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二 通小町
巡り合いて......(三)
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それより目下の俺の問題は、古典の小テスト。
今回は漢文てことで、いや~参りました。レ点なんて付いていたって、ちっとも読めません。
ここはもう、奥の手を使うしかない。
「清原~、ドーナツ奢るから、漢文教えて」
俺は恥も外聞もなく、教室の後ろで女子に手を合わせる。
相手は清原那岐子。
ウチのクラス委員長で、学年で一二を争うインテリ才女。
結構キツイことバンバン言うんだけど、陽気でさっぱりした性格で、結構、男子に人気がある。気さくな質で俺の成績もよく気にしてくれます。特に古典。
プチ小野崎でございます。
「小野君、自助努力してる?」
してるしてる、だからお願い、教えて。
「しょうがないわね......」
ふうっとため息つきながら、栗色のふんわりウェーブの髪を揺らして頷いてくれた。ありがたし。
とりあえず水本もバスケの練習、本格的にヘビーになってきているらしいので、放課後、水本の練習が終わるまで、小テストまで清原に漢文の特訓をしてもらうことになった。
ちなみに清原は文芸部で、自分でエッセイとか評論なんか書いて、有名サイトに投稿していて、結構人気らしい。
令和の清少納言て言われてるらしい。たぶん、まんまだろうけど。
ついでに......
ウチの高校の文芸部にはもうひとり人気web作家がいる。
名前は、色部紫。
清原とは真逆でストレートの黒髪ロングのお姫様ふうな容姿で、大長編の恋愛小説を書いているらしい。うん、女子っぽいね....と思ってサイト覗いてみたらB がL する方の小説だった。ひえぇ。
でも結構、熱烈なファンがいるらしい。
『え、だって需要大きいのよ。大河ロマン書きたいんだもん』
さようでございますか。でも、どやって女子がB 同士の恋愛を妄想すんの?
『大丈夫、モデルはコマチ君と水本君だから、ネタには困らない』
やーめーろー!!
この二人が、以前は千年昔からライバルやってたとしか思えないくらい仲悪かった。
仲悪いんだけど、意識し合ってて、たまに最強タッグ組むんだよね。特に文学方面。
男子とかが迂闊に古典文学バカにしようもんなら、二人がかりで言い込められて、土下座させられた奴もいる。
そりゃ才女ふたりにタッグ組まれたら、敵うわけないわな。
そして賢い俺は大人しく下手に出ることにしたのです。女子コワイ。
こいつら、お互いに辛辣に批判し合っているわりには互いにちょっかい出さずにはおれないらしくて、毎日、口喧嘩してた。で、つい言っちゃったんだよね......。
『あのさ、昔はともかく、今世はしがらみとか無いんだから、仲良くすれば?お互い才能あるんだからさ』
ふたりとも、一瞬、変な顔をしてたけど、まぁね。
ずっと昔からライバル同士だったのかもしれないし、色々あるけど、やっぱり今は今じゃん?
休み明け早々の俺の爆弾発言により......こいつら、すげぇ仲良くなりました。
んでもって、俺は二人がかりでご指導していただく破目になりました。アリガトウゴザイマス(棒読み)
「そう言えばさ.......」
この二人もなんか、転入生、深草陸海のことがなんとなく気になるらしい。他の女子と違う意味で。
今日もふたりして、俺の漢文のご指導してくれつつ、のたまう。
「やっぱ、水本君の心配は正しいかもしれない」
と清原。
「うん。視線がやっぱり小野君、見てるよね」
色部、それ気のせいだから。
「もしかしたら、小野君、ストーカーされてない?」
無い無い。なんで男が男にストーカーされなあかんのよ。
「噂をすれば......じゃない?」
教室の窓から外を覗いた清原が色部を突っつく。ふっと窓の外を見ると、校庭の木の陰からこちらを窺う目線。.......女子じゃない。背高い。いやいやいや、気のせい、気のせい。
ニンマリと顔を見合せる女子ふたり。気のせいだから、錯覚だから。
いきなり真顔になるしきべ。お前、和風美人なんだから、真顔怖いよ。ホラーだよ、ほら笑って。
「う~ん、まぁあれは物語なはずだから、気のせいだと思うけど。コマチ君、三角関係はマズイよ」
俺は、コ・マ・ハ・ル!
三角関係?なんだそりゃ。
「コマチ君を巡ってシノギを削る水本君と深草君ってなんかエモくない?」
おいおい色部、それはお前の小説の世界だろ。俺と水本は親友。フツーにトモダチなの!
