18 / 34
学校の章
クソゲーの始まり
しおりを挟む
朝。パチりと目が覚めた。
目覚ましの音が鳴る前に起きるなんて、オレも成長したもんだな。
なんて感心しながら目覚まし時計に手を伸ばすと、目眩がした。なんだ。どういう事だ。
目覚まし時計によると、どこからどう見ても13時を回っていやがる。
「ち、遅刻だ!!」
ガバッと上質な布団を蹴りあげてからはもう早かった。
寝ぼける体に無理やりスラックスを履かせてワイシャツを羽織る。このまま校舎に入ったら絶対怒られるけど、走りながらボタンを留めれば問題ない……はず。
鞄を引っ掴んで靴をサンダルのように引っ掛けて走り寮から慌ただしく飛び出す。
「あいつもあいつで、なんで起こさないかなー!」
いつもならば起こしてくる優しさを持っていたハズのルームメイトは何故か今日に限っては起こしてはくれなかったらしい。
お陰で13時なんてこの学校の歴代遅刻記録更新しそうな時間になってしまった。
嘆いても仕方がないけれど嘆かずにはいられない。
脇目も振らずに必死に走る。
しかし、ふと視界の端に何かを捉えた。
人ーーか?
はて。こんな時間に寮から校舎に向かう生徒なんてオレ以外居ないだろうし、この学園は外部から人はほとんど来ない。
つまり、こんな時間に外をうろついているなんて類友か不審者の2択だ。
ところで、オレは友達がいない。
それはオレがドジで頭が良くないけれどその欠点が霞んでしまうほど足が早くて目が良くて魔法ができてしまうからだ。9割くらい僻みだろう。
だから思った。
もしも類友ならば、友達になれるのでは?と。
僻まれ続けて10数年。
友達も居なくても元気にやってきたが、学校という社会で思い知らされた『ペア』を作らねば生き残れない現実。
この間先生からは遂に先手を打たれて「君はもう先生の隣に居ようか。みんな2人ペア作って~」という人の心が無いのかと泣き叫びたくなるようなほどの酷い仕打ちをされた。
類友であるならば度し難い遅刻仲間であるならば、きっとーー。
あともしも不審者だったら遅刻の原因にしよう。
よし。
僅か3秒の間、初めてこんなにも頭を働かせたオレは視界の端に映った人に向かって方向転換をしーー
フリィシュ・スタージェは遠目にでも分かるその人物のあまりの可愛さに足を縺れさせ、転倒した。
良すぎる視力が仇となった瞬間だった。
ーー視点切替ーー
ーQー
学園に足を踏み入れてすぐ。
物珍しくて辺りを見渡すと、遠目で人がいるのが見えた。
こんな時間に?授業中では?それとも昼休みか? と思っている暇はなく、その人がグラッと倒れた。
…………無視しても良いかな。
俺は別に心根が純粋だったり優しいとかそういう訳では無い。
ただ人生二周目だから心に余裕があるだけ。大抵のことはそういうこともあるよねと許せるし、面白そうな相談であればそれに乗ることもある。
つまり、この遠く離れた距離に居る見ず知らずの生徒が転んだからと言って助けに行くような人間ではない。
そもそも俺みたいな超絶可愛く成長を遂げてしまった令嬢が助けに行ってみろ。
惚れられてしまう。
こう言うのは惚れられてしまう。
クソゲーとはいえ乙女ゲーム経験者から言わせてもらうと大変ベタな出会いと言える。
いや、クソゲー的に言ったら悪役令嬢の恋愛は展開しないから大丈夫なんだろうけれども。
とにかく、見なかったことにしよう。
兄上だったら見て見ぬふりをするし。キーンだったら「大丈夫かー?」とその場で声をかけるだろうけど。
……じゃあ、彼なら?
助けるだろうな。
ゆっくり歩いて近付いて、じっと見つめて怪我がないか確認して。そしてなにか言葉を発するか、そのまま立ち去るのだろう。
うん。
俺は転んだまま何故か立ち上がらない生徒の方に向かっていった。
どうしてかは分からない。
ただ、もしかしたら。彼がきっと取るであろう行動を真似たら少しでも近付けるんじゃないかと。
あの純な彼の隣に立つことは二度と叶わなくとも、俺の中の彼が好むことをしたくなったのかもしれない。
「あの、お怪我はございませんか?」
本当はしゃがんで揺さぶりたい所だけど、淑女なので。
俺はかわいいかわいい淑女なので少し屈んで声をかけるだけに留めると、地面に伏していた顔面がゆっくりと持ち上がる。
「!?」
バチッと目が合った瞬間に目の前の生徒はゴツンッと地面に額を打ち付けた。
どういうこと?
