遺影

五

　後日、ハツさんの娘さんから手紙が届いた。
　葬儀の礼と、『ある事実』が記されていた。
　それは......






　よしえさんは若い頃、ハツさんのご主人と不倫の関係にあった。実の叔父と姪の許されざる関係はすぐに露見し、ハツさんのご主人は、舅夫婦(ハツさんの両親、よしえさんの祖父母)に激しく責められ......耐えきれずに、自殺した。

　ハツさんはその時、妊娠中だったが、ショックで流産した。男の子だった.....という。

　一方のよしえさんは、何事も無かったように、その後すぐに持ち込まれた見合いの相手と結婚し、すぐに離婚したそうだ。
　原因はよしえさんの浮気だった。よしえさんは男癖が悪く、ハツさんの旦那さんに関係を迫ったのも、よしえさんの方だったという。

ー父は入り婿だったので、一切の釈明を聞き入れてもらえませんでしたー

　幾度も離婚を繰り返しながら、資産家の実家の財産でのうのうと暮らしているよしえさんにハツさんは激しく憤っていたという。

ー母は、父の死後は実家と縁を切って、苦労して働きながら私を育ててくれましたー

　迂闊に姪の誘惑に負けたとはいえ、ハツさんは旦那さんを愛していた。だから再婚もしなかった、と手紙には綴られていた。

ーだから、あの写真によしえさんが写っているはずは無いんです。あの写真は、亡くなった父の法事の時に撮ったのですから.......ー　

　そして、よしえさんをハツさんの葬儀に呼んだのは、自分だ、と。
　ハツさんの遺言だった......と締めくくられていた。


　俺は手紙を持つ手が震えるのを止められなかった。





　
　恐ろしくなった俺は、あの写真担当者の同僚に事の顛末を話した。
　すると、奴は事も無げに言ったのだ。

「幽霊の復讐だって？......そんな事、別に珍しくねぇよ」






　そして俺は仕事を辞めた。






ー了ー