1 / 9
本編
初恋
しおりを挟む
毎月24日は僕の覚悟の日だ。
僕は高校一年の5月から毎月24日になるとクラスメートの寺田絋を校舎裏へ誘う。
「寺田絋くん、好きです。僕と付き合ってください。」
毎月の告白に慣れることがない。
「あー悪い。」
苦笑いで断られることは分かっていたけど、これにも慣れることはない。
僕が絋を好きになったのは入学して少し経った5月だ。彼はイケメン高身長性格も物優しげながら男らしさもある、まさに完璧な男だ。入学式でも目立っていたし、もう先輩たちに目をつけられて告白された、なんて噂も聞いた。
初めはなんだか住む世界の違う子だな。なんて深く考えていなかったんだけど、なんでか好きになってしまった。
僕なんかが。
「三倉?この教室テニス部が使うらしいから残るなら隣の教室いった方がいいぞ。」
入学して数週間。生粋の陰キャであり愛想笑いもできない僕は教室から少し浮いていて、彼に名前を覚えてもらえていたことに驚いた。
「あ、ありがとう。」
急いで荷物をつめて帰り支度を始める。彼はなぜか僕の前の机に腰を掛けていた。
「三倉って部活とか決めた?」
「いや、まだだけど。」
まだ話しかけられると思ってなかった僕の声はたぶん震えていたと思う。
「そっかー。運動部?」
「厳しそうなのはちょっと。」
「ふーん。俺はテニスかサッカー。やっぱり王道なのはここだよな。」
入学して初日に学校のアイドル的存在となった彼と話をしている事実に心臓がどきどきしてしまってまともに返事を考えられない。
荷物をまとめて教室を出ると彼も後ろからついてきていたみたいでいつの間にか隣に並んでいた。
「へー。三倉、少し俺より身長大きいのな。」
頭をぽんぽんされ混乱する。コミュ力おばけはこうも距離感が近いのか!
それからなぜか僕たちは一緒に駅まで帰り一緒の電車に乗ったが記憶は全くない。
あるのは未だに激しくなりやまぬ心臓とこんな僕にも気を遣ってくれた寺田絋に対する好感度だけだ。
あれから何度も寺田は声をかけてくれて、お陰でクラスメートともどうにか話せるようになった。
まあ基本ぼっちだけど。
「三倉ってさ、彼女とかいねーの?」
「いない。」
いつも少し考えて発言するけど、このときばかりは即答で答えてしまった。僕に彼女ができるなんて天地がひっくり返ってもありえるのだろうか。
「欲しいとかないわけ?」
「欲しくはある。」
「へー。タイプは?」
「…タイプ?」
「あるだろ?綺麗とか可愛いとかさ。」
今までそういうことに無頓着というか、別次元だと考えていたからタイプなんて想像したこともなかった。改めて問われると返答に困る。
「笑顔が可愛いとか、ロングとかボブとか。身長とか!」
「身長は僕より低い方が可愛いと思う。でもあんまり容姿では選ばないかな。」
そもそも選べる立場じゃないし。
「お、俺だって別に顔で選んでるわけじゃねーよ。」
「でも笑顔が可愛いこは素敵だと思うよ。僕の隣にいて笑っていてくれるって大切なことだと思う。」
「そ、そうだよな!うんうん。それと?」
それと、か。
優しければ優しいだけいいよな。僕に話しかけてくれるだけで優しさの権化だ。悪口を言わないとか、金をせびらないとか、罰ゲームで告白とかする子もあまり好きではないかもしれない。
「…道徳心があるこ?」
寺田絋みたいに僕に気を遣って話しかけてくれるのに気を遣わせないとか、すごく素敵だし。なにより誰に対しても平等で優しい。よく荷物運びとか手伝っているのもみる度に感心する。
「皆が困ってるとき、率先しているところは特にカッコいいと…」
…あれ、まって?
