転生・小野小町(♂)の受難~DK 冥官修行録~

葛城 惶

文字の大きさ
9 / 50
一 奥の細道

浅茅生の......(一)

しおりを挟む
 相変わらず暑い。

 じいちゃんの家は古い造りなんで、縁側の戸を開け放して風が入るようにしてあるんだけど、それでも暑い。

 今日は特に風が無いから、服がべったり貼り付くようだ。

 俺は水本と牛頭さん、馬頭さんと、追試に向けて特訓中。

......にしても、よくよく思うんだけど、

「恋の歌、多いよな。和歌って......みんな、そんなに暇だったのかな」

 馬頭さん、思わず苦笑い。

「暇な訳じゃありませんよ。見たでしょ?恋とは、状況に関わらずしてしまうもんなんですよ」

「そうそう、戦国武将なんて暇な訳ないじゃん」

 水本が大きく頷く。佐竹氏やら奥州の合戦年表見せられて唸る俺。びっちりじゃん。しかも一年の間にあっちだのこっちだの。超ご多忙。

「まぁ、文字摺の方とか蘆名公はあまり問題無い方々なんですよ」

 まぁね、両想いだし。
 でもホント昔は遠距離恋愛は大変だな。ライン無いし、新幹線も飛行機も無い。会うの大変だよな。

「でも、人の思いは恋愛だけじゃないですからね。親子の情愛を詠んでたりするのを、後の人が恋愛に解釈してるだけかもしれません」

 ふぅ~ん。ま、三十一文字しかないもんね。

「いずれにしても、人の思いだからな」

牛頭さん。ちょっと遠い目。なんか地獄で色々見てるんだろうな。深いわ。
 麦茶、お代わりちょうだい。

 というところでスマホが鳴った。発信を見ると見慣れない番号。とりあえず出る。

「もしもし......」

『あ、小野君?......教務の菅原だけど、篠原君、そっち行ってないか?』

 あ、ガッコの先生でした。怖~い風紀の菅原先生。担当は倫理社会。らしすぎる。

「来てませんよ。なんかあったんですか?」

『家に帰って無いんだそうだ。お母さんから電話があった』

 家に帰って無いって......ふぃっと時計を見るともう十一時、夜中です。都会と違ってド田舎のここじゃ、十一時なんて真っ暗。どこの店も開いてない。マクドなんかも無いし。

「街場行って、帰れなくなってんじゃないすか?」

 あり得る。駅で夜明かし。

『篠原君は真面目な子だ。連絡くらいするはずだ』

あ、スマホ持ってるよね?普通。篠原、女の子だし。ヤバくね?

『クラスの連中と肝試し行くって言ってたらしい。......心当たりないか?』

 肝試しって.....この辺、夜遅く歩くのって、まんま肝試しだけど。

「あ、黒塚!」

 水本が叫ぶ。安達ヶ原の鬼婆ってヤツ?あれ、伝説でしょ。

「そうとも言えんぞ。......牛頭車出せ!二本松だ」

 あれ?どっから現れたの?小野崎先生ごせんぞさま

 なんかヤバい案件?行ってらっしゃい。

「お前も来い!馬頭もだ」

 なんで?あ、人手いるか、救出係。怖いんだけど......。

「僕も行きます!」

て、水本。お前、怖いもん知らないね。
 うん、とか頷かないの、先生。顔がマジ過ぎて怖い。

「早くしろ!」

 あれ?平野先生まさかどさんもなの?仲良しだね。
デッカいランクル、似合ってますね。
......て、言ってる間もなく、車に引き摺り込まれる俺たち。
 戸締まりは~?

「済ませました」

って馬頭さん、そこでファンタジーしなくていいからあぁ~!




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

処理中です...