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三 追録~花の色は~
花の色は....
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そして、俺たちは冬を迎え、怒涛の受験生活に突入した。
牛頭さん、馬頭さんはじいちゃんが帰ってくるまで、という約束だったから、来年の春には地獄に帰らなきゃならないという。
『俺たちがいないとサボる奴もいるんや』
と牛頭さん。管理職だったんだ。ごめんね。
『いいんですよ、楽しかったから』
馬頭さんが、微笑む。
俺と水本はじいちゃん達が帰るまで、じいちゃんの家で、牛頭さん達と受験勉強に勤しんだ。
時々、色部&清原ペアも、菅生達も、教科書と差し入れを持ってやってきた。
でもさ、色部も清原も勉強じゃなくて原稿を書いてるんだよね。家だと背後がヤバいんだって。おいっ!
色部は今、和風ファンタジーなB がL する小説に挑戦しているらしい。
頼むからモデルにはしないでね。
そうそう、時々、深草くんも来る。
帰国子女の割には出来るけど、やっぱり歴史と古文は苦手らしい。
水本は、ちょっと嫌な顔をしながら、でも話し始めると滔々と語る。
そんなに関ヶ原を語ってもそこまで詳細には出ないと思うぞ。
その代わり、俺たちは深草くんから英語を習った。
三才から外国にいたから、発音もネイティブ。しかもドイツ語もフランス語も話せるんだって。すげぇ。卒業したらアメリカの大学に留学するんだって。
『父さんや母さんが待ってるから』
はにかみながら笑う顔は、本当に明るかった。
実はその年のクリスマスに、みんなでじいちゃんの家でパーティーした。
その時に、深草くんがこっそり打ち明けてくれた。
『今まで、雪が降るとすごい辛かった。理由はわからないけど、すごく哀しくて苦しくなって、さ。......でも、今年は全然、平気なんだ』
ーごめんな、深草くんー
俺は心のなかでこっそり手を合わせた。
でも、自分に深草陸海に戻れて、本当に良かった。
高校三年になって、みんな進路が決まっていった。
清原はジャーナリストになりたいからって法学部を目指して猛勉強。
色部は小説が書籍化されて、かなりのヒットになったけど、古典を勉強するために有名大学の文学部の推薦をもらった。
『絶対、源氏物語を超える作品を書いてみせる!』って。
頑張れ!
翌年の春......。
頑張った甲斐があって、水本と俺は陸奥の国、杜の都の国立大になんとか合格。
水本は建築学科に、俺は物理工学科に進んだ。
あの三ッ鳥居の謎をいつか科学的に解明したくなったんだ。
俺たちの卒業と同時に小野崎先生は退職。平野先生も故郷に帰った。
菅原先生は、学校に残って、副校長になった。
『困ったことがあったら、いつでも相談しなさい』
って、笑顔で送り出してくれた。
そして......
俺は今、水本とシェアハウスしてる。
松尾のじいちゃんの知り合いの家で、庭付きの広い一戸建て。家族に人が東京に行ってしまって空き家になったんだって。
借り受けた本人の松尾のじいちゃんは時々、ふらっと帰ってくる。
俺の親父や水本の親父が休みに泊まりに来ることもある。
お袋は来るたびに『むさ苦しい!』って頭を抱えるけど、それなりに結構楽しくやってる。
あの頃は、本当に色々あって、ありすぎて、未だに夢のような気がしてる。
あれからちょっとあったけど、大変な事にはならず
に済んだ。
一番の事件は、空港に見送りに行った深草くんに告られたこと。
『僕、本当は小野くんが好きだったんだけど、水本くんには勝てないから、諦めた』
俺はまだ少将がいるのかと思って青くなった。
けど、後日、アメリカから送ってきたパートナーとのラブラブな写真の相手も男だったから、たぶん素なんだろうな。う~ん......。
しばらくなんだか知らないけど荒れていた水本もその写真を見て落ち着いた。
なんなの?お前たち。
今は時々、政宗さまが酒の相手をしろって呼びに来るけど、あとは平和だ。
今のところは......ね。
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせし間に
(小野小町 百人一首 第9番)
牛頭さん、馬頭さんはじいちゃんが帰ってくるまで、という約束だったから、来年の春には地獄に帰らなきゃならないという。
『俺たちがいないとサボる奴もいるんや』
と牛頭さん。管理職だったんだ。ごめんね。
『いいんですよ、楽しかったから』
馬頭さんが、微笑む。
俺と水本はじいちゃん達が帰るまで、じいちゃんの家で、牛頭さん達と受験勉強に勤しんだ。
時々、色部&清原ペアも、菅生達も、教科書と差し入れを持ってやってきた。
でもさ、色部も清原も勉強じゃなくて原稿を書いてるんだよね。家だと背後がヤバいんだって。おいっ!
