4 / 9
本編
幸福
しおりを挟む初めて学校を休んだ。
昨日のことがよっぽどショックだったのか、はたまたタイミングが重なったのか風邪を引いた。
あーあ。絶対絋に引かれたな。
まだ諦めてないのかよって、
しつこすぎるって、
男のくせに手作りバレンタインかよって、
手紙多すぎだろって。
全部捨ててきちゃったな。
頑張って作ったんだけどな。
最近は睨んだ顔ばかりしているから、ちょっとでも笑顔がみられたらと思ったんだけど。
そんなことを考えながらベットで横たわる。
諦めるって言ってるのに、絋のことばっか考えちゃう。でも絋怒ってた。気持ち悪いって。
どうすればいいかな。
嫌われたんだろうな。
じわじわ出てくる涙は熱のせいであって欲しい。
もうわからない。
結局1週間も休んでしまった。
学校に行きずらい。
教室で泣いてしまったし、皆と顔を合わせるの恥ずかしいな。教室に入りずらくて扉の前で狼狽えてしまう。弱いな、僕。
深呼吸して教室に入ってすぐ席に座った。
よかったよかった。
「三倉。」
顔があげられなかった。
「今日、放課後。話したい。校舎裏で待ってるから、来れたらきて。」
絋はそれだけ言って、席に帰っていった。
もう教室に夕陽が入ってきている。
僕は一歩も動けなかった。
折角絋が話をしようって言ってくれたのに。
息がしづらくて肺に十分な酸素が送られてない気がする。足はすくむし、立とうとするとくらくらする。
もう一時間もたってる。絋、帰っちゃったかも。でも絋の荷物、まだ教室にある。
あ、スマホ。
震えながら絋に電話をかける。
「もしもし、三倉?」
出た、絋だ。
「絋、あの、寒い?」
「スッゴい寒い。風邪引きそう。」
「ごめん、行こうと思ってるんだけど、なんか
足動かなくて。ごめん。」
「んーん。そうだよな。俺のこと怖いよな。」
「そうじゃなくて!…嫌われるのが、怖い。」
「お前、まだ俺のこと好きなわけ?」
「うん、ごめん。」
そういえば、今日は24日だ。
「絋が好き。だから、もう忘れたい。」
「自分勝手だな。」
「自分でもそう思う。」
「なんで告白やめたわけ?」
「…クリスマス」
「…うん。」
「絋が誰かと過ごすかもって考えたら限界がきちゃって。」
目にハンカチを当てて涙を押さえる。
「絋が誰かと付き合うって考えたら怖かった。嫌だったから。もう、やめたかった。嫉妬しちゃいけないのに嫉妬するのも、皆に頑張れって応援されるのも、嫌だった。もう傷つきたくなかったから、好きじゃなくなったらいいのにって。」
「でも、まだ好きなの?」
「好き。もうどうしていいのか分からない。」
「三倉。」
スマホを取り上げられた。目の前から声がする。
「チョコ投げてごめん。手紙、破ってごめん。」
「ううん、いいんだ。僕もあげようか迷ってたものだから。」
「それでも、ごめんなさい。俺、子どもみたいに嫉妬した。三倉がもう俺のこと好きじゃなくて、恋人からのチョコもらって大切にしてるって思って。」
絋は僕の背中を撫でて話してくれる。
「手紙読んだ。あんなに一生懸命書いてくれたもの破くなんて、最低だ。」
「勝手に、書いたから、」
「ううん。本当にごめん。あと返事、書いてきた。」
返事?返事って、あのビリビリに破られた手紙の?
机の上に封筒がおかれた。
絋が前の椅子に座ったから、手紙を開けて読んでみる。
「…ほんと?」
「うん。」
「本当に?」
「本当に。」
「なんで…?」
手紙にはバレンタインの謝罪と絋の気持ちが書いてあった。
「三倉が俺のことを好きって言ってくれて自惚れてた。毎月24日には告白してくれるし、そのあとは遊びに行けると思ってた。でも、最後の告白だったって聞いて、早く返事しておけばよかったって、すごい後悔した。」
絋は手紙を読むのではなく、自分の言葉を伝えてくれる。
「イブに三倉が告白してくれて、クリスマスには二人でケーキ食べて、正月は神社とかいってとか考えてた。本当に浮かれてた。俺の気持ち伝えないで、三倉に辛い思いさせてたことに気がつかなかった。三倉の思いが変わらないなんて保証ないこと思いもつかなかった。」
絋は箱を差し出してきた。ハッピークリスマスって書かれている。
「いまさら、本当に遅いのは分かってるけど。…三倉が好きです。あんなことした俺がおかしいと思うかもしれないけど、好きです。もう一度、好きになって欲しい。2度とあんな、傷つけることしないから。好きってちゃんと言葉で伝えるから。」
「う、うわぁ…」
嘘だって叫びたい。だって2年も、振り向いて貰えなかった。
「いや、だって、嘘」
「嘘じゃない。本当。」
「2年も、片想いだから。実らない恋だから。」
「気がないやつにクリスマスにケーキ屋予約しない。」
本当に?
絋の指を握ってみる。
「嫌じゃない?」
「うん。むしろ嬉しい。」
「ハグも?キスも?それ以上もするんだよ?」
「ばっ!お前は!」
顔を赤くしている絋は真剣な目で僕を見つめている。
「好きだから、そういうこともしたい。」
「僕と?」
「三倉と。」
「好きっていってもいい?」
「嬉しいから勿論。」
「好き、好きです。付き合ってください。」
「俺から告白したかったんだけどな。」
絋の顔がいきなり近くなって僕の唇をふさいだ。
「俺でよければ、お願いします。」
2年間心の中に溜まっていた思いが、体に熱が籠ると共に吹き出した気がした。
19回もの告白の結果は見事砕けていたのに、20回目の告白でキスして貰えるなんて夢でも見ているようだ。
「…夢じゃないからな?」
「はい。」
何故か僕の心を読んだ紘の目尻は赤くなっていた。それが分かるくらい近くに紘の顔があることが嬉しくて僕が笑えば、紘も笑っていた。
当たって砕けていたのに、告白20回目で紘は僕の彼氏になった。
146
あなたにおすすめの小説
ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
《完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
美澄の顔には抗えない。
米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け
高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。
※なろう、カクヨムでも掲載中です。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?
綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。
湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。
そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。
その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる