8 / 50
一 奥の細道
筑波嶺の......(二)
しおりを挟む
と言う訳でやってきました、山のなか。
現在は巨大なダム湖になっていて、真ん中に大きな橋がかかってる。
かなり有名な観光スポットらしい。いっぱい止まっている車の中になんとか駐車して、てくてく歩く。
で、なんか橋の真ん中あたりが異様に盛り上がってる。何?
「あぁ、バンジージャンプ出来るんですよ?やっていきます?」
って案内所の、元お姉さん。
バンジージャンプ?
あのTV でよく見る、お笑いの罰ゲーム?
本当にやる人いるの?
と思ったら、本当にいました。
橋の真ん中辺りから、嬌声上げてダイブしてるのは、なんと若いお姉さん。
うっそー!
そりゃ命綱は着いてるけど、相当高いのよ、橋。下見るのさえ怖いのに。
で、ボートに拾われて、ニコニコして、こっちに大きく手を振ってる。どんだけ肝っ玉太いのよ。女は強い。
俺たちは、次々に上がる歓声やら嬌声を無視して橋を渡る。
本当に見るのもコワイから、そそくさと通り過ぎて、ダム湖の奥に続く遊歩道を進みます。
でも、ダム湖とはいえ、本当に大きくて水も綺麗。
周辺は連なる山の緑が眩しい。
本当に龍神がいそうな景色。
「まぁいるからなぁ~」
と平野先生。
え?龍神て本当にいるの?
「まぁ見るヤツのイメージの投影だけどな。デカイ自然エネルギーの固まり......かな」
あ、そうなんですね。
だから台風とか洪水の元みたいに言われるんですね。
確かに膨大な自然エネルギーですもんね、台風とか。
「まあ、地脈とか水脈、気脈の象徴でもあるけどな」
と、小野崎先生。つまり『流れ』なんだそうです。地中の奥深くだったり、大気だったり。なるほどね。科学的な解釈ステキ。存在は科学的じゃないけど。
そして、ずーっとずーっと歩いて、アスファルトの道が無くなって、滑落しそうな細い尾根道を越えたころ......。
ありました源流。
名前は亀が淵。
虫の声とせせらぎだけが聞こえて、とても静かです。
でも、どうやって探すん?
と思ったら、水本の腕からウサギが飛び出して、淵の際でぴょんぴょん飛び跳ねてる。
「ダメだよ、危ないよ」
叫ぶ水本。うん、そうだよ危ないよ。ほら水がザバーって......。て、えぇーっ!
淵の中心がいきなり盛り上がって.......。
り、龍神?
ウソー!
自然エネルギーって言ったじゃない、先生。
「バカ!よく見ろ」
平野先生さん、首根っこ掴むの止めて。馬鹿力なんだからっ!
あれ......?
ひぃひぃしながら、淵に目を凝らすと、龍神と思ったら人でした。平野先生といい勝負の厳ついオッサン。
それだっておかしいでしょ。
あそこ、淵の真ん中だよ、水深十メートルじゃきかないんだよ。
ー太郎どの~!ー
固まっている俺たちの目の前、ウサギさんが、ふぉんと若侍の姿に戻る。んでもって、淵の中のオッサンめがけてジャンプ!
ー平四郎どの!ー
しかと抱きしめるオッサン。
へー幽霊って溺れないんだ。って何を見せられてんの?俺たち。
なんも食べて無いのに、すんげえ甘いんですけど。そこの水、飲んでいい?
『義重、己のが未練も癒えたであろう』
半ばドン引きながら、平野先生
『早う役目につけ』
ー共にあれるなら......ー
じぃっと見つめ合う男ふたり。
若侍ー盛隆様が、そうと知らなきゃ男に見えないくらいの美人だから、まあ、見られなくはないけど。
ねぇ、純情な青少年には目の毒なんですけどぉ?
『早くせぬか』
あ、小野崎さん、キレた。
それでも、オッサンは余裕。
若侍さんの髪を撫でて......え?若侍さんの姿が消えて、オッサンの掌にキラキラ光る虹色の玉。
そして......
オッサン、つまり佐竹義重さんはふぉんと姿を変え......。
龍になって......。
片手に盛隆さんの宝玉を握りしめて......。
天に昇っていきました......。
.............自然エネルギーって言ったじゃん、先生!
「例外もある」
って、マジっすか!?
「まぁ上がったんだから、いいじゃないすか」
と牛頭さん。
水本は......完璧に固まってた。けど、何、目をキラッキラさせてんの~!?
「で、弟子にしてください!」
おいおい、何言い出すの!?