「滾るわね」
乗るな、清原。
俺たちをヤバいおかしな異世界に引きずり込むの止めてもらえます?この腐れ女子高生達。
頼むから、源氏物語的な普通の恋愛に萌えてて、お願い。
俺がタジタジしていると、ガラリと教室の戸が開き、そこに颯爽と現れる光源氏こと水本。
「あれ?水本君、部活終わったの?」
顔を見合せて、によによする女子ふたり。水本、お前、タイミング良すぎ。
「おぅ。コマチ帰ろうぜ!」
「お、おぅ」
なんか期待してる眼の女子ふたりの目の前、俺の鞄をさりげなく手に取る水本。
「奢るからマック食って帰ろうぜ、コマチ」
水本、鞄、持ってくれなくても大丈夫だから。付き合うから。
腐才女ふたりが目ぇキラキラさせてるじゃんか。
「尊い......」
ってお嬢さん達、目線がヤバいです。
わかった、シェイク奢るから。俺たちで妄想しないで、お願い。
めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな
(紫式部 百人一首第57番『新古今集』雑上・1499)
今回は漢文てことで、いや~参りました。レ点なんて付いていたって、ちっとも読めません。
ここはもう、奥の手を使うしかない。
「清原~、ドーナツ奢るから、漢文教えて」
俺は恥も外聞もなく、教室の後ろで女子に手を合わせる。
相手は清原那岐子。
ウチのクラス委員長で、学年で一二を争うインテリ才女。
結構キツイことバンバン言うんだけど、陽気でさっぱりした性格で、結構、男子に人気がある。気さくな質で俺の成績もよく気にしてくれます。特に古典。
プチ小野崎でございます。
「小野君、自助努力してる?」
してるしてる、だからお願い、教えて。
「しょうがないわね......」
ふうっとため息つきながら、栗色のふんわりウェーブの髪を揺らして頷いてくれた。ありがたし。
とりあえず水本もバスケの練習、本格的にヘビーになってきているらしいので、放課後、水本の練習が終わるまで、小テストまで清原に漢文の特訓をしてもらうことになった。
ちなみに清原は文芸部で、自分でエッセイとか評論なんか書いて、有名サイトに投稿していて、結構人気らしい。
令和の清少納言て言われてるらしい。たぶん、まんまだろうけど。
ついでに......
ウチの高校の文芸部にはもうひとり人気web作家がいる。
名前は、色部紫。
清原とは真逆でストレートの黒髪ロングのお姫様ふうな容姿で、大長編の恋愛小説を書いているらしい。うん、女子っぽいね....と思ってサイト覗いてみたらB がL する方の小説だった。ひえぇ。
でも結構、熱烈なファンがいるらしい。
『え、だって需要大きいのよ。大河ロマン書きたいんだもん』
さようでございますか。でも、どやって女子がB 同士の恋愛を妄想すんの?
『大丈夫、モデルはコマチ君と水本君だから、ネタには困らない』
やーめーろー!!
この二人が、以前は千年昔からライバルやってたとしか思えないくらい仲悪かった。
仲悪いんだけど、意識し合ってて、たまに最強タッグ組むんだよね。特に文学方面。
男子とかが迂闊に古典文学バカにしようもんなら、二人がかりで言い込められて、土下座させられた奴もいる。
そりゃ才女ふたりにタッグ組まれたら、敵うわけないわな。
そして賢い俺は大人しく下手に出ることにしたのです。女子コワイ。
こいつら、お互いに辛辣に批判し合っているわりには互いにちょっかい出さずにはおれないらしくて、毎日、口喧嘩してた。で、つい言っちゃったんだよね......。
『あのさ、昔はともかく、今世はしがらみとか無いんだから、仲良くすれば?お互い才能あるんだからさ』
ふたりとも、一瞬、変な顔をしてたけど、まぁね。
ずっと昔からライバル同士だったのかもしれないし、色々あるけど、やっぱり今は今じゃん?
休み明け早々の俺の爆弾発言により......こいつら、すげぇ仲良くなりました。
んでもって、俺は二人がかりでご指導していただく破目になりました。アリガトウゴザイマス(棒読み)
「そう言えばさ.......」
この二人もなんか、転入生、深草陸海のことがなんとなく気になるらしい。他の女子と違う意味で。
今日もふたりして、俺の漢文のご指導してくれつつ、のたまう。
「やっぱ、水本君の心配は正しいかもしれない」
と清原。
「うん。視線がやっぱり小野君、見てるよね」
色部、それ気のせいだから。
「もしかしたら、小野君、ストーカーされてない?」
無い無い。なんで男が男にストーカーされなあかんのよ。
「噂をすれば......じゃない?」
教室の窓から外を覗いた清原が色部を突っつく。ふっと窓の外を見ると、校庭の木の陰からこちらを窺う目線。.......女子じゃない。背高い。いやいやいや、気のせい、気のせい。
ニンマリと顔を見合せる女子ふたり。気のせいだから、錯覚だから。
いきなり真顔になるしきべ。お前、和風美人なんだから、真顔怖いよ。ホラーだよ、ほら笑って。
「う~ん、まぁあれは物語なはずだから、気のせいだと思うけど。コマチ君、三角関係はマズイよ」
俺は、コ・マ・ハ・ル!
三角関係?なんだそりゃ。
「コマチ君を巡ってシノギを削る水本君と深草君ってなんかエモくない?」
おいおい色部、それはお前の小説の世界だろ。俺と水本は親友。フツーにトモダチなの!
「滾るわね」
乗るな、清原。
俺たちをヤバいおかしな異世界に引きずり込むの止めてもらえます?この腐れ女子高生達。
頼むから、源氏物語的な普通の恋愛に萌えてて、お願い。
俺がタジタジしていると、ガラリと教室の戸が開き、そこに颯爽と現れる光源氏こと水本。
「あれ?水本君、部活終わったの?」
顔を見合せて、によによする女子ふたり。水本、お前、タイミング良すぎ。
「おぅ。コマチ帰ろうぜ!」
「お、おぅ」
なんか期待してる眼の女子ふたりの目の前、俺の鞄をさりげなく手に取る水本。
「奢るからマック食って帰ろうぜ、コマチ」
水本、鞄、持ってくれなくても大丈夫だから。付き合うから。
腐才女ふたりが目ぇキラキラさせてるじゃんか。
「尊い......」
ってお嬢さん達、目線がヤバいです。
わかった、シェイク奢るから。俺たちで妄想しないで、お願い。
めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな
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