僕は頭に浮かんだ想像に頭が沸騰するんじゃないかと思うくらい熱くなるのを感じた。
「ど、どうした三倉。」
寺田絋も心配するくらいに。
「僕」
寺田絋を見ると驚いた顔をして僕をみている。
あ、ダメだ、言っちゃう。
「君のことが好きかも。」
このとき、教室中のクラスメートが一気に悲鳴をあげたことで僕は白昼堂々教室のど真ん中で彼に告白してしまったことに気がついた。
僕は高校一年の5月から毎月24日になるとクラスメートの寺田絋を校舎裏へ誘う。
「寺田絋くん、好きです。僕と付き合ってください。」
毎月の告白に慣れることがない。
「あー悪い。」
苦笑いで断られることは分かっていたけど、これにも慣れることはない。
僕が絋を好きになったのは入学して少し経った5月だ。彼はイケメン高身長性格も物優しげながら男らしさもある、まさに完璧な男だ。入学式でも目立っていたし、もう先輩たちに目をつけられて告白された、なんて噂も聞いた。
初めはなんだか住む世界の違う子だな。なんて深く考えていなかったんだけど、なんでか好きになってしまった。
僕なんかが。
「三倉?この教室テニス部が使うらしいから残るなら隣の教室いった方がいいぞ。」
入学して数週間。生粋の陰キャであり愛想笑いもできない僕は教室から少し浮いていて、彼に名前を覚えてもらえていたことに驚いた。
「あ、ありがとう。」
急いで荷物をつめて帰り支度を始める。彼はなぜか僕の前の机に腰を掛けていた。
「三倉って部活とか決めた?」
「いや、まだだけど。」
まだ話しかけられると思ってなかった僕の声はたぶん震えていたと思う。
「そっかー。運動部?」
「厳しそうなのはちょっと。」
「ふーん。俺はテニスかサッカー。やっぱり王道なのはここだよな。」
入学して初日に学校のアイドル的存在となった彼と話をしている事実に心臓がどきどきしてしまってまともに返事を考えられない。
荷物をまとめて教室を出ると彼も後ろからついてきていたみたいでいつの間にか隣に並んでいた。
「へー。三倉、少し俺より身長大きいのな。」
頭をぽんぽんされ混乱する。コミュ力おばけはこうも距離感が近いのか!
それからなぜか僕たちは一緒に駅まで帰り一緒の電車に乗ったが記憶は全くない。
あるのは未だに激しくなりやまぬ心臓とこんな僕にも気を遣ってくれた寺田絋に対する好感度だけだ。
あれから何度も寺田は声をかけてくれて、お陰でクラスメートともどうにか話せるようになった。
まあ基本ぼっちだけど。
「三倉ってさ、彼女とかいねーの?」
「いない。」
いつも少し考えて発言するけど、このときばかりは即答で答えてしまった。僕に彼女ができるなんて天地がひっくり返ってもありえるのだろうか。
「欲しいとかないわけ?」
「欲しくはある。」
「へー。タイプは?」
「…タイプ?」
「あるだろ?綺麗とか可愛いとかさ。」
今までそういうことに無頓着というか、別次元だと考えていたからタイプなんて想像したこともなかった。改めて問われると返答に困る。
「笑顔が可愛いとか、ロングとかボブとか。身長とか!」
「身長は僕より低い方が可愛いと思う。でもあんまり容姿では選ばないかな。」
そもそも選べる立場じゃないし。
「お、俺だって別に顔で選んでるわけじゃねーよ。」
「でも笑顔が可愛いこは素敵だと思うよ。僕の隣にいて笑っていてくれるって大切なことだと思う。」
「そ、そうだよな!うんうん。それと?」
それと、か。
優しければ優しいだけいいよな。僕に話しかけてくれるだけで優しさの権化だ。悪口を言わないとか、金をせびらないとか、罰ゲームで告白とかする子もあまり好きではないかもしれない。
「…道徳心があるこ?」
寺田絋みたいに僕に気を遣って話しかけてくれるのに気を遣わせないとか、すごく素敵だし。なにより誰に対しても平等で優しい。よく荷物運びとか手伝っているのもみる度に感心する。
「皆が困ってるとき、率先しているところは特にカッコいいと…」
…あれ、まって?
僕は頭に浮かんだ想像に頭が沸騰するんじゃないかと思うくらい熱くなるのを感じた。
「ど、どうした三倉。」
寺田絋も心配するくらいに。
「僕」
寺田絋を見ると驚いた顔をして僕をみている。
あ、ダメだ、言っちゃう。
「君のことが好きかも。」
このとき、教室中のクラスメートが一気に悲鳴をあげたことで僕は白昼堂々教室のど真ん中で彼に告白してしまったことに気がついた。
116
あなたにおすすめの小説
ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
《完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
美澄の顔には抗えない。
米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け
高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。
※なろう、カクヨムでも掲載中です。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?
綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。
湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。
そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。
その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる