【R18】お父さんと僕、ときどき弟(仮)

鯨井兀

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十話

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「え、パパ……? ああ、俺か。俺が、陽一の、パパ」

 なんだか微妙な空気が流れた。
 はじめて出会った時は、“息子”として接してきたのに。
 ハルカくんはすでに——
 この“こうかん”の親子の設定すら、忘れているのかもしれなかった……!

「確かに……俺は60μmの時から知ってるからな。0.06mmはだいたいコンドームの厚みだぞ……大きくなったな、陽一」
「う、うん?」
「そっか、じゃあパパとお風呂に入るか。俺、風呂で歯磨いてもいい? ただ湯船に浸かるのって苦手なんだよな~」

 あっという間に裸になり、鼻歌まじりにバスルームに向かう。
 僕もいそいで服を脱ぐけど、ふと、鏡にうつる自分を見つめて首をかしげた。

「0.06ミリ?」

 それから僕たちはいっしょにお風呂に入り、洗いっこをした。
 あと、ハルカくんがお風呂の中で歯磨きをするから、僕もまねをしてみた。
 浴室の排水溝にペッをするのは気が引けたけど、同じことができてうれしかった。

 そして——

「陽一は髪がさらさらだなー。俺は癖っ毛でさー、もう昔はくるんくるんの、鳥の巣かって感じでー」
「ふふ、見てみたぁい」

 ドライヤーで髪を乾かしてもらいながら、僕は鏡の前で大笑いをしていた。
 真新しい寝巻きに、高そうな化粧水までつけられて。
 鏡にうつった自分は、どこもかしこも新品みたいにピカピカしていた。
 そんな穢れ一つない姿に、ふと我にかえり、僕は目を丸くしていた。

(あれええ、ふつうにお風呂から上がっちゃってるよねえぇ)

 いつもは父とお風呂に入るので、
 入浴=いやらしいことをする——
 それが当たり前だと思っていた。

『声、出しちゃダメだからね……。陽くんがお父さんと、お風呂場でえっちなことしてるの、ふたりに知られちゃうよ……?』

 首から胸へと、父の厚ぼったい舌が肌を這いまわり。
 くすぐったくて身を捩ると、乳首が吸われて。さらに反対側は爪でカリカリといじめられた。
 声が出そうになると口をふさがれ、グッとお尻の穴に指がはいってくる。

『んっ、んっ、んっ』

 おちんちんの付け根のあたりを、中から指で押し込まれ、浴室にこもったうめき声と水音が響いた。
 そうやって僕は、毎日のように“イク”の練習をさせられていた。
 もちろん、父への奉仕も必ずあって。
 そのまま口に出されるときもあるけど、

『……陽くんの中も、ゴシゴシしようか』

 そうささやかれると、僕は浴槽からあがり壁に手をつく。
 すると後ろから父がおおいかぶさってきて、中に——
 大きくて堅いものがおなかを突き上げ、僕は苦しくて背中をそらす。
 地下の仕事部屋でするときより、音が響いてしまうから。
 父はいっそう肌を密着させて、僕の耳元で、

『陽くんは悪い子だ』『こんなにお父さんのおちんちんを咥え込んで』『中に欲しいって、うねってるよ』

 と。いやらしいことを延々とささやき、腰を動かすのだった。

「……聞いてる? 」
「えっ」

 耳元でささやいたのは父ではない。
 ハルカくんがドライヤーを止めて、僕の顔をのぞきこんでいた。

「いい感じに乾いたけど、どう?」

 鏡にうつった僕は、前髪をちょんまげみたいに結ばれていた。

「……もお、遊ばないでよお」
「だって俺のこと無視すんだもん。アハハ、パラサウロロフスみてえ」

 ハルカくんはドライヤーを片付け、ようやく素っ裸だった体にローブをまとった。
 腰紐を結び、かくれていく股間。
 それを鏡越しに見つめ、僕はモヤモヤしていた。

(もしかしてハルカくんは、しない大人、なのかな……? でもゴムもたくさんあって、“息子”とはしてるのに。その子は僕のお父さんとも、きっとお風呂でも、いっぱいしたんだよ。なのに、どうして僕にはしてくれないんだろう)

 ソースの出しあいっこ以来、ハルカくんとは友だち同士みたいに楽しかった。
 しかし、思い返してみれば外のテラスで、おちんちんをいじられたときだって。
 実験みたいで、いやらしい感じはまるでなかったのだ。

(あれ……ハルカくんって、僕に興味がない、とか?お父さんは毎日僕をかわいいって触ってくるけど……ハルカくんは……? 僕のおちんちんから、白いのがビュッて出るようになったら、興味がなくなっちゃった? え……僕って、おちんちん以下なの? そんな……っ)

 ちょんまげヘアーの自分を見つめて、僕はカミナリに撃たれたような衝撃を受けていた。

『陽くんは可愛いね』『可愛いからお父さん、すぐおちんちん勃っちゃうよ』『可愛い、えっちだね陽くんは』

 日々そんな甘いささやきをされ、父の言葉どおりに受け取っていた。
 しかし、今となっては父の一番の座すらあやうくい現状で。
 さらに、この家の“パパ”には——
 興味すら持たれていないのである。

(や、やだよ……っ。僕も一番になりたい。今だけでもいいから、ハルカくんの、一番になりたいよ) 

 頭の中では嵐がふきあれ、僕を乗せた帆船が荒海に飲まれそうな幻覚を見ていた。

「うー、俺、眠たいかも。陽一、トイレは? もう上で寝ようよ」
「ね……ねるの? それって、ふつうに、枕にコロンとして、ねるだけの」
「うん? 寝ないの?」
「だって、僕、まだ何もしてないよ、パパと」
「えー? まだ何かしたい、の——エッ」

 意を決した僕は、膝をついてハルカくんのローブに潜りこんでいた。

「——なに!かくれんぼ……? お、鬼の懐に隠れるとは、斬新だな、師匠」
「えへへ、みっけえ」

 ローブの内側から見上げた先に。
 太ももの間から、たわわにぶら下がる、ハルカくんの立派なおちんちん。
 僕はその先っぽに舌を伸ばして、ペロリと舐めあげた。

「——えっ、アッ、ちょ、なにっ」

 後退りするハルカくんの足にしがみつき、必死におちんちんをくわえ込む。

 はむ、ハフ、ちゅ、ちゅ、あむッ

 柔らかかった大きな肉塊が、手や口の中でムクムクとふくらんでいく。

「う……っ、待って、よぅ、ぃち、だめだって」

 洗面台にもたれかかり、ハルカくんはズルズルと床にへたり込んでしまう。
 でも僕はそのまま股座に顔をうずめて、口いっぱいにほおばり続けた。

(ハルカくんの、やっぱりおっきぃ。でも、かたくなってきたぁ……! ぼく、ちゃんとできてるんだあ)

 歯をあてないように一生懸命大きく口を開けるけど、先っぽにしゃぶりつくのがせいいっぱいだ。

(くるしいけど、先っぽからしおっぱいやつ出てきた……。やったあ。もっといっぱい、ハルカくんに気持ちよくなってほしいなぁ)

 手首もねじるように動かして、おちんちんをしごいていく。
 すると、

「やめろってば!」

 両肩をつかまれ、口からぶるんとおちんちんが逃げてしまう。
 すぐに咥えなおそうとするけど、

「陽一!」
「………ッ」

 ハルカくんが怖い顔をして、僕をにらんでいた。

「やめろって言ってるだろ。……悪い子だな」
「え……」

 父のいう“悪い子”とは明らかにちがう。
 ハルカくんに言われた“悪い子”は、“けいべつ”という名の剣を振りかざしていた。
 その剣は、僕の荒海を漂う帆船を、木っ端みじんに打ち砕いていく。

(僕は、悪い子——……)

 たったひとりきり。
 真っ暗な海へと沈んでいくような気分になっていた。
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