かわいい悪役令嬢俺とクソゲー世界

あくるめく咲日

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幼少期の章

邪魔をされるクソゲー

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オーデルハイン家敷地内の森の中。



そんなところに荷物置き用の屋敷があるのだが、俺の現住居だ。

放任主義なのでね。こっちも好きにしてみた。まあ、数人の使用人も巻き込んでしまったけれど。

最初はここが荷物置き用の屋敷だと聞いたときは意味が分からなかったけれど。

なかなかこじんまりしているし、森の中の小さな屋敷というステータス的にもいいんじゃないかと思う。

それにしても屋敷、なんかゲームの中でも見たことあるなと思ったらジュタがヤンデレ化したときにヒロインを閉じ込める屋敷がここだった。荷物置き場にヒロインを閉じ込めるんじゃない。

どおりで兄上の反対が無かったなぁとか嫌なことを察してしまったから考えることをやめた。





そんな屋敷に訪れてくるのは兄上だけだったのに、最近暇人が来るようになった。邪魔である。兄上だけでも邪魔なのに。



「よぉ。今日はウォーキングか」

「Qちゃんの大好きなお兄ちゃんが来たよ」

「キーン様とお兄様……またいらっしゃったのですか」



ここ最近頻繁に遊びに来てしまうようになった暇人という名のキーンと、嬉々としてそれについて来た兄上。

幸い俺はいつも淑女の勉強のために女装を事欠かなかったからいまだに男の姿を見られてはいない。まあ、女装していなくても俺は十分すぎるほどに可愛いから問題なし。

そして今まではちょいちょい来られるたびに授業を中断して相手していたけれど、別に大した会話があるわけでもないので早々に中断することをやめた。

キーンはそれを気にする様子もなく、眺めていたり野次を飛ばしたりアドバイスをくれたり。本当に自由だ。

それにしたって護衛の一人もつけずに来るのはどうなんだと言ったら兄上を指さしていたので、兄上はご学友兼護衛らしい。

果たして主よりも俺を優先するであろう兄上を護衛としてカウントしていいのだろうかと思わなくはない。



さて、今まで邪魔しないならいいかと思って放置してきたけれど流石に存在が邪魔だ。

面倒だからさっさと話しを聞きだしてやるしかないのだろう。明らかにここ最近何かストレスを抱えているようだし。いや普段からこの人はストレスフルだけども。

「申し訳ないのだけれど、一度中断してくださる?」

「かしこまりました。それでは一時間後に再開いたしましょう。今Q様の紅茶を用意いたします」

ありがとうみんな。

キーン様と兄上の座っているソファに向かい、自然な流れで膝に乗せようとする兄上を避けて隣に座った。

「やめるのか?」

「休憩です」

お前のせいやで、とは言わないでおこう。

めげずに手を絡めて来ようとする兄上の手をするりと叩いて紅茶を飲む。あっつ。



「キーン様は暇を持て余していらっしゃるのですか?」

「暇なわけねぇだろ」

なら来るなと思うのは俺だけか?

こっちはお前の誕生日パーティーの為にお勉強中なんだぞ邪魔するんじゃない。

「確かにQの思う通りだし、そもそもお兄ちゃんとしてはキーンが此処に来ることを全くよく思っていないから早急にやめて欲しいところだけどキーンに同情しなくもないから止められなかったんだよ」

「これが建前」

「Qちゃんと休みでもない日に昼間から一緒に居られることの幸せがやみつきになった」

「こっちが本音」

どさくさに紛れてギュッと指を絡めて手をつながれてしまったので気色悪さが増してしまったのは誤算だ。



「お前ら兄弟は今まで何人から気持ちわるい兄弟だなって言われてたんだ?」

うちの使用人たちがそんなこと言うわけないだろ。美しき兄弟愛だ。きっとたぶん。



「兄という生き物にまともな人間はいないのか?」

「こんなのを世の中の兄属性に含めないでください。これは極めて特殊な例です」

「Qちゃんだけの特別なお兄ちゃんってことか」

「ジュタは今のセリフから何を読み取ったんだ。行間じゃなくて本文を読め。言葉通りに解釈しろ」

ね。特殊でしょ。



「そもそも、キーン様のお兄様こそまともと言えるでしょうに」

「あ?」

顔こわ。

え、何。顔こわ。

「それ以上怖い顔をするなら泣きますが?」

「緩やかな脅しをするんじゃねぇ。はぁ……隠しても無駄か。大したことじゃないんだが、」

「え、まさか悩みを相談する気ですか。そういうのはちょっと」

こっちをなんだと思っているんだこの人は。

俺TUEEEE転生者だと思ったら大間違いだ。どちらかと言えば俺KAWAEEEEだぞ?