平野先生さん、呆れモードで溜め息。
「まだ凝りてないのか.....」
なんとも言えない顔の小野崎先生に、水本の前世が仙人志願だったと聞くのは、その後の話。
ー筑波嶺の 峰より落つる 男女川 恋ぞつもりて 淵となりぬるー
(陽成院 百人一首 第13番『後撰集』恋・777)
現在は巨大なダム湖になっていて、真ん中に大きな橋がかかってる。
かなり有名な観光スポットらしい。いっぱい止まっている車の中になんとか駐車して、てくてく歩く。
で、なんか橋の真ん中あたりが異様に盛り上がってる。何?
「あぁ、バンジージャンプ出来るんですよ?やっていきます?」
って案内所の、元お姉さん。
バンジージャンプ?
あのTV でよく見る、お笑いの罰ゲーム?
本当にやる人いるの?
と思ったら、本当にいました。
橋の真ん中辺りから、嬌声上げてダイブしてるのは、なんと若いお姉さん。
うっそー!
そりゃ命綱は着いてるけど、相当高いのよ、橋。下見るのさえ怖いのに。
で、ボートに拾われて、ニコニコして、こっちに大きく手を振ってる。どんだけ肝っ玉太いのよ。女は強い。
俺たちは、次々に上がる歓声やら嬌声を無視して橋を渡る。
本当に見るのもコワイから、そそくさと通り過ぎて、ダム湖の奥に続く遊歩道を進みます。
でも、ダム湖とはいえ、本当に大きくて水も綺麗。
周辺は連なる山の緑が眩しい。
本当に龍神がいそうな景色。
「まぁいるからなぁ~」
と平野先生。
え?龍神て本当にいるの?
「まぁ見るヤツのイメージの投影だけどな。デカイ自然エネルギーの固まり......かな」
あ、そうなんですね。
だから台風とか洪水の元みたいに言われるんですね。
確かに膨大な自然エネルギーですもんね、台風とか。
「まあ、地脈とか水脈、気脈の象徴でもあるけどな」
と、小野崎先生。つまり『流れ』なんだそうです。地中の奥深くだったり、大気だったり。なるほどね。科学的な解釈ステキ。存在は科学的じゃないけど。
そして、ずーっとずーっと歩いて、アスファルトの道が無くなって、滑落しそうな細い尾根道を越えたころ......。
ありました源流。
名前は亀が淵。
虫の声とせせらぎだけが聞こえて、とても静かです。
でも、どうやって探すん?
と思ったら、水本の腕からウサギが飛び出して、淵の際でぴょんぴょん飛び跳ねてる。
「ダメだよ、危ないよ」
叫ぶ水本。うん、そうだよ危ないよ。ほら水がザバーって......。て、えぇーっ!
淵の中心がいきなり盛り上がって.......。
り、龍神?
ウソー!
自然エネルギーって言ったじゃない、先生。
「バカ!よく見ろ」
平野先生さん、首根っこ掴むの止めて。馬鹿力なんだからっ!
あれ......?
ひぃひぃしながら、淵に目を凝らすと、龍神と思ったら人でした。平野先生といい勝負の厳ついオッサン。
それだっておかしいでしょ。
あそこ、淵の真ん中だよ、水深十メートルじゃきかないんだよ。
ー太郎どの~!ー
固まっている俺たちの目の前、ウサギさんが、ふぉんと若侍の姿に戻る。んでもって、淵の中のオッサンめがけてジャンプ!
ー平四郎どの!ー
しかと抱きしめるオッサン。
へー幽霊って溺れないんだ。って何を見せられてんの?俺たち。
なんも食べて無いのに、すんげえ甘いんですけど。そこの水、飲んでいい?
『義重、己のが未練も癒えたであろう』
半ばドン引きながら、平野先生
『早う役目につけ』
ー共にあれるなら......ー
じぃっと見つめ合う男ふたり。
若侍ー盛隆様が、そうと知らなきゃ男に見えないくらいの美人だから、まあ、見られなくはないけど。
ねぇ、純情な青少年には目の毒なんですけどぉ?
『早くせぬか』
あ、小野崎さん、キレた。
それでも、オッサンは余裕。
若侍さんの髪を撫でて......え?若侍さんの姿が消えて、オッサンの掌にキラキラ光る虹色の玉。
そして......
オッサン、つまり佐竹義重さんはふぉんと姿を変え......。
龍になって......。
片手に盛隆さんの宝玉を握りしめて......。
天に昇っていきました......。
.............自然エネルギーって言ったじゃん、先生!
「例外もある」
って、マジっすか!?
「まぁ上がったんだから、いいじゃないすか」
と牛頭さん。
水本は......完璧に固まってた。けど、何、目をキラッキラさせてんの~!?
「で、弟子にしてください!」
おいおい、何言い出すの!?
平野先生さん、呆れモードで溜め息。
「まだ凝りてないのか.....」
なんとも言えない顔の小野崎先生に、水本の前世が仙人志願だったと聞くのは、その後の話。
ー筑波嶺の 峰より落つる 男女川 恋ぞつもりて 淵となりぬるー
(陽成院 百人一首 第13番『後撰集』恋・777)
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる