転生・小野小町(♂)の受難~DK 冥官修行録~

葛城 惶

文字の大きさ
12 / 50
一 奥の細道

夢よりも......(一)

しおりを挟む
 翌日、篠原と女子二名が昨夜のお礼とお詫びに、ってクッキー焼いて持ってきた。

「あれ?今日は水本君は?」

「透は今日はバスケの練習。来週、試合だろ」

 悪かったな、俺だけで。

「そっかー。コマジ君、応援行くんでしょ?」

 俺はコ・マ・ハ・ル!まぁ点々ついてるから許すけど。

「麦茶、如何ですか?」

 馬頭さんが、ボトルとコップをお盆に乗せて顔を出す。気が利くじゃん。

「こんにちは。いらっしゃい」
 
牛頭さんも庭先から顔を出す。草取りしてくれたの?助かるわ。ばぁちゃん喜ぶよ。

「あ、いただきますぅ~」

途端に女子の目がハートになる。現金だな。ま、馬頭さんも牛頭さんもイケメンだもんな。

「コマジ君、親戚の人?」

 はいはい、紹介しますよ。

「じぃちゃんのお弟子さんで、牛尾さんと馬込さん。この家の留守番に来てくれてるんだ」

「あ、そうなんだ~。同級生の篠原です。昨日はありがとうございました」

 篠原、ぺこりん。続いて他の女子もぺこりん。

「菅生です~」

「安達です~」

まぁ迷いそうなヤツばっかだったのね、黒塚。

「初めまして。コマハル君がお世話になってます」

「「「いいぇ~」」」
 
と目がハートな女子三人。世話してんのは俺の方なんですけど。

 ちゃっかり上がり込んで麦茶と煎餅、パクつく女子。

「お兄さん達は大学生ですか~?彼女いるんですか?」

 最近の女子は積極的だな。でも惚れたって無理。イケメンのフリしてるけど、二人とも地獄の鬼なんだから。怖いんだから。
 ほら、笑って誤魔化して。

「で、誰が、コマハル君のカノジョ?」

牛頭さん、違うから。
 
え~!って黄色い声で叫ばれたじゃん。地味に傷つくのよ、このリアクション。

「え?違うの?」

抉るな、牛頭

「だって~、コマジ君は水本君ひと筋だし~。水本君もコマジ君一筋だし~」


「両想いの邪魔したくないもんね~」

 はあぁ?なんだそりゃ?
 お前ら脳ミソ腐ってんのか?
 腐女子なのか?

「ふざけんなよ、俺と水本は健全な友達。変な誤解すんなよ」

「わかってるよ~。からかっただけ。コマジ君と水本君は幼なじみだもんね」

 よく分かってんじゃん、菅生。
あれ、お前なんか顔色悪くない?

「菅生、なんか元気無いけど?どした」

「実は、相談があって......。でも、今日は水本君いないみたいだから、後でまた来る」

って何だよ?

「だって、コマジ君、歴史苦手じゃん」

 うんうんと相槌を打つふたり。あ、そっち系?そりゃ俺もパスだわ。

「また来るね~」

 と、牛頭さんさん、馬頭さんにひとしきりリサーチし終わって帰る女子達。

「気をつけて帰れよ。......あ、しばらく透はこっち来ないかも」

「え、なんで?」

「親父さん、帰ってきてるから」

「そうなんだ~」

 ちょっとだけ残念そうに手を振って女子達は去っていった。

「お父さんがお戻りって......普段はお留守なんですか?」

馬頭さん。

「うん......」

 頷く俺。

 水本ん家は父子家庭だ。
 母親は病気で早くに亡くなって、父ひとり子ひとり。

 なんだけど、水本の父親は建設会社に勤めてて、現場監督で遠くの現場に泊まり込みのことも多い。
 家のお袋が水本の両親と幼なじみの同級生で仲良かったから、水本は幼い頃からよく家に来てた。
 水本の母親が亡くなってからは、親父さんが留守の間は、透はずっと家で面倒みてた。

「ま、兄弟みたいに育ったんだ」

「そうなんですね......」

 透は寂しいと言ったことは無いけれど、きっと寂しいんだと思う。助け出された篠原がお母さんに抱きしめられて泣きじゃくっていた時、じっと見てた。ちょっと軽口は叩いたけど、それからずっと黙ってた。

「ねぇ、牛頭さん.....」  

「ん?」

「お盆には地獄の釜の蓋が開くって本当?」

 俺の問いにふたりは一瞬、顔を見合わせる。

「ご先祖さんとか、亡くなった人が家に帰ってくる日なんでしょ?」

「あぁ、それは本当ですよ。みんな里帰りに行きますね。若い亡者は」

 馬頭さんいわく、まだお沙汰の済んでない人や地獄で修行中の人が帰ってくるんだって。

「まだ成仏できずにいる人だけですよ。成仏してたり、転生してる人は帰ってきません」

 なるほどねぇ......。

「透の母さんも帰ってくるのかな?」

と、馬頭さんがちょっと不思議な顔をする。

「傍にいるんですけどね」

「えっ?」

 馬頭さんによれば、水本の母親は小さな子どもを残して亡くなったので、閻魔大王さまの恩情で、息子の透が一人立ち出来るまで見守っているんだって。
 
「まぁ大王はんの裁量やけどな」

牛頭さんが、言う。

「じゃあ、会おうと思えば会えるの?」

牛頭さんと馬頭さんが、顔を見合わせる。冥府の取り決めで、簡単に姿を現してはいけないことになってるんだって。厳し過ぎない?

「会わせてやりたいんだ。会わせてやってくれないか?」

 俺の言葉に難しい顔をするふたり。分かってるんだけど、分かってるんだけどさ。

「まぁ、お盆の時期でしたら、大王さまもお許しくだされるかも。......鎮守さまの協力があれば、ですが」

「土地の氏神さまや。この辺やと天神さんか?」

「そうだね。お詣り行けばいいの?」

「そうですね......でも気難しい方ですからねぇ」

馬頭さん、溜め息。

...と庭先の方から、誰かの声。

「許す」

へ?......あれ?菅原先生。どしたの?

「小野も水本も友達想いだからな、今回は特別だ」

あの.......まさかと思いますが......菅原先生って......。

「菅原道真公、天神さまじゃ。分け御霊やけどな」

えぇーーーーーーっ?
でも、なんでうちの学校に?

「土地の若者を見守るのがワシの役目じゃ。夏祭りの日に水本と社に来るがいい」

 本当に真面目だね、菅原先生。
でも、有り難う。優しいとこあるんだ。


「その代わり、来学期から遅刻、夜遊び厳禁な。......試験は九十点目指せ」

 え、マジですか?
 風紀担当、そこにもってきますか!?

 あわあわする俺を尻目にさっさと帰っていく菅原先生てんじんさま

 
 でも、ホントうちの学校ってナニ?

    
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

処理中です...