デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

古森真朝

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第六章:

私を夜明けへ連れてって⑰

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 「……お、おま、お前!? そ、その声はまさかっ」

 《イブマリーに『紫陽花』、その身内のみな、息災だな? 驚かせてすまなんだ、思いのほか手間取ってしまった》

 なぜかいきなり青ざめて挙動不審になったおっさんを無視して、謎の声――もちろん、今朝がた別れたばっかりのオズさんなわけだが。ようやく普段の穏やかな声になって、てきぱきと話を続けていく。

 《我が王都に行ったのは、王家に迫る危機――三百年前から因縁のある宿敵が出戻ったのを、グレイ殿が感じ取ったからだ。そ奴にゆかりある遺跡へ行ってみてほしいと頼まれてな》

 そこは建国以前、魔物討伐の最中に王家のご先祖が陣を張ったところだった。王都近くの山の中腹にあって、今は砦の基礎だけが残っているけど、見晴らしは最高にいいんだとか。そうやって背後を山に守ってもらいつつ、押し寄せる魔物と戦っていたんだろう。そして、

 《聞くところによればその宿敵、名をヨナスと言ってな。ヨナス・バロ・ウル・グランフェルト。三百年前に滅びた北方大国の傍系、と書いてみそっかすと読む妾腹の末子だ。今は少々違う名を使っておるようだがのう》

 「……はい!?」

 何気にひどいことを言っている気がするけど、そんなのどうでも良くなるほど巨大な爆弾が降ってきた。ちょっと待って、今なんて言った!?

 「……ねえ、フェリクスさん。ヨナスって」

 「ええ、ジョナスの北方読みです。ランヴィエルでは子音の発声が異なりますから」

 険しい顔つきのフィアメッタに聞かれて、博識な詩人さんはすぐ答えてくれた。やたらと打たれ強いなぁと思ったら、やっぱり人間じゃなかったのか、おっさん。

 《そういうことだな。我も多少は聞き知っておるぞ? 北の大国は、国家として肥大しすぎたことで統率が取れなくなって、汚職と内乱がはびこった挙句に崩壊した。そこな阿呆はそれを解っておらなんだでな、また同じことを繰り返そうとしたせいで、忍耐強く付き従ってきた臣下にそっぽを向かれたのよ。
 そうして自分のことを棚に上げて、グローアライヒを創った現王家を恨んだ》

 いつやってくるかわからない復讐の機会を狙うためには、普通の寿命ではまず足りない。だからヨナス、もといジョナスのおっさんは、自分の魂を分割して一部を封印した。そうしてやると、もし本体側が致命傷を受けたとしても、この世に固定してある分けた方の魂が楔になって、死なずに済むからだ。

 ここまで聞いて、オズさんの頼まれごとを思い返すと、嫌でもわかってくる。つまり、その魂を隠した場所というのが、

 《残った基礎の石材、一部に大理石を使ってあったのが幸いだった。術を応用して地面を掘り進めることができたからな。――さあて、この宝珠を壊せば不老不死状態が解除されるが》

 「よよよよ止せオズヴァルド!! 貴様エルフェンバインを冠する者だろうがっ、他人を脅すなど許されるわけが!!」

 《ははは、脅すとな? 我がそんな手緩いことで満足すると思うか? ――外道には相応しい罰をくれてやる。有り難く受け取るがいい!》

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