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第六章:
レディ・グレイの肖像⑥
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魔法なしで波の音が聞き取れるようになったのは、多分十分弱は走り歩きを続けたあたりのことだ。
その頃になると、わたしに抱っこされたイオンは一層くんくんするようになっていて、身を乗り出しすぎて危うく取り落としそうになった。
『きゃーっ』
「あーっちょっとちょっと危ないって! いろいろ気になるのは分かるけどっ」
『ご、ごめんさ~……でもね、あのね』
「うん、なになに?」
謝りながら何か言いたそうにしているとかげさんにリラが聞き返す。短いおててを組む(リーチ足りてないが)ようなしぐさをして、
『ほかにいろいろまざってるけど、知ってるにおいがする、気がしたんさ~』
「……やっぱり引き当てたんじゃない? これ」
「若旦那とかもいれば良かったのになぁ」
「――あ、着いたよ。ほら」
駆け寄ったリックが、突き当たりの壁に密集していた草を腕で払いのける。蔓草が切れるぶちぶち、という音は全くなくて、カーテンみたいに軽やかに翻った。
その先に見えるのは、軽く屈めば潜れるくらいの穴と、さっきよりだいぶ傾いた太陽に照らされているヴァイスブルクの街並みだ。
騎士さんの脇からそーっと顔を出す。どうやら予想通り、離宮の高台の側面部分のようだ。穴の縁には頑丈そうな縄梯子がくくりつけてあって、端がはるか下にある海面まで垂れ下がっていた。今はないけど、おそらく船で乗り付けているんだろう。
「だいぶ日が暮れてきてるな……さて、どうしたもんか」
「え、みんな助ければ問題ないんじゃないの?」
「あっさりいうけど、そう簡単なことじゃないよ。どんな種族がどれくらいいるのかわからないんだ。それに、浚った相手の目的だって把握できてない。ヘタに場当たり対処して取り逃がしたら、また別のところで同じことを繰り返すだけだろうし」
なるほど、そりゃそうだ。犯人は別に、この街にこだわる必要はないかもしれないんだから。
『まあ~』
「んー、そうだなぁ……なんとかショウさん達と連絡取れないかな」
肩の上のマンドラゴラと何となく話しながら顔を引っ込め、そばの壁に寄りかかった。
床と同じ石が組んであって、ちょっとやそっとじゃ崩れなさそうなヤツだ。その辺を見込んでぽすっと、結構勢いよく背中を預けた、んだけど。
――ガコォン!!
「へっ」
肩のあたりで、ブロックが奥に引っ込んだ気がした。その瞬間、足元にぽっかり大きな穴が空いたのが見えて、
『きゃー! ねーね~~~っ』
「イブーっ!?」
『ま~~~っっ』
とっさに抱きしめたとかげさんと女子二人、そんでもって逃がしそびれた激レアさんがそろって悲鳴を上げる中。びっくりしすぎて叫ぶこともできないわたしは、そのまま落とし穴に吸い込まれてしまった。
その頃になると、わたしに抱っこされたイオンは一層くんくんするようになっていて、身を乗り出しすぎて危うく取り落としそうになった。
『きゃーっ』
「あーっちょっとちょっと危ないって! いろいろ気になるのは分かるけどっ」
『ご、ごめんさ~……でもね、あのね』
「うん、なになに?」
謝りながら何か言いたそうにしているとかげさんにリラが聞き返す。短いおててを組む(リーチ足りてないが)ようなしぐさをして、
『ほかにいろいろまざってるけど、知ってるにおいがする、気がしたんさ~』
「……やっぱり引き当てたんじゃない? これ」
「若旦那とかもいれば良かったのになぁ」
「――あ、着いたよ。ほら」
駆け寄ったリックが、突き当たりの壁に密集していた草を腕で払いのける。蔓草が切れるぶちぶち、という音は全くなくて、カーテンみたいに軽やかに翻った。
その先に見えるのは、軽く屈めば潜れるくらいの穴と、さっきよりだいぶ傾いた太陽に照らされているヴァイスブルクの街並みだ。
騎士さんの脇からそーっと顔を出す。どうやら予想通り、離宮の高台の側面部分のようだ。穴の縁には頑丈そうな縄梯子がくくりつけてあって、端がはるか下にある海面まで垂れ下がっていた。今はないけど、おそらく船で乗り付けているんだろう。
「だいぶ日が暮れてきてるな……さて、どうしたもんか」
「え、みんな助ければ問題ないんじゃないの?」
「あっさりいうけど、そう簡単なことじゃないよ。どんな種族がどれくらいいるのかわからないんだ。それに、浚った相手の目的だって把握できてない。ヘタに場当たり対処して取り逃がしたら、また別のところで同じことを繰り返すだけだろうし」
なるほど、そりゃそうだ。犯人は別に、この街にこだわる必要はないかもしれないんだから。
『まあ~』
「んー、そうだなぁ……なんとかショウさん達と連絡取れないかな」
肩の上のマンドラゴラと何となく話しながら顔を引っ込め、そばの壁に寄りかかった。
床と同じ石が組んであって、ちょっとやそっとじゃ崩れなさそうなヤツだ。その辺を見込んでぽすっと、結構勢いよく背中を預けた、んだけど。
――ガコォン!!
「へっ」
肩のあたりで、ブロックが奥に引っ込んだ気がした。その瞬間、足元にぽっかり大きな穴が空いたのが見えて、
『きゃー! ねーね~~~っ』
「イブーっ!?」
『ま~~~っっ』
とっさに抱きしめたとかげさんと女子二人、そんでもって逃がしそびれた激レアさんがそろって悲鳴を上げる中。びっくりしすぎて叫ぶこともできないわたしは、そのまま落とし穴に吸い込まれてしまった。
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