俺が可愛すぎるからってこの学校に通う生徒がこんなベタなリアクションするだろうか。
なんたってこの学校はクソゲーくんトリセツ曰く、99%が貴族関係で平民は1%だというのに。
しかもその1%はクソゲー世界のヒロイン。
そう、乙ゲ主人公ちゃんである。
ピンク頭で翡翠色の瞳という、自然発生しないタイプのカラーリングのくせに平民でどこにでもいるようなありふれた子という無茶な設定はクソゲーだからなのか。
それとも乙ゲあるあるなのか。
平民の中に居たら普通に浮くけれど、この場合ありふれていると言うのは容姿のことかのか精神のことなのか分からないから何も言えない。
いや、精神は間違いなくありふれてはいないだろう。
なんたって俺とこのクソゲーという戦場を駆け抜けた女の子だ。戦友とも言える。
もしかして、その戦友を間近で見れる日も来るのだろうか。それはちょっとワクワクする。友達にはなりたくないけれど戦友として陰ながらエールは送りたい。
ちなみに平民は彼女1人だ。
比率計算間違えてると思う。1%って、100人に1人なら1%なんだから仮に1000人だったら10人居ないと1%にならないのに。
何だこのゲーム。昔から思ってたけど何が楽しいんだこのゲーム。
まあ、貴族関係って従者も入ってるから従者かもしれないな。
仕方ないからもう一度声をかけてみよう。
「申し訳ございません、驚かせてしまいましたでしょうか。あの、お怪我はございませんか?」
「っ!」
ガバッと勢い良く顔が上げられ、目が合う。今度は逸らされることがない。
むしろ、めちゃくちゃ見られているような。
「「…………」」
なんか喋れや。
分かるけども。
転んだだけでも恥ずかしいのに起き上がったら超絶なきゃわな子が自分を心配そうに覗き込んでいたらそんな反応になるのも分かるけども。
俺は明日からの編入の為に色々手続きをしないといけないから午後一に来たのであって。
見ず知らずの転んだ男子生徒と悠久の時を見つめ合う為にここに来たんじゃない。
「あ、あの!」
「はい」
沈黙。
なんか喋れや。
彼の言葉ならいくらでも待つが、それ以外の言葉を待ってやるほど俺は寛容ではない。
もう何かまくしたてて逃げようかな。と思った時、目の前の男子生徒は叫んだ。
「愛し合いませんか!」
「お断りします」
こいつは転んだ哀れな男子生徒じゃない。哀れな不審者だ。
起き上がった不審者はワイシャツのボタンすら止めていないらしく、どうやら露出狂の気もあるらしい。
うん。
聞かなかったことにしよう。
見なかったことにしよう。
居なかったことにしよう。
くるりと優雅に回ってから歩き出すと「かわいい!」という謎のSEが脳にキーンと響いたけれど気の所為だろう。
さて、ここから校舎に向かって職員室に行って寮に行くのか。
俺の寮が兄上と同室と聞いた時、なるほどこれで兄上は納得したのかと遠い目をしてしまったけれど今日は兄上と一緒に寝よう。
俺は自分の可愛さは自覚しているけれど、実は変態という類からそう言う目を向けられたことがない。
初めての生理的嫌悪が皮膚の上で鳥肌として主張している。
「待ってください! やましい意味ではありません!」
「仮にやましくなくてもお断りします」
あまりにもうるさいからって幻聴に答えてしまった。
変態の対処法について誰かまともな人から教わりたい。ちなみに物理行使は俺が相手を殺しかねないのでそれ以外で。
「オレはただ、貴女と激甘ハッピー子沢山エンドを迎えたいと思っているだけなので何もやましいことは考えていません!」
「きも」
やましさの塊が何か言ってる。
なんだ。その激甘ハッピー子沢山エンドって。
ねぇよんなもん。
クソゲーくんにもねぇよ。
ああもう。
「やましさの塊さん」
「こんなに誠実に貴女の愛を乞うオレを煩悩大臣みたいに呼ばないでください!」
「誠実……?」
何を言っているんだろうか。この人。本当にやばい人なのかもしれない。
「どうしてもあだ名で呼びたいのでしたら、貴女のハートの狩人とでも」
「やましさの狩人さん、着いてこないでくださいますか?」
「貴女は恥ずかしがり屋なんだね」
殴ってもいいだろうか。
言葉が通じているはずなのに通じなければもうこれは殴るしかないのでは無いだろうか。
グーは骨を壊すからやめておくとして、軽いビンタならワンチャンいけるのでは?
