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一 奥の細道
筑波嶺の......(一)
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「さて、出掛けるか.....」
数日後、やっぱり小野篁の小野崎先生と平野先生に引き摺られて牛頭さんの車に乗り込む俺。今日は大きめのワンボックス。
で、俺より先に、嬉しそうに若侍のウサギを抱いて乗り込む親友、水本透。
「なんでお前も着いてくるわけ?」
訝る俺に、ウサギの頭を撫でながら、にっこり笑う。
「え?歴史ネタで俺を置いてくつもり?ーそんなん許すわけないじゃん」
はい。コイツは歴史オタク。山越えて、坂東太郎の史跡を尋ねる......って言ったら嬉々として着いてきた。
で、車の中では勉強会。
『蘆名盛隆』さんというのは、戦国時代の会津の殿様。若くして、家来に殺された。可哀想。
元々、須賀川の二階堂氏からの人質なんだけど、蘆名氏の後継ぎ息子が早死にして、血縁だからって後継指名されたらしい。
当然、部下は舐めてるし、言うことなんか聞かない。イジメもあったらしい。ホント可哀想。
世間では同性愛のもつれと言うけど、そんなに甘いもんじゃないーというのが、平野先生さんと水本の共通見解。
『あの時代は領地支配を巡って日本中で熾烈な争いが繰り広げられていた。奥州だって例外じゃない』
つまりは会津を狙う他の大名の陰謀で殺された、てことらしい。黒幕はたぶん伊達輝宗ー伊達政宗のお父さんね。
『盛隆公が亡くなってすぐ、政宗公に家督を譲って、次男の小次郎に蘆名氏を継がせようとしたからね』
あ、一番ズルいやつ。......て、ウサギさん顔怖いです。目が尖ってます、ウサギなのに。
『で、それを阻止したのが、常陸介こと、佐竹義重公。別名、坂東太郎というわけだ』
あ、ちなみに『坂東太郎』ってのは、「利根川」のことね。だから茨城=常陸の強い武将の誉め詞に使われるんだって。将門さんもそう言われたって、胸を張る平野先生。そりゃ強かったもんね、将門さん。
「でもなんで佐竹さんが、介入すんの?」
余所事じゃん。山の向こうよ?
「盛隆公の恋人だもん。佐竹義重公」
え?
はい?
何ですと?
「戦場で佐竹さんが、ラブレター送りまくって、愛が芽生えたらしい。部下達がアホらしくなって戦を止めた、って有名な話だよ」
まぁ...そりゃあ....やってらんないわな。家来さん、馬に蹴りまくられるわ、うん。
「でも、男同士だよね?」
いわゆる腐女子が喜ぶB がL な世界だよね......。
「昔はわりと普通だよ。武田信玄が家臣に送ったラブレターとかあるし、伊達政宗さんも、家臣に浮気の言い訳してるし.....」
さいですか。みんな浮気者なのね。
「でも、義重公は一途だったみたいでさ。盛隆公が亡くなって、その子に跡を継がせるんだけど、三歳で亡くなって。次男に蘆名を継がせるんだけど、伊達政宗に負けて、常陸に逃げたんだ」
摺上原の戦いってやつですね。地元じゃ有名。
「で、逃げてきた息子だけじゃなく、盛隆公の姪や娘もちゃんと面倒みたし、嫁にもちゃんと出したんだよ」
水本いわく、それは誠意なんだって。自分の側室にしたりせず、息子の正室とか、縁のある大名にお輿入れさせて、後までちゃんと考えてた。ー若い姫とみれば側室にした豊臣秀吉とはえらい違い......って、色ボケ過ぎだろ、あのオッサンは。
「まぁ盛隆公の母親まで引き取ったからな」
と、平野先生。
盛隆公のお母さんは於南姫っていう、伊達政宗の叔母さんに当たる人。
早くに夫と息子を亡くして、須賀川の城主やってた。けど、伊達と戦争になって『降服してください、俺がちゃんと養いますから』という政宗さんの言葉をガン無視。
結局、佐竹に身を寄せた......という。
どんだけ嫌われたのよ、政宗さん。
反対に盛隆公が生きてる間も死んでからも誠意を尽くしたーのが、義重公ということらしい。いや~、どんだけラブラブだったんだか、男同士なのに。
ウサギさん、何気に目が潤んでるよ。感涙?
「で、問題は何処にいるか?ですよね」
牛頭さんがナビをチェック。佐竹氏は関ヶ原以降、秋田に転封になったけど、そっちにはいないらしい。
事前に地図チェックしてたら、秋田の地図、ズタズタにされたもん、ウサギさんに。で、ちょっこり手を乗せて動かなかったのが、茨城県北。
まあ、領地支配の本拠地だったもんね。まだいるのね。
でも、県北広いのよ?
元のお城の跡にはいなかったし......。
と、ここで、小野崎先生さま、う~んと唸って、牛頭さんに確認。
「何処か、近くに、大きい湖とか滝とかあるか?」
牛頭さん、ナビをじぃっと見る。
「龍神の住む湖ってか、淵がありますね。ーちょっと山越えになりますが」
「そこだ!」
と、小野崎先生さま。なんで?
「恋ぞ積もりて淵となりぬる......だ」
いや、筑波山、あっちですよ?