色部は今、和風ファンタジーなB がL する小説に挑戦しているらしい。
頼むからモデルにはしないでね。
そうそう、時々、深草くんも来る。
帰国子女の割には出来るけど、やっぱり歴史と古文は苦手らしい。
水本は、ちょっと嫌な顔をしながら、でも話し始めると滔々と語る。
そんなに関ヶ原を語ってもそこまで詳細には出ないと思うぞ。
その代わり、俺たちは深草くんから英語を習った。
三才から外国にいたから、発音もネイティブ。しかもドイツ語もフランス語も話せるんだって。すげぇ。卒業したらアメリカの大学に留学するんだって。
『父さんや母さんが待ってるから』
はにかみながら笑う顔は、本当に明るかった。
実はその年のクリスマスに、みんなでじいちゃんの家でパーティーした。
その時に、深草くんがこっそり打ち明けてくれた。
『今まで、雪が降るとすごい辛かった。理由はわからないけど、すごく哀しくて苦しくなって、さ。......でも、今年は全然、平気なんだ』
ーごめんな、深草くんー
俺は心のなかでこっそり手を合わせた。
でも、自分に深草陸海に戻れて、本当に良かった。
高校三年になって、みんな進路が決まっていった。
清原はジャーナリストになりたいからって法学部を目指して猛勉強。
色部は小説が書籍化されて、かなりのヒットになったけど、古典を勉強するために有名大学の文学部の推薦をもらった。
『絶対、源氏物語を超える作品を書いてみせる!』って。
頑張れ!
翌年の春......。
頑張った甲斐があって、水本と俺は陸奥の国、杜の都の国立大になんとか合格。
水本は建築学科に、俺は物理工学科に進んだ。
あの三ッ鳥居の謎をいつか科学的に解明したくなったんだ。
俺たちの卒業と同時に小野崎先生は退職。平野先生も故郷に帰った。
菅原先生は、学校に残って、副校長になった。
『困ったことがあったら、いつでも相談しなさい』
って、笑顔で送り出してくれた。
そして......
俺は今、水本とシェアハウスしてる。
松尾のじいちゃんの知り合いの家で、庭付きの広い一戸建て。家族に人が東京に行ってしまって空き家になったんだって。
借り受けた本人の松尾のじいちゃんは時々、ふらっと帰ってくる。
俺の親父や水本の親父が休みに泊まりに来ることもある。
お袋は来るたびに『むさ苦しい!』って頭を抱えるけど、それなりに結構楽しくやってる。
あの頃は、本当に色々あって、ありすぎて、未だに夢のような気がしてる。
あれからちょっとあったけど、大変な事にはならず
に済んだ。
一番の事件は、空港に見送りに行った深草くんに告られたこと。
『僕、本当は小野くんが好きだったんだけど、水本くんには勝てないから、諦めた』
俺はまだ少将がいるのかと思って青くなった。
けど、後日、アメリカから送ってきたパートナーとのラブラブな写真の相手も男だったから、たぶん素なんだろうな。う~ん......。
しばらくなんだか知らないけど荒れていた水本もその写真を見て落ち着いた。
なんなの?お前たち。
今は時々、政宗さまが酒の相手をしろって呼びに来るけど、あとは平和だ。
今のところは......ね。
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせし間に
(小野小町 百人一首 第9番)
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ありがとうございます~(*^^*)
これは読みやすい♪
そして登場人物達の名前も面白い♪♪
話の後の和歌 これはいい♪
小野篁の逸話は小説やコミックにちょいちょい書かれてるので どうかなぁ~とは思いましたが
取っ掛かりに使うとは(笑)
さてさて どうなるものか
楽しみに読んでいきましょ♪♪♪♪
お読みいただきありがとうございます(*^^*)
和歌と歴史と観光案内ごた混ぜて、お話は進みます。
よろしくお願いいたしますm(_ _)m