首が180度ほど回る程度だ。きっとこの手の変態は首がグルグル回るタイプだから大丈夫だろう。
もしものことがあっても残酷な描写ありのタグをそっと付け足しておけばそれで問題ないだろう。
よし。
くるりと回ると変態と目が合った。
「かわいい!」うるさいSEだ。
俺は身長がまだ伸び悩んでいるので、ヒール込みで女子平均より少し高めだけれど。それと同じくらいの目線ということは中々低めなようだ。
……どうしてだろうか。
今はものすごく関係ないはずなのにクソゲーくんのヒロインが脳裏を過ぎ去った。
なんだか凄く嫌な予感がする。気の所為であって欲しい。凄く気の所為であって欲しい。
そっとビンタをしようと構えていた手を下ろした。
人懐っこい笑顔を浮かべながら疑問符を飛ばしている姿はまさに犬のようで。
やましい狩猟犬と呼んであげた方がいいのかもしれない。
さて、実を言うとこの生徒を見てから嫌な予感はずっとしていたんだが。見て見ぬふりをしてきた。
いやまさか。そんなはずは。
だって、目の前の生徒は何度も繰り返すが男子生徒なのだ。
男だ。
ピンク頭で翡翠色の瞳をしていようが、男なのだ。
「失礼ですが、スタージェさんでございますか?」
「え!? 確かにオレはスタージェ! フリィシュ・スタージェだけど、なんで知ってるんですか!? ハッ、これが運命……?」
頭を抱えた。
ヒロインの変更しても変わらない事で有名なデフォルト名は、フィリー・スタージェだ。
フリィシュね?そう。男名だとそうなるんだ。まあ俺も悪役令嬢と名前違うもんね。
そういうことあるよね。クソゲーくんのバーーーカ!
女装してなければこの場で地団駄を踏んで「やっってられるかーー!!!」と叫び散らかしていたところだ。
ピンク頭を揺らして翡翠の瞳を輝かせるこいつがヒロインだと?男装という一縷の望みも抱けないこいつが?
俺の戦友だと?はぁ?
悪役令嬢も男で?
ヒロインも男?
バカにしてんのか?俺らを。
そんなのは悪い天丼の例だぞ、クソゲーくん。
最悪な形で天丼してくるんじゃねぇよ。
目覚ましの音が鳴る前に起きるなんて、オレも成長したもんだな。
なんて感心しながら目覚まし時計に手を伸ばすと、目眩がした。なんだ。どういう事だ。
目覚まし時計によると、どこからどう見ても13時を回っていやがる。
「ち、遅刻だ!!」
ガバッと上質な布団を蹴りあげてからはもう早かった。
寝ぼける体に無理やりスラックスを履かせてワイシャツを羽織る。このまま校舎に入ったら絶対怒られるけど、走りながらボタンを留めれば問題ない……はず。
鞄を引っ掴んで靴をサンダルのように引っ掛けて走り寮から慌ただしく飛び出す。
「あいつもあいつで、なんで起こさないかなー!」
いつもならば起こしてくる優しさを持っていたハズのルームメイトは何故か今日に限っては起こしてはくれなかったらしい。
お陰で13時なんてこの学校の歴代遅刻記録更新しそうな時間になってしまった。
嘆いても仕方がないけれど嘆かずにはいられない。
脇目も振らずに必死に走る。
しかし、ふと視界の端に何かを捉えた。
人ーーか?