「筑波峰は常陸国とイコールだ。だからまず、常陸国の淵を探すんだ」
さいですか......。
数日後、やっぱり小野篁の小野崎先生と平野先生に引き摺られて牛頭さんの車に乗り込む俺。今日は大きめのワンボックス。
で、俺より先に、嬉しそうに若侍のウサギを抱いて乗り込む親友、水本透。
「なんでお前も着いてくるわけ?」
訝る俺に、ウサギの頭を撫でながら、にっこり笑う。
「え?歴史ネタで俺を置いてくつもり?ーそんなん許すわけないじゃん」
はい。コイツは歴史オタク。山越えて、坂東太郎の史跡を尋ねる......って言ったら嬉々として着いてきた。
で、車の中では勉強会。
『蘆名盛隆』さんというのは、戦国時代の会津の殿様。若くして、家来に殺された。可哀想。
元々、須賀川の二階堂氏からの人質なんだけど、蘆名氏の後継ぎ息子が早死にして、血縁だからって後継指名されたらしい。
当然、部下は舐めてるし、言うことなんか聞かない。イジメもあったらしい。ホント可哀想。
世間では同性愛のもつれと言うけど、そんなに甘いもんじゃないーというのが、平野先生さんと水本の共通見解。
『あの時代は領地支配を巡って日本中で熾烈な争いが繰り広げられていた。奥州だって例外じゃない』
つまりは会津を狙う他の大名の陰謀で殺された、てことらしい。黒幕はたぶん伊達輝宗ー伊達政宗のお父さんね。
『盛隆公が亡くなってすぐ、政宗公に家督を譲って、次男の小次郎に蘆名氏を継がせようとしたからね』
あ、一番ズルいやつ。......て、ウサギさん顔怖いです。目が尖ってます、ウサギなのに。
『で、それを阻止したのが、常陸介こと、佐竹義重公。別名、坂東太郎というわけだ』
あ、ちなみに『坂東太郎』ってのは、「利根川」のことね。だから茨城=常陸の強い武将の誉め詞に使われるんだって。将門さんもそう言われたって、胸を張る平野先生。そりゃ強かったもんね、将門さん。
「でもなんで佐竹さんが、介入すんの?」
余所事じゃん。山の向こうよ?
「盛隆公の恋人だもん。佐竹義重公」
え?
はい?
何ですと?
「戦場で佐竹さんが、ラブレター送りまくって、愛が芽生えたらしい。部下達がアホらしくなって戦を止めた、って有名な話だよ」
まぁ...そりゃあ....やってらんないわな。家来さん、馬に蹴りまくられるわ、うん。
「でも、男同士だよね?」
いわゆる腐女子が喜ぶB がL な世界だよね......。
「昔はわりと普通だよ。武田信玄が家臣に送ったラブレターとかあるし、伊達政宗さんも、家臣に浮気の言い訳してるし.....」
さいですか。みんな浮気者なのね。
「でも、義重公は一途だったみたいでさ。盛隆公が亡くなって、その子に跡を継がせるんだけど、三歳で亡くなって。次男に蘆名を継がせるんだけど、伊達政宗に負けて、常陸に逃げたんだ」
摺上原の戦いってやつですね。地元じゃ有名。
「で、逃げてきた息子だけじゃなく、盛隆公の姪や娘もちゃんと面倒みたし、嫁にもちゃんと出したんだよ」
水本いわく、それは誠意なんだって。自分の側室にしたりせず、息子の正室とか、縁のある大名にお輿入れさせて、後までちゃんと考えてた。ー若い姫とみれば側室にした豊臣秀吉とはえらい違い......って、色ボケ過ぎだろ、あのオッサンは。
「まぁ盛隆公の母親まで引き取ったからな」
と、平野先生。
盛隆公のお母さんは於南姫っていう、伊達政宗の叔母さんに当たる人。
早くに夫と息子を亡くして、須賀川の城主やってた。けど、伊達と戦争になって『降服してください、俺がちゃんと養いますから』という政宗さんの言葉をガン無視。
結局、佐竹に身を寄せた......という。
どんだけ嫌われたのよ、政宗さん。
反対に盛隆公が生きてる間も死んでからも誠意を尽くしたーのが、義重公ということらしい。いや~、どんだけラブラブだったんだか、男同士なのに。
ウサギさん、何気に目が潤んでるよ。感涙?
「で、問題は何処にいるか?ですよね」
牛頭さんがナビをチェック。佐竹氏は関ヶ原以降、秋田に転封になったけど、そっちにはいないらしい。
事前に地図チェックしてたら、秋田の地図、ズタズタにされたもん、ウサギさんに。で、ちょっこり手を乗せて動かなかったのが、茨城県北。
まあ、領地支配の本拠地だったもんね。まだいるのね。
でも、県北広いのよ?
元のお城の跡にはいなかったし......。
と、ここで、小野崎先生さま、う~んと唸って、牛頭さんに確認。
「何処か、近くに、大きい湖とか滝とかあるか?」
牛頭さん、ナビをじぃっと見る。
「龍神の住む湖ってか、淵がありますね。ーちょっと山越えになりますが」
「そこだ!」
と、小野崎先生さま。なんで?
「恋ぞ積もりて淵となりぬる......だ」
いや、筑波山、あっちですよ?
「筑波峰は常陸国とイコールだ。だからまず、常陸国の淵を探すんだ」
さいですか......。
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