古森真朝

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第三章:

森の光はすべて星②

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 道はさらに狭くなって、両側に生えた大木が覆い被さってくるみたいだ。日光はほとんど遮られてしまい、辺りの気温がすっと下がった気がした。まだ昼を少し過ぎたくらいなのに、一気に夕方がやって来たような薄暗さだ。

 そんな中にぽつん、とひとつ、何か白いものがあった。

 「……んー?」

 『ご主人、どうしたの?』

 「いや、あのへんに白いのが――って、うわ!」

 ティノくんに説明しようとした瞬間、その白いのが動いた。ぱっと跳ね上がると、ひとっ飛びに距離をつめてくる。当たる! とあわて顔をかばった、んだけど、

 ほわわん。

 「……ふぁ?」

 ほっぺたに何やら柔らかい感触。恐る恐る目を開けたら、至近距離に意外なものがあった。いや、いたの方がいいな。

 「わあ、ホタルかな? こんな大きいの初めて見た」

 目と鼻の先でふわふわ浮いてるのは、淡く光っているボールみたいなものだった。ただ大きさはピンポン玉くらいあるし、いくら山奥で薄暗いからって日中から飛ぶものなのかはわからないが。

 「なになに、また不思議生物になつかれたの? あんた」

 「おおっ、おっきいね! 触るとちょっとフワフワしてる~」

 「行きには見なかったな。あれではないか? なんと言ったか、見つけると幸福になるというふわふわの」

 「ケセランパサランか? あれは光らないぞ。ここに出るって聞いたこともないし……」

 怪談のダメージから回復したみなさんが、口々に言い合っている。当のホタル? はというと、差し出したわたしの手のひらに収まってほわほわ光っていた。目も口もよく見えないけど、なんとなくご機嫌な気がする。

 と。

 「――ああっ、いた! やっと見つけたっ」

 がさがさ葉擦れの音がしたと思ったら、すぐそばの木からすたっと飛び降りた影があった。

 見たところ、大体十四、五歳くらいの男の子だ。短い黒髪に赤みの強い鳶色の目、まだちょっとあどけなさが残っている優しそうな顔立ち。服装はほとんど黒に近い紺色の上下で、動きやすいようにか肘から先と膝下を布で巻いてまとめてあった。きびきびしていて身軽で、何となく空手とかの選手を思い浮かべる物腰だ。

 だけど、それより何より。たぶんわたしだけじゃなく、全員の目が真っ先に集中したものがあった。

 (耳だ。犬の耳が生えてる!)

 そう。バンダナを巻いた頭のてっぺん付近から、こっちに向いてぴこっと動いている三角形の物体は、間違いなく動物の耳だった。しかもよくよく観察したら、腰の後ろに結んで垂らした帯だと思ったの、あれふっさふさの尻尾じゃないか。

 エトクロの世界にはいろんな種族が住んでいて、動物に変身できる獣人族というのもゲームに登場していた。メインキャラクターでこそなかったけど、なかなか重要な役割を担ってくれたし、人間モードも動物モードもイラストがとっても可愛かったので人気が高かったらしい。

 そんな獣人族にはたくさんの種類があって、陸上に住んでいる哺乳類から鳥類、爬虫類、果ては水中生活をする両生類や魚類のひとたちまで様々だ。中でも比較的人間側に認知されているのが、イヌ科の動物――特に狼に変身する、いわゆるライカンスロープとかワーウルフと呼ばれる一族である。
 
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