かわいい悪役令嬢俺とクソゲー世界

あくるめく咲日

文字の大きさ
4 / 34
幼少期の章

拒否権は元々なかったりするクソゲー

しおりを挟む
キーンと第一王子は異母兄弟。

キーンの母親はそれはもう……マイルドに表現すれば、恋多き女だったそうな。



え、そんな個別ルートで『俺にはあの母親の忌々しい血が流れてるんだよ』とかシリアスなスチルだして語ってくるやつをこんなに軽く言っていいの?と思ったけれど本人が「俺は母親を淫魔の類じゃないかと思ってた」と真顔で言っていたので大丈夫なのだろう。

俺はどんな顔をすればいいのか分からなかったよ……笑えば良かったのだろうか。笑ったら兄上が悲鳴を上げる気がした。

ちなみにそのシリアスなスチル中にセーブするとゲームが落ちるからその辺の話はよく覚えている。



キーンは5歳で城入りするのだが、父親の定かではないキーンが城入りできた理由は瞳が王族しか持たない色だったからという王道な話。王族の瞳は金色。

ぶっちゃけここでもクソゲーらしくキーンと第一王子の金色がなんとなく違う。たぶんカラーコードとか違うと思う。顔に合った色に修正させたんだと思うけど『同じ目の色だ!』というまるでヒロインの目が節穴みたいになってしまった悲しい事件が起きた。



王は自分の不貞の後始末をちゃんとしているということにはなるのだが、しかし問題が生じた。

キーンを王族に迎え入れたことによって、孕めば我が子が王族入りワンチャンあるという前例が出来てしまったのだ。

そして、何を考えているのか分からない第一王子ではなく、まだキーンの方がとっつきやすいということで女の子がたくさん群がるようになり……愛を知らない系ありがちチャラ男が爆誕。



まあ、そりゃあそんな過去を抱えていればそうなるよな。とゲーム中は思ったし、正直同情もした。

キーンルートで「お?もしかして良ゲーだったのか?」と思った俺を殺してほしい。

キーンルートでは両親と兄と和解する。

キーンの葛藤と『色狂いの妾の子』と『自分のことが好きでもないのに寄ってくる婚約者と子種目当ての女たち』『王族というプレッシャー』などなど様々な問題やコンプレックスが出てきて散々寄り添わせて同情させてくるのに

最後キーンが考えすぎて勝手に妬まれていて嫌われていると勘違いしていただけでした!女たちはともかく家族たちはキーンのことちゃんと愛している良い人たちだったのでキーンの被害妄想だったよ!みたいになるのだ。

いくらセーブデータが消えても動じなくなっていた俺でもゲームを枕に投げた。

本当に腹が立つほどラストに出てくる陛下と后妃と第一王子。かなりゆるい。とにかくゆるい。

ゲーム機をもう一度投げ捨てたくなるほどにゆるい。

キーンとプレイヤーをバカにするな。

まあ、実物がどうかはわからないけど。

そもそもチャラ男だが実は頭がキレるなんて設定があるのに、よくもまあ被害妄想で勘違いしていたよ!とかそういうシナリオに出来るな。嫌いなのか?キーンが。公式はキーンが嫌いなのか?と何度思ったことか。



さて、ここまではゲームのキーンの話。



「俺が王になれる可能性が低くない。俺のことが嫌いであろう第一王子はともかく、あのゆるふわな陛下と后妃は恐らく何にも考えていない。仮にもし「俺が王になる!」と宣言したらあの二人は「がんばれ~」と言うに違いない。これは由々しき事態だ」

「安心するといい、キーン。恐らく第一王子も応援してくれるだろう」

「なにも安心できねぇ」

実物のキーンはどうやらちゃんと頭がキレるらしい。

自分の立場と周りからどう見られているのか、嫌になるほどよく分かっている。



だから、まず吠えた。「俺に王位継承権を与えてくれるな!」と。

本来周りの人間から『お前のような穢れた子のせいで王族が穢れれしまっただろう!』とか言われてコンプレックスを抱くであろうところを誰からも言われず、寧ろ自分が王になれる可能性の高さにセルフツッコミしている状況だ。なんだかとても不憫だ。

あれ、でもあのゆるゆる家族はともかく、幼少期にそういう罵倒を散々浴びせられてきたはずなんだけ……あ、罵倒してたの悪役令嬢か。『忌子の分際であの方と同じ空気を吸わないでくださる?』とか言ってたり。幼少期の回想で悪役令嬢がそれはもう罵倒するものだから何故婚約解消されないんだろうと思っ……

いや。俺やん。

俺が罵倒してないからキーン様がセルフツッコミで自分の立場と周りの反応の温度差で荒ぶってるんじゃん。

……い、今からでも言ってあげた方がいいんだろうか。

無理だろうけども。なんだか申し訳ないことをしてしまった気がする。

ごめんな、ヒロイン。

俺が男の娘な悪役令嬢なばっかりに兄上と第二王子のルートの重い過去や乗り越える試練も恐らく特にない淡々としたルートになってしまった。

あれ?これ良いことでは?

顔だけがぼんやりしているヒロインに思いを馳せていると、情緒不安定第二王子が大袈裟に頭を抱えだした。すまんヒロイン。キーン様はどうやら情緒不安定にジョブチェンしたみたいだ。



「王族だぞ!? 王族! 色情魔から生まれた子を受け入れるんじゃねぇよ人が良すぎるだろどういうことだ! 受け入れて不自由なく育ててくれたことに感謝はしているが、もう少し自分たちの血筋の尊さを重んじてもいいだろ!?」

「複雑な心境でございますのね」

「あの第一王子も第一王子だ。俺のことをじっと見るだけで声すらかけてこねぇ。嫌味の一つも言ってくれよ。そうでなくとも睨んでくれれば分かりやすいものを、睨みもしてこないのはどういう心境なんだあれは」

何も考えてないと思う。

でも第一王子に関しては俺も攻略しても結局なんなのか分からなかったので何も言えることはない。

あれ、兄上は第一王子と同い年のはずだけど。

「そういえば、お兄様は何故同い年の第一王子のご学友ではなく2つ離れたキーン様のご学友に?」

「言わなかったっけ。キーンとQちゃんて同い年なんだよ」

「知っておりますが」

……え。まさかそれだけの理由で?そんな融通きくの?

というか、何とも言えない気持ちわるさを発揮しないでほしい。

「いや、ジュタは第一王子が苦手なだけだ。まあ、何を考えているか分からないやつだから関わるのは誰もが嫌だろうさ。はっきり言うと鑑賞用にしか向いてねぇ」

観賞用にしか向いていない第一王子とか可哀想なこと言ってやるなよ。



何を考えているか分からない、ねえ。

兄上が唯一使える魔法は読心魔法だったはずだけど?

ちらりと後ろの兄上に目線を向けるとスッと反らされた。

はいはい、黙っておいてあげますよ。



「何事もなければ順当にあれが王だ。だが、何を考えているか分からないということは何をしでかすか分からねぇということだ。だから、あれがちゃんと王になれるように俺の評価を下げることにした」

「それが、俺を婚約者にした理由ですか」

「ああ。俺がお前に勝手に一目惚れして無理やり婚約者候補に居れたんだ。もしお前が男だとバレても馬鹿な第二王子が傷つかないように女装するしかなかったということになるだろうから、あのゆるい陛下のことだお咎めなしだろうよ」

理にかなった暴論はおやめください。

まあ確かに妥当な理由だ。

しかも狙われても俺には兄上というバーサーカーがいるから守るのも簡単。

そして俺が男児であることを知っているのは、両親と兄上を除いて国王陛下と后妃様のみ。

箱入り娘だとすればセルーネ家の神秘と勘違いするであろう他家が首を突っ込んでくることもない。



「そして俺ほど可愛らしくて美しい淑女は他に居ないから女除けにもなる、というところでしょうかね」

「そういうことでいい」



まったく、最初からそう言ってくれれば協力するものを。

というか10歳が持ちかけてくるような交渉じゃないだろこれ。



「Qちゃん。お兄様は反対するぞ」

「俺と一緒にいる機会が増えますよ」

「賛成しよう。キーン、Qに何かあったら5倍にしてお前に返す」

「……お前の兄を何とかしておけ」

「キーン様のご学友でしょう?」

どうにもならねぇよ。



さて、断る理由はない。

そもそも拒否権はない気がしなくもないけど。

前世に女装はした事がないし、求められるのは完璧な淑女だ。

何ともまあやりがいがある暇潰しだ。



「協力してあげてもいいですよ。ただし、報酬はいただきます」

「ああ、お前の兄の人格更正以外なら受け付けよう」

散々な言われようだな。

兄上はこれでも外面は完璧なんだからな?

俺さえ関わらなければ爽やかな腹黒騎士なんだぞ。

俺さえ関わらなければ。



そんなことはどうでもいいので、俺はなかなか離してくれない兄上から降りて、頭を下げた。

「新作ドレスとウィッグの予備をください」

「欲があるのか無いのかよく分からないなお前は」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...