はて。こんな時間に寮から校舎に向かう生徒なんてオレ以外居ないだろうし、この学園は外部から人はほとんど来ない。
つまり、こんな時間に外をうろついているなんて類友か不審者の2択だ。
ところで、オレは友達がいない。
それはオレがドジで頭が良くないけれどその欠点が霞んでしまうほど足が早くて目が良くて魔法ができてしまうからだ。9割くらい僻みだろう。
だから思った。
もしも類友ならば、友達になれるのでは?と。
僻まれ続けて10数年。
友達も居なくても元気にやってきたが、学校という社会で思い知らされた『ペア』を作らねば生き残れない現実。
この間先生からは遂に先手を打たれて「君はもう先生の隣に居ようか。みんな2人ペア作って~」という人の心が無いのかと泣き叫びたくなるようなほどの酷い仕打ちをされた。
類友であるならば度し難い遅刻仲間であるならば、きっとーー。
あともしも不審者だったら遅刻の原因にしよう。
よし。
僅か3秒の間、初めてこんなにも頭を働かせたオレは視界の端に映った人に向かって方向転換をしーー
フリィシュ・スタージェは遠目にでも分かるその人物のあまりの可愛さに足を縺れさせ、転倒した。
良すぎる視力が仇となった瞬間だった。
ーー視点切替ーー
ーQー
学園に足を踏み入れてすぐ。
物珍しくて辺りを見渡すと、遠目で人がいるのが見えた。
こんな時間に?授業中では?それとも昼休みか? と思っている暇はなく、その人がグラッと倒れた。
…………無視しても良いかな。
俺は別に心根が純粋だったり優しいとかそういう訳では無い。
ただ人生二周目だから心に余裕があるだけ。大抵のことはそういうこともあるよねと許せるし、面白そうな相談であればそれに乗ることもある。
つまり、この遠く離れた距離に居る見ず知らずの生徒が転んだからと言って助けに行くような人間ではない。
そもそも俺みたいな超絶可愛く成長を遂げてしまった令嬢が助けに行ってみろ。
惚れられてしまう。
こう言うのは惚れられてしまう。
クソゲーとはいえ乙女ゲーム経験者から言わせてもらうと大変ベタな出会いと言える。
いや、クソゲー的に言ったら悪役令嬢の恋愛は展開しないから大丈夫なんだろうけれども。
とにかく、見なかったことにしよう。
兄上だったら見て見ぬふりをするし。キーンだったら「大丈夫かー?」とその場で声をかけるだろうけど。
……じゃあ、彼なら?
助けるだろうな。
ゆっくり歩いて近付いて、じっと見つめて怪我がないか確認して。そしてなにか言葉を発するか、そのまま立ち去るのだろう。
うん。
俺は転んだまま何故か立ち上がらない生徒の方に向かっていった。
どうしてかは分からない。
ただ、もしかしたら。彼がきっと取るであろう行動を真似たら少しでも近付けるんじゃないかと。
あの純な彼の隣に立つことは二度と叶わなくとも、俺の中の彼が好むことをしたくなったのかもしれない。
「あの、お怪我はございませんか?」
本当はしゃがんで揺さぶりたい所だけど、淑女なので。
俺はかわいいかわいい淑女なので少し屈んで声をかけるだけに留めると、地面に伏していた顔面がゆっくりと持ち上がる。
「!?」
バチッと目が合った瞬間に目の前の生徒はゴツンッと地面に額を打ち付けた。
どういうこと?
俺が可愛すぎるからってこの学校に通う生徒がこんなベタなリアクションするだろうか。
なんたってこの学校はクソゲーくんトリセツ曰く、99%が貴族関係で平民は1%だというのに。
しかもその1%はクソゲー世界のヒロイン。
そう、乙ゲ主人公ちゃんである。
ピンク頭で翡翠色の瞳という、自然発生しないタイプのカラーリングのくせに平民でどこにでもいるようなありふれた子という無茶な設定はクソゲーだからなのか。
それとも乙ゲあるあるなのか。
平民の中に居たら普通に浮くけれど、この場合ありふれていると言うのは容姿のことかのか精神のことなのか分からないから何も言えない。
いや、精神は間違いなくありふれてはいないだろう。
なんたって俺とこのクソゲーという戦場を駆け抜けた女の子だ。戦友とも言える。
もしかして、その戦友を間近で見れる日も来るのだろうか。それはちょっとワクワクする。友達にはなりたくないけれど戦友として陰ながらエールは送りたい。
ちなみに平民は彼女1人だ。
比率計算間違えてると思う。1%って、100人に1人なら1%なんだから仮に1000人だったら10人居ないと1%にならないのに。
何だこのゲーム。昔から思ってたけど何が楽しいんだこのゲーム。
まあ、貴族関係って従者も入ってるから従者かもしれないな。
仕方ないからもう一度声をかけてみよう。
「申し訳ございません、驚かせてしまいましたでしょうか。あの、お怪我はございませんか?」
「っ!」
ガバッと勢い良く顔が上げられ、目が合う。今度は逸らされることがない。
むしろ、めちゃくちゃ見られているような。
「「…………」」
なんか喋れや。
