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第七章:
縁は異なもの転がるもの⑤
しおりを挟む「おや、何やら賑やかですね」
「フェリクスさん、お帰りなさい!」
そんな中ひょっこり顔を出したのは、今朝から外出していた詩人さんだ。わいわいやっているみんなを見て、元から穏やかな表情がさらにふんわり和む。
優しげな様子にこっちも癒されつつ、出迎えるためにドアへと駆け寄ったところ、フェリクスさんは見慣れないものを持っていた。片手で持てるくらいの大きさで、濃い色合いの布ですっぽり包んである。本とか箱とかの平たく角ばった感じではなくて、どちらかというと丸っこくてつるんとした印象だ。あくまでパッと見た感じは、だけど。
ついついじっと見つめてしまったわたしに、フェリクスさんはにこっとしてからちゃんと説明してくれた。さすがヒロインに次ぐ元パーティの良心だ。
「少々気になることがありまして、詩人のクランに行っておりました。これはそちらでお借りしたものです」
「やっぱりこの街にもあるんだ、支部」
「はい、ヴァイスブルクは近隣諸国との行き来が盛んですから。私のような旅回りのものにとって有り難いことです」
クランというのは、『エトクロ』世界における各職業ごとの互助組合のことだ。剣士なら剣士の、魔導師なら魔導師の集まりがあって、大体は本部が王都に置かれている。
ここみたいなちょっと大きめの街には支部があり、依頼で怪我をしたとか仲間を募集したいとかいった相談事に乗ってくれたりもする。要するに冒険者ギルドの職種専門バージョンだ。
ゲームのシステム上では、ここに顔を出すと各職業の今覚えられる魔法や技、レベルアップのための修業、アイテムの鑑定とか生成なんかもやってもらえるという、なかなかお役立ちな場所でもあった。
特にライバルは生得魔法こそパッとしない(と思ってた)けど、その分いろんな魔法をバランスよく習得してくれるので、防御回復と補助系統はリュシーに任せて攻撃系をあれこれ覚えさせましたとも。キャラを育成する楽しみもこの作品の醍醐味なんだよなぁ。
「お、戻ったか。首尾はどうだ?」
「 割いた時間だけの価値はありましたよ。記憶していたことの裏付けも取れましたし。
……ただ、最も知りたいことはまだ。厳重に管理してあるが故の弊害と申しましょうか」
「良い、一部でも確かめられれば御の字だ。何せ判然としない点が多すぎる、分かったことから聞かせてくれ」
「承りました」
元々気兼ねなくお話しできるように、ってことで人払いしてあったけど、殿下の言葉を合図に元パーティ三人がさらにドアを閉めて、レースのカーテンも下ろしてしまった。部屋の中が一段階、ふっと暗くなる。
完全に外側が遮断された状態になってから、改めて詩人さんが口火を切る。見ているこっちが思わず姿勢を正したくなるような、真剣な顔つきだった。
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