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本編
拒絶
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今日は1月24日。でも僕に何も予定がない。あれから絋とは話さなくなった。
たまにこちらを睨んでくる絋とは目が合うけど、それだけだ。
でも未だに絋の行動に惚れ直してしまうし、この調子じゃいつ彼に好きを感じなくなるか分からなくて怖い。コンビニにいけば彼の好きなお菓子やドリンクを買おうとしてしまうし、折角しまったマフラーを取り出してみたりもする。
好きってこんなに辛いことなんだな。
そして絋に告白しなくなってからはなぜか僕が告白されることが多くなった。皆一途な人が好きなのかもしれない。まだ僕は失恋から立ち直れていないので、本当に申し訳ないが断っているけど、これが世に言うモテ期か。
告白を受ける立場になって思ったのは、恋愛感情を持っていない子に告白されるのが案外辛いってこと。僕のなにが好きか分からないし、友達と一緒に告白に来られても反応に困るし、もじもじされるとこちらまで恥ずかしくなるし、断って涙を流されると本当に申し訳なくて何故かこちらが泣きたくなる。
そう言えば僕は絋にどこが好きとか具体的に言ったことはなかったし、もじもじしてしまうこともあった。
こういう反省のもと、何故か僕は絋にラブレターを書いてしまった。
数回書き直した5枚のラブレター。
彼が好きなチョコの季節。
最後って言ったのに、どうしても渡したくなる。
2月14日のバレンタインデー。
浮かれて料理本なんて買って作ったブラウニー。
甘いものが好きな彼が喜ぶかなって、中にキャラメルソースもいれた。
当然渡すタイミングもなく放課後になった教室で持ってきてしまったこれらを眺める。
ああ、どうしよう。
ホームルーム終わりの教室にはまだ人がたくさんいる。
手作りお菓子にラブレターとか、貰ったら迷惑だよね。しかも五枚も書いてさ。だから陰キャは嫌なんだ。
ブラウニーの包装紙を買うときに見つけたハートのシールなんてつけてしまった。取り返しのつかない代物だ。
「三倉くんっ、よかったらこれ、バレンタイのチョコなんだけど、受け取って貰えないかな?」
チョコを眺めていたら女の子が席にきて箱を差し出してきた。
「あ、ごめん、気持ちは嬉しいんだけど…」
ちらっと僕の作ったものをみる。
気持ちが入ったものを安易に受け取るなんて、今の僕にできそうにない。
「友チョコでもだめかな?これからおともだちになりたいです!」
「ありがとう。でもチョコは大丈夫。ごめんね。」
「でも、それは?貰ってるよね?」
彼女は机の上の袋を指した。僕の作ったものブラウニー。
「これは、特別なんだ。」
その袋はなぜか横から引ったくられた。
「ひ、ひろ?」
ハートのシールのついた封筒を袋から取り出して睨んでいる。と思ったら切られた。
五枚のラブレターは半分になって床に落ちる。
「なんだよ、女できたから俺はもう用済みってか!?」
彼の言う言葉を理解するより先に、ブラウニーも投げられる。キャラメルソースが床に転がって中の液体が漏れていた。
「チョコなんかに浮かれてバカみたいな顔しやがって!何がチョコは大丈夫だよ!うけとってんじゃねえか!」
目の前で起きたことを呆然と見ながらも、絋の足元に落ちた紙切れを集める。あ、折角書いたのに。何度も用紙が足りなくなって買い足して、ようやく納得がいくのができたんだけどな。
「なんとか言えよ!それともこれからデートか!?バレンタインだもんな!」
渡せなかったら、家で読み返そうと思ったんだ。
もう好きって気持ちが押さえられないこと、わかったから。少しでも外に出したかった。
でも、それがダメだったのかも。
視界がぼやけて手紙を持つ手が震えている。
「だんまりかよ!それがそんなに大切なのかよ!」
「ごめん、なさい。」
手紙に涙が落ちて、ぐちゃぐちゃなのがさらにゴミになる。
「気持ち悪いよね。」
「まじで気持ち悪い!」
「うん、ごめん。持って帰る。」
床にこびりついたキャラメルソースをハンカチとアルコールでなんとか拭いて、ハンカチをゴミ箱に捨てる。
中のブラウニー、食べられるかな?
「お、おい。話がまだ終わってねえ!」
中の紙袋にもキャラメルがびっしりついていた。ブラウニーをお弁当箱のなかに移し変えて紙袋もゴミ箱に捨てた。
「誰に貰ったんだって聞いてんだよ!お前、俺のこと好きって言ってたのは嘘だったのかよ!」
「貰ってないよ。」
「は?チョコも手紙もあって貰ってないわけないだろ!」
「…作ってきた。」
迷ったけど、手紙も捨てた。
持ってたって仕方ないんだ。受け取って貰えるどころか、破かれてしまった。
「最後にするって言ったのにごめん。諦められなかった。本当、気持ち悪いよね、ごめん。」
ブラウニーも、捨てたい。
もう全部捨てたい。
このお弁当箱も、学校帰りに絋と買ったな。
迷ったけど、やっぱり捨てた。
もう無理。
その場から逃げ出したくてすぐに走った。走っちゃいけない廊下も、上履きも履き替えないで靴だけもって走った。
もう全部吐き出したい!!
昨日食べた甘いブラウニーも、キャラメルソースも、この想いも!
吐かないからこんなに胸にたまるんだ。2年も詰め込んだから、もうきっとキャパオーバーなんだ。
あーあ!好きって辛い!
