当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき

文字の大きさ
5 / 9
本編 (紘目線)

面白くない

しおりを挟む
初めの印象は、面白くない奴だった。
クラスで一番モテるのは俺なはずなのに、クラスに何故か三倉莉緒派がちらほらいることを知った。
クールで大人とか女子と積極的に話さないのがいいとかなんとか。
俺が努力してモテようとしてるっていうのに、あいつは座っているだけで好感度が上がっていく。
面白くない。
実に面白くない。
なんで重い荷物をもってやったり黒板代わりに消したりクラス委員長に立候補したりしたと思ってるんだ。
親切心?否!全てモテのためだ!
なのにあいつときたら頬杖をついて髪が靡くだけできゃーきゃー言われやがって!
腹が立つ!
あの透かした野郎の弱味、弱点ないしは不名誉を露にしないと気が済まない!絶対に負かしてみせる!
三倉が放課後に1人で教室に滞在するのは知っていた。情報収集するにはもってこいだ。
「三倉?この教室テニス部が使うらしいから残るなら隣の教室いった方がいいぞ。」
声をかけると三倉は無表情で俺を見ていた。
「ありがとう。」
三倉はゆったり荷物を鞄にしまう。
この落ち着きようがクールと言われる所以か。
「三倉って部活とか決めた?」
「いや、まだだけど。」
「そっかー。運動部?」
「厳しそうなのはちょっと。」
「ふーん。俺はテニスかサッカー。やっぱり王道なのはここだよな。」
絶対に運動神経では負けないからな。
そう決意を燃やし三倉についていく。
こいつ、立つまで分からなかったけど俺よりも身長が高いだと!?
「へー。三倉、少し俺より身長大きいのな。」
三倉の頭を押して縮めと呪いをかける。
帰り道も話し続けたけど、三倉は口数が少ないから弱味なんて吐いてくれなかったし身長も俺より高いままだった。
口数が少ないクールキャラなんて滅びればいいのに。


三倉はグループに属さず1人でいることが多い。一匹狼キャラか?一丁前にキャラ付けしやがって。
そんな三倉のモテ度を下げるため、俺は三倉に話しかけに行く。最近は俺に懐いたようで、少し口数が増えた。別に、それが嬉しいからって話しているわけではない。俺が一番にモテるために話しかけているんだ。
「三倉ってさ、彼女とかいねーの?」
「いない。」
即答された。いたら人気半減したのに。作戦一は失敗だ。だがここで終わる俺ではない。
「欲しいとかないわけ?」
「欲しくはある。」
「へー。タイプは?」
「…タイプ?」
「あるだろ?綺麗とか可愛いとかさ。」
特定のタイプをあぶり出すことで聞いてる人に具体的な人物像を想像させ「そういう子が好きなんだ。」と三倉への恋を諦めさせる!
「笑顔が可愛いとか、ロングとかボブとか。身長とか!」
女子は髪型とか煩いからな。具体的な例を挙げれば挙げるほど「そんなこと言える外見してるの?」とか「お前のために髪型決めてねえよ。」という具合に非モテポイントが加算されていくんだ。さあ三倉、俺の作為に嵌まれ!
「身長は僕より低い方が可愛いと思う。でもあんまり容姿では選ばないかな。」
「お、俺だって別に顔で選んでるわけじゃね~よ。」
今でこんな解答をした高校生がいただろうか。そもそも三倉より背の大きな女子見たことない。それにこれじゃあ具体例を出した俺の方が容姿に拘ってるみたいじゃないか。
「でも笑顔が可愛いこは素敵だと思うよ。僕の隣にいて笑っていてくれるって大切なことだと思う。」
嘘だろ!?お前は本当に高校生なのか?
完璧な解答を前に俺は頷くしかなかった。
「そ、そうだよな!うんうん。それと?」
「…道徳心があるこ?」
無いって言う奴の方が少ないだろ!さては三倉、お前もモテようとしてるんだな?そうじゃなきゃこんな完璧な解答を用意してないはず。まさか俺が嵌められたのか?完全に三倉のペースだし、三倉への好感度はうなぎ登りじゃないか!
「皆が困ってるとき、率先しているところは特にカッコいいと…」
いきなり具体的になった三倉。くっ。これ以上どんな正解を導きだすんだ!
「ど、どうした三倉。」
「僕」
何故かそこで言葉を区切り俺を見つめる三倉。初めて見る無表情以外の顔に目が離せなくて、次に三倉から発せられた言葉の理解に苦しんだ。
「君のことが好きかも。」
…いったいそれは、どういうモテテクなんだ?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

《完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ

MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 続編執筆中

美澄の顔には抗えない。

米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け 高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。 ※なろう、カクヨムでも掲載中です。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?

綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。 湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。 そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。 その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。

処理中です...