分かるけども。
転んだだけでも恥ずかしいのに起き上がったら超絶なきゃわな子が自分を心配そうに覗き込んでいたらそんな反応になるのも分かるけども。
俺は明日からの編入の為に色々手続きをしないといけないから午後一に来たのであって。
見ず知らずの転んだ男子生徒と悠久の時を見つめ合う為にここに来たんじゃない。
「あ、あの!」
「はい」
沈黙。
なんか喋れや。
彼の言葉ならいくらでも待つが、それ以外の言葉を待ってやるほど俺は寛容ではない。
もう何かまくしたてて逃げようかな。と思った時、目の前の男子生徒は叫んだ。
「愛し合いませんか!」
「お断りします」
こいつは転んだ哀れな男子生徒じゃない。哀れな不審者だ。
起き上がった不審者はワイシャツのボタンすら止めていないらしく、どうやら露出狂の気もあるらしい。
うん。
聞かなかったことにしよう。
見なかったことにしよう。
居なかったことにしよう。
くるりと優雅に回ってから歩き出すと「かわいい!」という謎のSEが脳にキーンと響いたけれど気の所為だろう。
さて、ここから校舎に向かって職員室に行って寮に行くのか。
俺の寮が兄上と同室と聞いた時、なるほどこれで兄上は納得したのかと遠い目をしてしまったけれど今日は兄上と一緒に寝よう。
俺は自分の可愛さは自覚しているけれど、実は変態という類からそう言う目を向けられたことがない。
初めての生理的嫌悪が皮膚の上で鳥肌として主張している。
「待ってください! やましい意味ではありません!」
「仮にやましくなくてもお断りします」
あまりにもうるさいからって幻聴に答えてしまった。
変態の対処法について誰かまともな人から教わりたい。ちなみに物理行使は俺が相手を殺しかねないのでそれ以外で。
「オレはただ、貴女と激甘ハッピー子沢山エンドを迎えたいと思っているだけなので何もやましいことは考えていません!」
「きも」
やましさの塊が何か言ってる。
なんだ。その激甘ハッピー子沢山エンドって。
ねぇよんなもん。
クソゲーくんにもねぇよ。
ああもう。
「やましさの塊さん」
「こんなに誠実に貴女の愛を乞うオレを煩悩大臣みたいに呼ばないでください!」
「誠実……?」
何を言っているんだろうか。この人。本当にやばい人なのかもしれない。
「どうしてもあだ名で呼びたいのでしたら、貴女のハートの狩人とでも」
「やましさの狩人さん、着いてこないでくださいますか?」
「貴女は恥ずかしがり屋なんだね」
殴ってもいいだろうか。
言葉が通じているはずなのに通じなければもうこれは殴るしかないのでは無いだろうか。
グーは骨を壊すからやめておくとして、軽いビンタならワンチャンいけるのでは?
首が180度ほど回る程度だ。きっとこの手の変態は首がグルグル回るタイプだから大丈夫だろう。
もしものことがあっても残酷な描写ありのタグをそっと付け足しておけばそれで問題ないだろう。
よし。
くるりと回ると変態と目が合った。
「かわいい!」うるさいSEだ。
俺は身長がまだ伸び悩んでいるので、ヒール込みで女子平均より少し高めだけれど。それと同じくらいの目線ということは中々低めなようだ。
……どうしてだろうか。
今はものすごく関係ないはずなのにクソゲーくんのヒロインが脳裏を過ぎ去った。
なんだか凄く嫌な予感がする。気の所為であって欲しい。凄く気の所為であって欲しい。
そっとビンタをしようと構えていた手を下ろした。
人懐っこい笑顔を浮かべながら疑問符を飛ばしている姿はまさに犬のようで。
やましい狩猟犬と呼んであげた方がいいのかもしれない。
さて、実を言うとこの生徒を見てから嫌な予感はずっとしていたんだが。見て見ぬふりをしてきた。
いやまさか。そんなはずは。
だって、目の前の生徒は何度も繰り返すが男子生徒なのだ。
男だ。
ピンク頭で翡翠色の瞳をしていようが、男なのだ。
「失礼ですが、スタージェさんでございますか?」
「え!? 確かにオレはスタージェ! フリィシュ・スタージェだけど、なんで知ってるんですか!? ハッ、これが運命……?」
頭を抱えた。
ヒロインの変更しても変わらない事で有名なデフォルト名は、フィリー・スタージェだ。
フリィシュね?そう。男名だとそうなるんだ。まあ俺も悪役令嬢と名前違うもんね。
そういうことあるよね。クソゲーくんのバーーーカ!
女装してなければこの場で地団駄を踏んで「やっってられるかーー!!!」と叫び散らかしていたところだ。
ピンク頭を揺らして翡翠の瞳を輝かせるこいつがヒロインだと?男装という一縷の望みも抱けないこいつが?
俺の戦友だと?はぁ?
悪役令嬢も男で?
ヒロインも男?
バカにしてんのか?俺らを。
そんなのは悪い天丼の例だぞ、クソゲーくん。
最悪な形で天丼してくるんじゃねぇよ。
203
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる