デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

古森真朝

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第七章:

ごきげんよう、『六連星』⑥

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 しかし待てよ。うちの両親とシェーラさんが元パーティで仲良くて、そんでもってロウさんもそのメンバーだった、ということは。

 「ねえショウさん、もしかしてシェーラさんたちのこと知ってた? フィアが娘さんだっていうのとか」

 「いいえ! 自分も先頃、父の口より初めて聞かされました!! おかげでここ数日、気の休まる暇もなく……!!」

 「あー、あたしも全ッ然知らなかったわ。かーさんに聞いたら、どうも手紙で口止めされてたっぽいわよ? ロウさんから」

 「えっ、そうなの!? なんで!?」

 ふと思いついて話を振ってみたところ、なんだか必死の面持ちのリーダーから全面的に否定されてしまった。ついでに当事者その二であるフィアメッタから教えられた意外な事実に、改めてロウさんの方を見やったところ、腕組みして非常に渋い面持ちになる。表情そのまんまの苦い口調で、

 「……そろそろ此奴の気性も把握していようから、逆に問おう。ありのままに包み隠さず教えてやったとして、どうなるとお思いか」

 「へっ? えーっと……」

 「んー、まあリーダーだからなぁ。親御さんの知り合いで元同業者で、ついでになんか伝説化してるパーティの大先輩だって知ったら」

 「『そんな大御所のところで御厄介になるなんて図々しいことは出来ません!!』って、すぐに出てこうとするかなぁ。間違いなく」

 「あの、おれもそうすると思います……というか、今そうしないといけないんじゃ……!?」

 「あーっ、だから大丈夫だってば! むしろ出てかれたらこっちが困るのよ、もうっ」

 ですよね、はい。ディアスさんを先頭にしてすかさず答えてくれた『紫陽花』一同に、顔を真っ赤にしたショウさんが頭を抱えてしまった。なるほど、そりゃあ知らせないようにするわけだ。そしてさらに気になるフレーズが出てきたんだけど。

 「あのー、おかーさんたちって伝説? に、なってるの? なんで??」

 「ん? うーんとね、そのへんは語ると長くなりまくるのよねー。そのまんま文章にしたら、長編小説が五、六本書けるくらい?」

 「エピソード多っ!?」

 「まあ、そのうちおいおい話して聞かせよう。それでロウ、今回は女将に頼まれて、郷の木蝋を持ってきてくれたんだろう? 合流するなり共闘してくれて助かった、改めて礼を言わせてほしい」

 「不要だと言うておろうに。沖合で船が立ち往生したゆえ、足代わりに召喚した水龍だ。陸にたどり着けば霧散するだけのもの、もう一働き出来て喜んでいよう」

 「まぁたそんな言い方して。奥さんに叱られても知らないからね~」

 「っ、……ごほん!! それはさておき倅!!」

 「は、はい!!」

 今、ものすごーく微妙な間があったような。からかうみたいなユーリお母さんの一言に、一瞬だけロウさんの動きが止まった、気がする。でもすぐさま咳払いして、自分からさっさと話題を切り替えてしまった。いかにも厳しい師匠の顔つきで、隣でかしこまった息子さんに向かって、 

 「腕は多少上がったようだが、その為体でよく頭領など張れておるな? 藪入りと年の暮れ程度しか戻ってこなんだゆえ、さぞ精進を重ねておろうと期待しておったのだが。――おまけに」

 「う゛っ」

 うん? 今ロウさん、ちらっとわたしの方を見ませんでした?

 (ええっと……あっ、もしや、メンバーのピンチっていう一大事に何でお前は離れてたんだ!! というお叱り? いやでも、あれって不可抗力だしな? そして困った、今回ショウさんがどういう活躍をしたか、わたしまだ全然知らない。どうしよう何にもフォローできないんですけど、あっでも腕は上がったねって言われてるな!? そこは良かったねリーダー、確かお父さんが目標だって言ってたもんね!!)

 という内心がちょっとでも伝わればいいな、という希望的観測の元、ショウさんに向かってにこーっと笑ってみる。ほら、元気出してー!!

 「って、あら? ショウさん??」

 「……っ、や、その、仰りたいことは分かり申した、分かったゆえもうその辺りでご勘弁を……!!」

 「はー………………もう良い、現状はこの上なくよく分かった」

 無言の助け舟、やっぱりちょっとわたしにはレベルが高い技だったらしく。あっという間に茹でダコみたいになったショウさんから頼み込まれた上、苦虫をまとめて百匹くらい噛み潰したみたいな顔になったお父様からもため息を頂戴してしまった。うう、無念。


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