たまにこちらを睨んでくる絋とは目が合うけど、それだけだ。
でも未だに絋の行動に惚れ直してしまうし、この調子じゃいつ彼に好きを感じなくなるか分からなくて怖い。コンビニにいけば彼の好きなお菓子やドリンクを買おうとしてしまうし、折角しまったマフラーを取り出してみたりもする。
好きってこんなに辛いことなんだな。
そして絋に告白しなくなってからはなぜか僕が告白されることが多くなった。皆一途な人が好きなのかもしれない。まだ僕は失恋から立ち直れていないので、本当に申し訳ないが断っているけど、これが世に言うモテ期か。
告白を受ける立場になって思ったのは、恋愛感情を持っていない子に告白されるのが案外辛いってこと。僕のなにが好きか分からないし、友達と一緒に告白に来られても反応に困るし、もじもじされるとこちらまで恥ずかしくなるし、断って涙を流されると本当に申し訳なくて何故かこちらが泣きたくなる。
そう言えば僕は絋にどこが好きとか具体的に言ったことはなかったし、もじもじしてしまうこともあった。
こういう反省のもと、何故か僕は絋にラブレターを書いてしまった。
数回書き直した5枚のラブレター。
彼が好きなチョコの季節。
最後って言ったのに、どうしても渡したくなる。
2月14日のバレンタインデー。
浮かれて料理本なんて買って作ったブラウニー。
甘いものが好きな彼が喜ぶかなって、中にキャラメルソースもいれた。
当然渡すタイミングもなく放課後になった教室で持ってきてしまったこれらを眺める。
ああ、どうしよう。
ホームルーム終わりの教室にはまだ人がたくさんいる。
手作りお菓子にラブレターとか、貰ったら迷惑だよね。しかも五枚も書いてさ。だから陰キャは嫌なんだ。
ブラウニーの包装紙を買うときに見つけたハートのシールなんてつけてしまった。取り返しのつかない代物だ。
「三倉くんっ、よかったらこれ、バレンタイのチョコなんだけど、受け取って貰えないかな?」
チョコを眺めていたら女の子が席にきて箱を差し出してきた。
「あ、ごめん、気持ちは嬉しいんだけど…」
ちらっと僕の作ったものをみる。
気持ちが入ったものを安易に受け取るなんて、今の僕にできそうにない。
「友チョコでもだめかな?これからおともだちになりたいです!」
「ありがとう。でもチョコは大丈夫。ごめんね。」
「でも、それは?貰ってるよね?」
彼女は机の上の袋を指した。僕の作ったものブラウニー。
「これは、特別なんだ。」
その袋はなぜか横から引ったくられた。
「ひ、ひろ?」
ハートのシールのついた封筒を袋から取り出して睨んでいる。と思ったら切られた。
五枚のラブレターは半分になって床に落ちる。
「なんだよ、女できたから俺はもう用済みってか!?」
彼の言う言葉を理解するより先に、ブラウニーも投げられる。キャラメルソースが床に転がって中の液体が漏れていた。
「チョコなんかに浮かれてバカみたいな顔しやがって!何がチョコは大丈夫だよ!うけとってんじゃねえか!」
目の前で起きたことを呆然と見ながらも、絋の足元に落ちた紙切れを集める。あ、折角書いたのに。何度も用紙が足りなくなって買い足して、ようやく納得がいくのができたんだけどな。
「なんとか言えよ!それともこれからデートか!?バレンタインだもんな!」
渡せなかったら、家で読み返そうと思ったんだ。
もう好きって気持ちが押さえられないこと、わかったから。少しでも外に出したかった。
でも、それがダメだったのかも。
視界がぼやけて手紙を持つ手が震えている。
「だんまりかよ!それがそんなに大切なのかよ!」
「ごめん、なさい。」
手紙に涙が落ちて、ぐちゃぐちゃなのがさらにゴミになる。
「気持ち悪いよね。」
「まじで気持ち悪い!」
「うん、ごめん。持って帰る。」
床にこびりついたキャラメルソースをハンカチとアルコールでなんとか拭いて、ハンカチをゴミ箱に捨てる。
中のブラウニー、食べられるかな?
「お、おい。話がまだ終わってねえ!」
中の紙袋にもキャラメルがびっしりついていた。ブラウニーをお弁当箱のなかに移し変えて紙袋もゴミ箱に捨てた。
「誰に貰ったんだって聞いてんだよ!お前、俺のこと好きって言ってたのは嘘だったのかよ!」
「貰ってないよ。」
「は?チョコも手紙もあって貰ってないわけないだろ!」
「…作ってきた。」
迷ったけど、手紙も捨てた。
持ってたって仕方ないんだ。受け取って貰えるどころか、破かれてしまった。
「最後にするって言ったのにごめん。諦められなかった。本当、気持ち悪いよね、ごめん。」
ブラウニーも、捨てたい。
もう全部捨てたい。
このお弁当箱も、学校帰りに絋と買ったな。
迷ったけど、やっぱり捨てた。
もう無理。
その場から逃げ出したくてすぐに走った。走っちゃいけない廊下も、上履きも履き替えないで靴だけもって走った。
もう全部吐き出したい!!
昨日食べた甘いブラウニーも、キャラメルソースも、この想いも!
吐かないからこんなに胸にたまるんだ。2年も詰め込んだから、もうきっとキャパオーバーなんだ。
あーあ!好きって辛い!
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