デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

古森真朝

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第四章:

ぎゃわずの如き凹むもの⑤

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 わたしがこの『エトクロ』世界の最推し、アンリエットの中の人になってから、つい最近まで関わっていた一連の陰謀騒ぎ。最終的にこっちの国で封じられた魔王まで復活しかかって、バトルフィールドだった高台の離宮が大変なことになったのは記憶に新しい。

 そんな事件の背後にいたのが、わたしのガワの人を逆恨みしてた偽ヒロインこと、ランヴィエルの伯爵令嬢だったのだが……

 「確かティノたちの記憶が不自然に消えたのって、未来で起こることを書き換える魔法道具のせいだったんだよな?」

 「自動でつじつまを合わせてくれる、って言ってましたね。確か、持ってた人ごとイブマリーさんが捕まえたんじゃ」

 「うん、それそれ。ビンはうちの殿下に預けてあるの」

 ディアスさんとスコールくんのナイス補足に、元気よくうなずいて腕を組む。

 そんな便利な道具があってたまるか! と、あちこちから厳しいツッコミが入るに違いないが、実際あるんだからしょうがない。

 ティノくんとか海竜のイオンとか、あとドゥーさんたちをさらった誘拐犯とか。その件に関わったひとたちは、何でそういう行動をしたかとか、誰に頼まれたかとかをきれいさっぱり忘れてしまっていた。その元凶こそが黒幕の持っていた、いにしえの大賢者謹製のレジェンド級アイテムをモデルにしたという、光る白い石板だったのだ。

 あれの元ネタがオズさんが持ってた光る本で、まさかの本物であるってことはもう知っている。ついでに、それを使いこなせるあの人がただ者じゃないっていうのも、居合わせたほぼ全員が分かってることだろう。それはさておいて、だ。

 「アシュリーはレプリカって言ってたんだけど……それがアレひとつだけだ、とは聞いてないんですよね」

 そう、心配なのはここだ。現在の状況はあの時と似すぎている。もし万が一、あんなコピーが量産されてて、それが他の人の手に渡ってたとしたら――それはもう、間違いなくえらいことになるはずだ。

 「他にもあんな代物がのがいくつもある、ってことか? 可能性だけならなくはねえだろうが」

 「理屈の上では可能でしょう。が、魔法道具の複製には相応の技術と、作成者の魔力の総量が影響すると聞きますし……」

 「いいや。あの子の実家、クロウフット家なら十分可能だよ」

 原作保護者コンビが難しい顔を見合わせる中、壁際からそう言ってのけたのはリックだった。今日は鎧は付けていなくて、紺色の軍服みたいな騎士装束だけだけど、背が高くて姿勢も良い彼が着ると大変格好いい。

 「あの家系は元々国外、海を隔てたレディアント連合王国の出身だ。母国では代々宮廷魔導師を輩出してきた血筋で、とりわけ魔法具の創製にかけては右に出るものがいなかったらしい」

 「……殿下の実家、そんなすごいひとたちを引っこ抜いてきたの? めっちゃ揉めてそうだけど」

 「記録だと、内乱で王朝が変わって居場所を失ったんだって。それで海峡を越えてうちの国へ移り住んで、知識と技術を見込まれて東側を守る役目を仰せつかったらしい。――ただし」

 ここで騎士さん、ふいに眉間を寄せて険しい顔になった。ため息交じりで捕捉してくれる、その語気が鋭い。

 「そのへんの経緯は平和だけど、今はちょっと事情が違う。王都にある伯爵家の別邸、いつの間にかもぬけの殻になってたらしいよ。ご丁寧に、身代わりの蝋人形まで配置してあったってさ」
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