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第七章:
ごきげんよう、『六連星』④
しおりを挟むさっき通ったゲートは、この中庭へ行くドアにつなげていたので、ちょうど逆戻りする格好になる。すでに光の扉は引っ込んでいて、元に戻ったドアをいつものように開けた先には、やっぱりいつもの光景が――と、思っていたら、
――カァン!!
固いものを思いっ切りぶつけ合う高い音が、まず真っ先に耳に飛び込んできた。続けて、その発生源が視界に入る。
(あ、ショウさんが練習してる!)
肩まで袖をまくったシャツにズボンという姿で、普段の得物と同じくらいの長さの木刀を振るっているのは、間違いなくうちのリーダーだ。練習だっていつも真剣な表情だけど、なんだか今日は気合いの入れようが違う。
ちょっと声をかけるのを遠慮してしまうくらいの気迫で立ち向かっているのは、見たことのない人だった。背はリーダーより高くて、着物に似た動きやすそうな服装で、何故か頭に菅の笠――時代劇で雨の日とかに被ってる、三角形のあれを身に着けているから、顔がよく見えない。こっちも木刀を持っていて、打ち込んでくるショウさんの攻撃を片っ端から捌いて受け流しまくっていた。おお、なんかすごい!!
「ねえねえイブ、どう!? カッコいいでしょ若だんな!」
「かれこれ二時間弱はあんな感じよ。せっかくの機会だから是非にって、めっちゃ食らいついてるんだから」
「二時間!? いや、うん、とってもカッコいいしすごいけど、お水とか飲んでるかな!?」
「飲んでる飲んでる。むしろ率先して飲ませてるから、相手の人が」
「すごいですよね! 東邦の剣術ってこちらのものとは雰囲気が全然違って、おれもすっごく勉強になります!!」
わたしがそう思ったんだから、他のメンバーも以下同文だったようで。特にスコールくんからは、目をキラキラさせつつアツい同意が返ってきて大変微笑ましい。お店では刀そのものは扱っていないが、武器の修理なんかは引き受けているそうだから、その関係のお客さんかな。ショウさんなら礼儀正しいから、初対面の人でもちゃんとお願いして協力を引き出せそうだしなぁ。
ところが、である。
「あらまあ、朝から元気ねー。ロウさんってば楽しそう」
「うん、長い付き合いだが初めて見たよ。こんなふうに稽古をつけるんだなぁ、彼は」
「――、え゛っ!? おとーさんとおかーさん、あの人知ってるの!?」
「いや、知ってるも何も……って、あら、勝負つきそうよ」
「マジで!?」
さらっと聞き捨てならないことを言っている両親に飛びついたところ、すぐさま方向転換させられる。素直に乗っかって振り返ったところ、中庭のど真ん中がクライマックスだった。
思いっきり踏み込んで間合いを外したショウさんが、視界の外から全速力で木刀を振り上げる。ああいうのを逆袈裟斬りといって、いきなり仕掛けられるとかなりの確率でカウンターと化すらしい。相手のほうが背が高いと死角が増えるからなおさらだ、一本取った!
……が、しかし。
ぱっ。
「っ、と……!?」
「遅い」
「だっ!?」
当たった、と思った瞬間、相手の姿がかき消えた。とっさに動きを止めたところへ、何故か真後ろに出現した菅笠の人が足払いをかけて、モロに体勢を崩した若旦那がその場にすっ転ぶ。跳ね起きようとした目の前にびっ、と木刀を突きつけて、
「相手の余力はよくよく見極めよ、と言っておろうが。今のが真剣であれば頭を割られるか、首が飛んでおるぞ」
「うう、面目次第もありませぬ……」
「……、まあ、動きは悪くない。精進せよ」
「ありがとうございました!!」
褒めてるのかどうかかなり微妙な言い方だけど、ぱっと顔が明るくなったのを見るに合格、ということらしい。ちゃんとその場に正座して頭を下げたショウさんに、ひとつうなずいた笠の人がちょっとだけこちらに顔を向けた。気持ち声を張って、
「――で? 覗き見とはいい趣味をしておるな、お主ら」
「やーね、出会い頭の事故だってば。ホントに覗いたらめっちゃ怒るクセに」
「黙って入って来てすまないね。でも、久々に君の剣術が見られて嬉しいよ。
イブマリー、紹介しよう。彼はね、私とユーリが入っていたパーティの一員で、ショウ君のお父君だよ」
にっこり、と擬態語がつきそうな笑顔でそう言ってくれるお父さんだけど……だからね、ちょっと待ってって! こないだからいちいち情報量が多すぎるんですってば!!
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