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第七章:
地獄(ゲヘナ)より愛をこめて④
しおりを挟む『まああああああああああっっ!!!』
「ギャッ!?」
「ひゃあ!」
にらみ合いの真っ最中に、何の前触れもなくとんでもない大音響が轟きわたった。出所は……間違いない、さっき開けられなかったドアの向こう側だ。
脳天に突き刺さるようなすさまじい叫び声はなおも続き、全員が耳を押さえてのたうち回ることしばし。ふいにびしっ、と、硬いものにひびが入るような音が上がって、
「――よしっ、結界割れた! まんちゃんグッジョブ!!」
『まあまあ!』
「ちょっとイブマリー聞こえるっ!? ティノもリーシュも怪我なんかしてたら承知しないから!!」
「わ、やっぱみんなだ! 全然平気です、ありがとー!!」
突然届き始めた声は、さっきは眠ってるからと寝室にそっとしておいた女子コンビ、ついでに昼夜が逆転してるから起きてるはずのないマンドラゴラさんのものだった。……うわ、めっちゃうれしい。ホッとしすぎて泣きそうだ。
「もーっ、起きたらイブたちがいなくてびっくりしたんだよー! ドゥーさんとこんちゃんがここまで連れてきてくれたの、野生のカンで!」
『ひっぽー』
『こんこんっ』
「侍女さんは男子たちを呼びに行ってくれたから! マンドラゴラの叫びで結界も解除できたから、今からドゥーさんアタックで突入するわ! ちょっと下がってなさい!!」
「うん、わかった――あっごめん、ちょっと待って!」
頼もしすぎるフィアメッタのことばに、素直にうなずきかけて慌てて訂正する。危ない危ない、いまは生身で入ってくるには危険すぎるんだった。
「えっなに、どうかした!?」
「いやわたしはどうもないんだけど! 今ね、この中って毒霧が充満してる、みたいで」
「毒ぅ!?! 大事じゃないのよそれ!!」
「あ、平気平気、ほらお揃いのアレのおかげで!」
「……ああー、そっか、そういや持ってたね」
「って、じゃあリュシーちゃんは!? 具合悪くて寝てるんだよね、大丈夫!?」
「いやね、それが――」
説明しようとしたとこで、うーんとうめく声がした。ばっと振り返ったら、ベッドの上で伸びてたリュシーもどきがもがきつつ起き上がろうとしているのが見える。
有名な話だが、マンドラゴラは生えてるのを引っこ抜こうとすると恐ろしい悲鳴をあげる。まともに聞くと命を落とすとか、いろんな説があるけど、『エトクロ』ではフィールド上で出くわして叫ばれるとしばらく行動不能、という判定になっている。
いくらうちのマンドラさんがちっちゃいとはいえ、さっきの今で起き上がれるとなると、やっぱり何かしら防御のためのアイテムを持ってると見た方がいい。もっと気になることもあるし。
えーと、今の状況をさくっと説明するには、何て言えばいちばん効率がいいのか……!
「えっと、さっき呼ばれてきたらリュシーのフリした変なのがいて、なんか今回の黒幕っぽいの! わたしのこと気に入らないから出来るだけ惨めな死に方させたくて魔王復活させようとしてて、そんで本物のリュシーが人質に取られてるっぽい、です!」
「あっコラ! なに人聞きの悪いこと言って」
「何ですってえええええ!?!」
思いつくまま一息で言い切ったら、さっきの絶叫に勝るとも劣らない怒号が上がった。その迫力たるや、復活と同時に口を挟もうとしたもどきさんがひえっ、と言って身を引いたくらいだ。
「――よーし、わかったわイブマリー。あたしの言うことよく聞いて」
「は、はい?」
「今からドアぶち破ると同時にエルドの火炎ぶっ放す!! すぐにそこから離れて伏せなさい、いーわね!!!」
「はいぃっ!!」
『きゃーっ、アネゴがおこったー!!』
『ふぃーっっ』
地を這うような唸りから一転、特大の雷が落ちた。いや、正確には落ちる前触れだけど十分にコワい。すぐさま部屋のスミまですっ飛んでって伏せの体勢を取った直後、どごおっ! といってドアが吹っ飛んで、
「来いエルド!! 『緋鳥乱舞』・獄炎華ッ!!!」
『くわああああああ!!!』
ごぉっ!! ――――づがぁあああああああんっっ!!!
炎が燃え立つ低い音に続いて、何故か大爆発。リュシーもどきが上げたはずの悲鳴をすっぽり呑み込んで、爆炎と熱風が辺りを薙ぎ払った。
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