正直言って顔が良いということ以外何も無いんだぞこっちは。相談されても困る。そもそも相談されたくない。

「……大したことじゃないんだが、」

「あっダメだこれ相談されてしまうやつですわ」



「最近第一王子が俺の周りをうろちょろしてるんだ」



……で?



え、終わり?

ぱちぱちと瞬きをしてキーンを見つめるけれど、悲壮感を漂わせて頭を抱えているだけ。うん。次の言葉はないらしい。

……いやいやいやいや、それだけ?

これは中々に小規模過ぎる。

オブラートに包まずに言ってしまえば、心の底からどうでもいい。



「……気のせいではありませんこと?」

「気のせいじゃねぇ」

「鈴でも付けとけばいいんじゃないですか?」

「Qちゃん、第一王子は熊じゃないからね」

じゃあ水の入ったペットボトルを置いておくとか、CDでも吊るして置けばいいんじゃないかな……この世界にペットボトルもCDもないけど。

というか死ぬほどどうでもいい。

うろちょろしてるって無視すればいいだけの話では?

しらーっとしてる俺に兄上は

ぽん、と肩に手を置いて首を振った。

わあ、悲壮感。

「Qちゃんは見た事がないから言えるんだよ。私に対してでは無いからまだ耐えられるけれど……」

「あの人の顔を見るのは3日に1回でも充分過ぎるのに……最近は3時間に1回はあの人の存在感を感じている気がするぞ。俺は一体どんな罪を犯したんだ?」

そんな見ただけでSAN値が減少するみたいに言わないであげて。

仮にも相手は第一王子なんですけど。



それにしても第一王子ねぇ。

今世の俺は顔すら見た事ないけど。クソゲーの記憶を引っ張り出しても、正直全く分からない。

ただ、第一王子が何故ここまで苦手に思われているのかについては心当たりがある。



第一王子は言葉が足りなくて、無表情で物静かで何を考えているか分からない。

そして強引なのかといえばそうでも無く、王族ムーブかますのかと思えばそうでもない。ゆるいのだ。

誤解されやすく。嫌われやすい。

そういう設定だ。



そう、設定。

つまり、このクソゲーのクソ雑強制力が働いている可能性が高い。

だから世界の強制力により『何となく苦手』に思ってしまうのではないのだろうかと思う。

確か、メインキャラの中で第一王子に好感を持っているのはヒロインと悪役令嬢のみ。後はみんな苦手だったり近寄り難かったり様々だが要はマイナスの感情を向けていたはず。

これはあながちSAN値減少も間違っていないかもしれない。



更に言えば、前世での第一王子のあだ名は『情緒不安定王子』だ。

理由は簡単。

第一王子のみ好感度が勝手に変わるバグが起きるからだ。

MAXからゼロになるなんてザラで、個別ルートに入ろうものならランダムで必ず一度好感度が勝手にゼロになる。

攻略するのに運が必要なのだ。何のゲームをしているのか分からなくなった。ちなみに個別ルート中にセーブしたら立ち絵が消える。

その場合諦めて最初から始めるか、どこいくねーん!どこで話しとんねーん!なツッコミを入れながら虚無との恋愛をするしかない。

だから、割とみんなネタとしては第一王子が好きなのだが何を考えてるのか全く分からない。深い考察を出されても製作者そこまで考えてる気が全くしないし。

他の攻略キャラと違って、第一王子に関してはみんな本当にヒロインが好きなのだろうかと必ず1度は思ってしまう。そんなところなので本当に会ってみないとなんとも言えないし。



はあ、なんとも可哀想な話だ。

もう面倒くさいからクソゲー世界くんは黙って俺の可愛さに敗北してくれ。





「話しかけてみれば良いのではないですか?」

「ぜってー無理」

「Qちゃんはお兄ちゃんのことが嫌いなのかな?」

「嫌いじゃないから泣かないで兄上」





こうして、立ったフラグは当然のように回収される訳で。

キーンの誕生日パーティで俺は初めて第一王子と出会うことになる。



このクソゲーの悪役令嬢が一目惚れした第一王子に。
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